輸出向け果物ブランディング ようやく始まったか

2024年11月14日(木)

ベトナム南部のメコンデルタ地域、ここはベトナム国内屈指の大農業生産地。
米はもちろんだが、果物も国内最大の生産地であり海外向輸出が増えています。
ベトナムは海外諸国と多くの経済連携協定を締結し、様々な農産物、取り分け人気があるトロピカル果物の輸出は年々増えている状況にあると報じている。
このため生産者は需要に対応するため果樹園の拡張、また付加価値の高い果物のブランド化を進めているとしVOV5・ベトナムの声放送はこれをニュースに取り上げて報じていました。
それに拠るとメコンデルタ最大の都市カントー市。このある村の果実生産組合は約70ヘクタールのリュウガン畑を持っている。此処で採れるリュウガンはアメリカとオーストラリアへ輸出するのだが、各国の輸出市場の基準を満たした産地の形成を目指しているというのです。
各国は植物検疫に力を入れており、日本でもこのところコロナ禍以降、外国人の入国が増え続けており、殊に島国ゆえにあっという間に外国から病気の原因となる虫などが入ってこないために検疫が強化されていることはテレビでもお馴染みで、よくご存じのはず。中には帰国時に質問された方もおいででしょう。
また製品そのものの品質にしても、外国への輸出は自国消費では済まない煩雑さがある。だがこれまで面倒くさくて農園などでは、殆んどこういうことに無関心で興味もなかったのが実態です。しかしそうはいかない。
そこでこの組合では製品の質的向上と、V・GAP(ベトナムの安全農産物生産基準)の順守を徹底。競争力を高めるため果樹園の栽培や手入れの技術革新を図り、有機農法を徹底して輸出相手先の基準を満たすように心がけているとあります。だがこのV・GAP、ベトナムが独自に考えた曲者で、世界的には通用するものでありません。公表するというのはレベルの低さを証明する事。
世界基準のGAPを導入するほど本気度があればいいのだが、万一それを導入するとなればと誰も付いて来ないというので、数段下がってかなり甘いとある。
これは現地に長く在留、日本の農大を出て有機栽培を指導する立場の人物から聞いた話であり、現地には日本人の専門家も居るのだが、彼らはG・GAPを導入したから安全だとしているのです。有機栽培にも課題は実は山積している。
カントー市農業農村開発局は輸出に力を入れている様で、市の各地域の果樹園で果樹栽培に適した耕作地を造り、持続可能な栽培方法の導入を進めている。
また農産物の消費を安定化するために企業と連携しているという。このため市の果樹栽培をする人や組合は活気付いているが、これは付加価値が高い果実を作るようになり、ドリアン、ミルクフルーツ、リュウガンなどが人気を得ているとしているが、懐が温かくなれば嬉しいに決まっている。
メコンデルタの果樹栽培の面積は約37万ヘクタールあるといい、最も広いのはティエンザン省の8ヘクタール。続いてカントー市、アンザン省、ハウザン省、ヴィンロン省、ドンタップ省で、25,000~50,000ヘクタールとされています。

農業農村開発省の栽培局では、このところ果実栽培に特化した業者とは企業の連携が多く、多くの地方で輸入先の基準に満たすだけの努力がある。果実栽培は一年間を通して収穫できるメリットがあり、これが輸出円滑化に繋がっているとしている訳です。
しかし、これまではこの様なことはせず、その果物の旬の時期に採るだけで、輸出もこの時点だけ、継続して行われるものではなかったのです。いい意味で捉えると欲はなく、自然の恵みを、その時節の実りだけの成り行き任せ。本来本当の旬の一番美味しい時期だけ採ればいい、と当たり前のことを実施していただけです。現在メコンデルタで一年を通し計画的に栽培する技術が導入され、日本・中国・韓国、アメリカ、EUなど世界60ヵ国へ輸出され、ベトナム産フルーツの知名度を上げているとしています。中でも中国が一番のお得意様。最大の輸入国であり、ベトナム産が20%を占めて居おり、取り分けこの所はドリアンが一番人気。品質的にはマレーシア産より若干落ちるが何しろ安い。
記事にメコンデルタでは国内外の要求に応えV・GAPの基準を満たしているとあるが、しかしG・GAPをクリアしてこそ誇らしい記事を書けばわかるけれど、この辺り如何にもベトナムらしい。
しかし此処までV・GAPを普及させるだけでも並々ならぬ努力が必要であったことは容易に理解できます。
輸出増は果実だけではなく、胡椒も中部高原でのコーヒーも然り。またカカオもチョコレート生産のため農地が増えてきている。これまで世界の大生産地での問題や気候などの要因で急速に採れ高が減って来て価格も高騰。ベトナム産の農産物が真にG・GAPを認識、土壌改良や生産技術を進化させ品質が向上すれば一層の付加価値の増加と、これまで以上の多種類の果実を世界に供給することも可能になります。さらに価値を挙げるとするなら、加工を国内で行なって輸出する。これが必要です。そうなるとブランディング化や、各国向けに好まれる味を出すとか、カラーリングやパッケージングなどマーケティング力も要求されるが、これに対応できるのかが課題となってくるのです。
そうなると資金力や更なる技術力に、生産と販売のために投資が求められるが、一面では弱小の個人とかでは太刀打ちできない。と問えばカカオ生産に外資系の大手寡占企業が参入。すると別の困った問題が必ず起きて来ます。ここまで考えて行政は今後の方針を明確に示さなければ、浮かれてしまうだけで終わる。

株式会社VACコンサルティング 顧問
(IBPC大阪 ベトナムアドバイザー)
木村秀生