現地報に拠れば、10月4日、運輸省当局者は、ベトナムは国内の資金と技術を使用、南北高速鉄道を開発する計画しているとある。外国からの融資依存を減らして建設、技術移転、および長期的な運営に対して、より良い管理を確保することを目指していると述べたとあります。
エッ、と驚く記事。嘘か真かだが、あり得ない。とネットで現地事情が分かる人達からは失笑気味。心意気は評価すれども、出来ないものは出来ません。
自国の愛国者であっても誰しもが考えるところの常識的感覚があれば、夢物語か悪い冗談と捉えられても仕方がない。何れにしても戯言の真意は如何?
随分前になるけれど国会で否決された。だがまたもや復活してきた経緯がある。
この時は莫大な資金調達が出来ないと多くの議員が完全に否定的。仮に建設したところで当時は乗る人が居ないのであれば赤字続き、即ち費用対効果がないというのが賢明で常識的な見解。市民でさえ旅行で乗れる訳がなく、ビジネスが発展していなかったし文化が異なる南北の人の行き来や交流など見込めない。必要性など認められず、見栄先行だったと取られても致し方ありません。
当時のズン首相はガッカリ。日本側も乗り気満々だったけれど敢なく落胆消沈。
誰が考えても、否。考え以前。しかしHCM市の新幹線駅候補地の噂が広まり、何と其処は筆者が二度目に住んでいたエリア。誰がこんなところに、だが確かに現在のサイゴン駅まで伸ばすのは難しい。また此処は今も南北鉄道が走っていて駅もあるけれどこの周辺は一応住宅地。期待感丸出しだっただけの与太話。
それどころかなにしろ単線で速度が遅く、時間通りに運行されない既存の統一鉄道の老朽化が進んで危険な橋梁などの改修をしなければならず、これを日本の商社が日本のODAを使って行うとなったが、また新路線建設も計画があるけれど、妥当性・緊急性は高いと思える。
HCM市で遅れまくった初の地下鉄では金が無く、何時まで経っても試運転が始まる、とまるで羊飼いの狼が来るぞ話。外国からの依存脱却は気持ちとして分かるけれど、まだまだ建築・土木技術は先進国に付いて行けるわけがない。南北鉄道の車両だって東欧からの輸入。完成度は決して高いとは思えないが、自国で造れる技術などありません。一矢報いるなど現場を理解しているのかな。
まして高速鉄道。日本の新幹線は今年運行60周年にもなるけれど、何十年も掛けて積み上げてきた技術の集大成。これが時代と共に現在でも進化を続けていて他を寄せ付けるものでありません。さらに運行システムや信号系統、安全のためのノウハウに保守点検。ベトナムはゼロスタートなのにどうして記事のタイトルの様に大口を叩けるのか、夢を語るのはいいけれど、どこまで本気。
副首相が述べたとなっていたが、万一の場合は親方が出て来て否定すれば済むだけの逃げを打ったのか。またはアレコレと虚勢を張りつつ、実は中国に接近中の今の政府首脳。決定した訳では無いけれど、歯切れの悪さからして流れを作っているのか。何れにしても話に付き合う筋合いはありません。
運輸副大臣は、主に国家予算出資金で賄い、外国の技術移転を最小限に抑えると会見で述べたとある。これは18年間研究してきて外国の経験を学ぶために代表団を派遣してきたと云うが実の所、派遣実態はよく分らない。毎年首相が来日していたけれど単なる視察の一環でしかありません。
このプロジェクトの費用は約673億ドルで、国家予算、国債、地方拠出金、低利融資での調達としている。毎年国家予算の5分の一を何故にこの新幹線に投入しなければならないのか出汁、どうやって捻出するのかが思い付かない。
外国からの融資は紐付きなのでしないと強気。もしかして中国を予め牽制?
技術移転のため金が掛かるとするも結局は技術が無いと認めているご都合主義。
何十年もかけて蓄積してきた技術をいとも簡単に金で買えるわけがなく、仮に応じた国があるとしても消化できる道筋はない。基本的に車両用の特殊金属や鉄道レールなど素材自体の自国調達は怪しく、プレスだけでなく人の手で複雑な型を仕上げる職人など居る筈もない。第一に設計できる人材がいる由もない。
ところが運輸省は、ベトナムの建設業界は鉄路、橋梁、トンネル、斜張橋を造る技術があるとし、現地化が可能としている。だがとんでもない。高速道路の打ち放し工事を見れば一目瞭然、はっきり言って無理。トンネルを掘るにして建設機械も土木機械も自国では製造出来ないし、シールドマシンなども無い。これ等は輸入しなければならないのに、時速200キロ、300キロ、350キロの高速鉄道、また部品も造れると豪語。中国でさえ日本から部品を輸入している実態なのに、これには適切な政策と技術移転に拠る技術習得としているオチがある。
コンサルタントはHCM市とハノイ市を結ぶ新幹線を時速350キロであれば12,5%多く乗客を運べるとしており、2025年から2026年にかけて、国際的コンサルタントの選定と実現可能性の調査を実施すると、此処に来て勢いトーンダウンして支離滅裂。
この南北新幹線は軌道1435㎜で複線。設計速度は時速350キロ、積載量は1軸あたり22,5トン。全長1541キロで、23の駅と貨物駅5駅とする。
既に日本から提示されていた筈ではなかったのか。
必要に応じて乗客と貨物の両方をサービスする。また既存路線は貨物と短距離旅客輸送とするとあります。
なにしろ狭軌で単線、従って特急列車を先に通すため、普通列車は駅で長時間通過待ちをしなければなりません。ただでさえ遅れるが今でも到着が3時間~4時間遅延するのだからどうしようもない。
では運賃は如何ほどの設定なのかと思うけれど書いていない。ともすれば時間と費用は飛行機利用の方がはるかに合理的であり軍配が上がるかも知れない。これが弱点と分かっているので公表できないのではないかとも考えられます。
ハノイ~ヴィンと、ニャチャン~HCM市の区間について用地関係と業者選定を2027年までに開始する予定としている。さらにヴィン~ダナン、ダナン~ニャチャン間を2028年から2029年に計画し、2035年までに全線開通とみているとあります。計画は出来なくは無いけれど、実施計画はそんなに生易しいものでなない。高速で走らせるためにどれほどの調査をしなければならないのか分かっていないため、こんなに早い開通を計画するのです。
鉄道プロジェクト委員会なる組織があり、このディレクターは完成目標を達成するには特別な政策が必要とし、建設用地選定と立ち退き者の再定住策、技術インフラを加速するため特別な施策を提案するとしている。
だが完成まで、これまでの事案からして土地問題により遅延することがあると認めており、初めて敷き設する地下鉄工事でも多くの問題やトラブルがあったけれど、何しろ未知・未経験の分野。為す術がなく右往左往だった記憶がある。
だが国家プロジェクトなので強力な政治的支援を受けるべき最優先事項であり、完成を予定通り行うため国内外の資源を動員される。ともしているが、いくらそうだとしても国家権力が思いのままに強制的に人の社会生活での営み、環境を破壊してまで完成を急ぐ理由など認められません。
中所得国へ成りかけのベトナム。そこであれもこれも先進国に早く近づきたい。此処に罠があり、経済成長が止まる可能性を忘れたのか。
さらに債務の罠、アジア・アフリカ諸国で中国が仕掛けた罠に陥った国の末路。これを知りつつ副大臣の口を借りて虎、いや強大な龍の威をかわすのが目的、との希望的観測もあり得ない訳でない。何しろシタタカが売りのベトナム。
ラム主席訪越時、ベトナム側の報道が撮った習主席の写真に偶然手術跡があったとYOUTUBE。脳の外科手術?をしたと無責任にも噂され、高名な主治医が突然亡くなったとオマケも。火のない所から煙もあり得なくない。ならば極秘機密。
事実を知ればこそ、幾ら何でも表とは裏腹、君子危うきに近づかず、と重大な秘匿なら口が裂けても言えないが先制を打ってはぐらかした芝居。考え過ぎか。
計画は10月に行われる国会で見直される事もあるとしているが、どうして先走って如何にも自国で出来なくないと発表するのか、訳が良く分からない。
株式会社VACコンサルティング 顧問
(IBPC大阪 ベトナムアドバイザー)
木村秀生