ベトナムはこれまで同盟国としてロシア、中国の支援を受けてきたが、全方位外交を採っている現在は、両国にそれなりに配慮し忖度した対応をしている。
5月にはメドベージェフが渡越したけれど、ウクライナ侵攻に関して国民の捉え方はほぼ二分されている模様。大国に1100年もの長い間、蹂躙され続けてきた歴史を持つ者として侵攻と無辜の人達の殺戮は納得できない判官贔屓。ロシアとの貿易はそれほど優位性がない。戦争回避で出国するロシアの知識人や金持ちは多い様だが、ベトナムへは太陽を求めて保養に来ても、移住する話など聞いた試しなどがなく、実は魅力に欠ける国なのか。
ベトナム戦争時にロシアはベトナムを積極的に支援した経緯があって、長期間要衝であったカムランにはロシア軍が駐留。石油開発などでも実績もあったし、COVID-19前はロシア人観光客が急増、海浜リゾートにはロシア語が溢れていた。
現在も約8万人のベトナム人がロシアに滞在、友好関係は一応維持している。
既に始まっているルーブルの下落。やがて金融全般に波及し経済は成り立たなくなるのが関の山。現実を分かっていてもNOとは言えないベトナム。だが過去の恩義はあっても近々単なる疫病神でしかなくなるはず。
中国とはこの所政治的には良い関係に見える。ベトナムのクアン副首相は8月に訪中、17日に王毅外相と懇談して友好協力関係を確認した。クアン副首相と王毅外相とは夫々に協力して同委員会の代表を務めており、チョン書記長のハイレベル公式訪中にも触れ、越中包括的戦略パートナーシップの発展を重視するベトナム側の一貫した政策を確認したと緊密さが報じられています。
副首相は、今後も双方の指導者が緊密に連携し、両国の共通認識の具体化や、あらゆるレベルの訪問や交流を促進、貿易協力をより持続可能な方向に誘導し、鉄道・道路という交通インフラの接続を強化すると提案したとあります。
対して王毅外相は、中国はベトナムとの友好関係の発展を重視しており、相互訪問の実現へ緊密に協力し、両国の協力関係の有効性を引き続き促進する事で一致したと述べた。一帯一路が綻び始め、結びつきを深めたいとの思惑が山々。
さらに中国はベトナムに対し社会経済開発を支援し、先の交通インフラの接続、経済貿易分野での協力を強化することを約束し、両国の国際・地域社会で連携と協力を強化すると提案している。これは言下にベトナムへ体制と関係堅固の呪縛の楔を打ち込んでおきたいとの意向が如実にあると捉えています。
確かに近年中国企業のベトナム参入は増加している。またこれまでにも書いているけれど、ベトナムの対中国依存は輸入にあって一位をキープ。二位の韓国を二倍以上引き離して圧倒的な存在感を誇っています。今年上半期は前年比約19,5%減となったが、各国から輸入が軒並み急減した状況からは変化なし。
しかし原材料・資材等がかなり占めているため、アッセンブリー国家ベトナムにとって生命線になっている事実に変わりなく、手かせ足かせで逃れられない。
輸出は一位のアメリカに次ぐ二位。アメリカは約444億ドルだが前年同期比約22%強の減少。だが中国は約259億ドル強とわずか1%の減少で収まっており、貿易面ではかなり蜜月の状況にある事を如実に物語っている。
ベトナムは1000年の長い間、中国に支配された過去があり、また戦争後に中越紛争という仲違いの時期もあった。また近年東シナ海では領海問題があり、ベトナム漁船へ中国船の執拗な嫌がらせや挑発行為もあって、国民や軍部でも、現場は中国へ親近感を持っているとか、信頼している訳では決してありません。
しかし中国人観光客の落とす金には魅力があるし、この所の中国企業の進出、中国寄りと言われるチョン書記長が両国の緊張を薄めているのかも知れない。
9月10日にバイデン大統領が中国を睨んで訪越。米越関係強化を演出するか。
ともすれば世界情勢が急変しつつある中、ベトナムは社会主義国であるけれど、体制実現の過程に自由主義があり、これをまさに歩んでいる如く全方位外交を堅持。国の力を保全しようとする最中。先ず経済力を付けるために外資を導入、地場企業力を高め国際競争力を強化するには何でも利用する状況が見て取れる。だが此処に来て否が応にも米中対立の渦中に巻き込まれようとしています。
こうした中、ハノイと広西チワン族自治区南寧市と直通バスが開通。約381キロを7時間半で結び毎日運航。
・ベトナム国内での動き
ベトナム経済はCOVID-19後の回復基調にはないと前回にも述べた。とはいえ何時までもこの状況にあるというものでもありません。だがそれは現在の産業を元の状態に戻すというだけでなく、産業構造の変換という厄介な命題があり、これを如何に発展進化させることが可能なのか。その為には絶対的にR&Dが企業にしろ、国家としても重要だと認識し、教育体制作りと人材育成が不可欠。世界の最先端技術に勝るものを創り出す理念や思考、枠に囚われない資金支援を継続しなくては始まらないが、大きく期待できるとは思えません。
先進もの作り国家に成長するという目標はあったにしろ、この所のヴィンGの自動車がその頂点ではなく、単なる通過点に過ぎません。確かに僅かの期間に一大産業へ成し遂げた功績はあるにしても、思った以上に目指した裾野産業が育っている訳ではない。設計やデザインにしても自社開発に程遠いし、必要な素材が自国で調達できる訳でもないのが実態。企業歴史が浅いから他国企業と組まなくては仕方がない。要するに形はあるけれど、中身は他国からの部品を集めた組立に替りが無いのはこれまで同様と考えて良い。この是非は考え方の違いでどうにでも転がる。本当の国際間分業と言えるもので無いのは明確です。
売れているとはいえ政府も巻込んだインセンティブが原因。米証券市場は資金調達が目的で、時価総額は上場時の2倍になったが決して浮かれてはいけない。浮動株は1%で流動性が低く、操作し易い巧妙な仕掛け。リスクが高くて危険。
同社は素早くEV車に切り替えたが、構造は簡単だし世界の潮流になるやも知れないので乗り遅れは許されない。だがそれ以上のものでは無く、新技術開発を持つ訳でもない。今後は若い人を任用、能力を最大限に開花させるべきです。
ベトナムに貿易黒字をもたらした携帯電話の輸出は大きく伸び悩み、では今後どのような産業へシフトが起きるのか。もう準備段階ではないけれど、国家としてポスト・サムスンを頭に入れなければ世界には付いて行けません。
かといって得意の繊維製品や靴・履物、低付加価値の農作物も必要ではあるが、これまで莫大な利益を齎した次の目玉となるのは何か。そうした理念と方向性目標を持たなくては何時まで経っても地場企業は成長しない、人も育ちません。
他国からみれば経済が成長し、それ故に一大消費国へ成長したマーケットとしての魅力でしかありません。したがって投資傾向も変化しており、製造業からサービス産業への進出がこの所大きいのはその証左。だが今後は科学技術立国を念頭にして国の舵を切るのは世界の趨勢。どういう業種を開発にして行くか。これが一番気になる所であり、最も社会が必要とする可能性があると考えるのは何かだが、まずは政府が事の重要性を認識し企業を指導しなければ動かない。
株式会社VACコンサルティング 顧問
(IBPC大阪 ベトナムアドバイザー)
木村秀生