2030年の一人あたりのGDP目標は7500ドル

2024年9月24日(火)

ベトナム政府は一人当たりのGDPを2030年までに7500ドルに引き上げることを目標にしたと報じている。これは現地通貨に換算すると現在のレートで約1億9000万VNDとなります。
もちろんこの間、所得が上昇することも考えられるし、庶民の懐はインフレに拠る物価上昇も考えられるため、果たしてどうなるかは別の問題。
こうした机上の空論はお得意だが、黙っていても恐らく数字は達成できるであろうと考えられます。

GDPが増えるのは良いとしても、では何を根拠にという問題が出て来るし、現在の状況。すなわち国内生産は何時まで経っても外資導入に走っており、留まることを知らない。むしろ加速している。そこに来て、中国寄りの政策がかなり明らかになって来て、多くの中国企業の進出と国の事業への政府と政府系資本企業のベトナム進出が顕著になりかけている。
ただでさえ輸出の70%以上外資系企業に拠る構図は殆ど変わらないどころか増えている一方。国内需要(消費)は旺盛、これは経済が活性化してきた結果、所得が上昇し可処分所得も上がっているのは確かなこと。
しかし豊かさのおこぼれに与れるのは一部の層に限られていて、多くの一般市民の懐、特に地方から来た人たちに関しては、住むための家が買えないという実情だし、故郷の実家へ送金などを考えると思うように金は残りません。
要するに国家としての体面は保てるけれど、中身はと言えばそれほど褒められるようなもので全く無く、格差は今まで以上に拡大するのではと思えます。
さらに人口ボーナスは年々減少傾向にあり、いずれは高齢化社会とへ推移して行く現実。高齢化を迎えると社会保障費が嵩むし、経済を活性化するためにはインフラ整備が欠かせないけれど、これまたすんなりと進んではおらず、例えサプライチェーンが中国からシフトしているとはいえ、アッセンブリーに必要な肝心の精密部品などを含めた原材料を輸入に頼っている現状。また研究開発や技術にシステムなどの国内地場企業での構築がままならない実態。
国が豊かになるのは良いのだが、では大多数を占める一般市民の生活実態が良くなるかと言えば、必ずしも保証されるものでは無い。また前の書記長の死去に伴う新人事で選出されたラム氏。側近をかつて所属した公安省から多くの人材を抜擢とか。こうなると考えられるのはある意味で警察国家的政府であり、表向きは汚職撲滅と云うのは建前で、その実態は人民監視に戻るという考え方も出来なくないのです。ますます権力集中が起き、形式的に自由主義的経済国の体裁を備えてきたのが、どうかじ取りが変わるのか。
さて、このGDP計画は7月22日に政府が発表した行動計画の中での目標の一部だが、これを遂行するために国の工業化と近代化推進の継続に関する中央執行委員会決議とあります。

統計総局に拠ると、2023年度の一人当たりのGDPは約4284ドルに達しており、前年から160ドル上昇したとしています。
IMF・国際通貨基金は今年度の一人当たりのGDPは4520ドルまで伸びると予測しているが、これは2000年に比べておよそ9倍となっているとしています。
この当時の状況を知る者にとって、数字の上でもベトナムが経済成長していることには間違ありません。事実2000年問題として世界的に話題となったコンピューターが大きな番狂わせをすると騒いだけれど、ベトナムでは何も起きなかった。これは殆どの企業多行政機関でCP化など行われておらず、心配ご無用であったけれど、一人前の国になりつつあった当時のデマゴギー、プロパガンダであった訳で、先進国からみればお笑い種だったのです。
しかしこの後に急速に経済が活性化することに成り、貿易赤字が解消され、黒字国に邁進するのだが、全てサムスンを筆頭にした外資系企業の為せる業。
これが基本として今以って継続していることを知らなければなりません。

政府の毎年平均7%成長とする行動計画にもとづく結果、2030年までにベトナムは東南アジアで産業競争力トップ3に入る筈としています。
とするのなら工業に占めるGDPの割合は40%を超える事に成り、製造・加工業で付加価値が30%を超えるシナリオで、その額は2000ドルになる計算なのです。

そこでこの目標を達成するためには、ベトナム政府は基幹産業、優先すべき産業にあって国際競争力を持った大規模企業グループの形成を目指している。
また並行してこの競争力を備えた国内産業クラスターを構築、発展させ生産バリューチェーンを確立する必要があるとしているのです。
さらに観光産業にも力を入れ、これで14~15%を見込んでおり、これを含むサービス産業がGDPの50%以上となるように予測しているとある。
だが現地ニュースが報じる所、全く一次産業、農林水産業に触れておらず、これは片手落ちでしかないと言えます。
IT化とかデジタル経済とか、声高に叫ぶけれど、これまでの根幹であった産業をどうするのか。さらに繊維産業、靴履物産業をどう見るか、忘れ去られた存在とは如何なものか。腑に落ちません。

株式会社VACコンサルティング 顧問
(IBPC大阪 ベトナムアドバイザー)
木村秀生