ベトナムは農業国でありその世界ランキングとは
ベトナムは工業国、と思っている人が多いのではないでしょうか?
確かに日系企業が進出している所の殆どが工業団地であり、そこで製造しているのは工業製品。その代表格は一般市民の移動手段となっているホンダであり、ヤマハにカワサキというバイクであったし、自動車もトヨタを始めとした日本企業の車が席巻していました。現在は国産車と名乗っているVinグループのEV車に電動バイクが急速に販売を伸ばしている状況にあります。
さらにニデックやキャノンなどの大手企業が現地従業員1万人を超える規模で操業しているし、家電に電子機器や医療品、食品、さらにそれこそ百均商品という日用品や雑貨類の製造に至るまで、あらゆる日本の名だたる物つくり企業が進出している状況からして、そのように思ってもやむを得ません。
また携帯電話輸出も世界一だが、これは韓国からサムスンが進出してから徐々に世界市場へ躍り出て、これがベトナムの貿易黒字を実現する大きな屋台骨になったという経緯があります。工業製品の輸出は外資系企業がその多くを占めている状況に変わりがありません。
しかし輸出規模は小さくなっているけれど、れっきとした農業国に違いなく、米の生産は世界5位、コーヒーは世界2位、コショウは世界1位など一次産品である農産物・加工品の生産が思いのほか多い国なのです。
・農業経済の世界各国のランキング 一方で水資源が問題に
ではこの農業が世界に占めるランキングは一体どうなっているのでしょうか。国連食糧農業機関(FAO)のデータに基づき、生産価値で表示されるならば農産物を生産している国は190ヵ国以上あるとしているが、中国、インド、アメリカ、ブラジルの4ヵ国で世界生産量のほぼ60%を占めています。
この巨大農業生産国の中で、中国は世界の35,6%・1,9兆ドル、インドは10,9%で5370億ドルという生産額を持つけれど、両国は糊口を凌ぐため多くの小規模農家に依存している。またアメリカは8,6%で4510億ドルであるが、先進技術を駆使し、機械化による大規模農法が特色となっている。
一方ブラジルは若干低く3,9%、2040億ドルだが輸出競争力の高い農業を構築している。理由の一つには日系移民が活躍し、死ぬ思いで熱帯雨林を切り開き貢献してきた歴史をみるけれど、近年は日本が必要とする大豆や胡麻など日本が指導、輸入しているので、関わりが無くなったという訳ではありません。
だがそこで起きている問題。食糧増産のために広大なジャングルを農地に転換すれば、環境破壊と気候変動にも繋がるけれど無謀な農地拡大が止まらず年々ジャングルが消滅する一方。さらに農作物を栽培するのに地下水を使うとなれば地盤沈下の起きる可能性が高いけれど、生産企業は其処まで考えず使い放題。工業用水の様に回収して再利用が出来ません。秩序ある計画と違法伐採によるむやみな農地開拓は政府が責任を以って規制、世界に警鐘を鳴らすべきです。
世界の居住可能な土地の約半分が占めるという農業は、食料供給網、国際貿易、農村経済の重要な基盤となっているが、現在は各国がこの食料安全保障を国家テーマとするほどで、水の確保と食料の自給力が工業製品の生産よりも人間にとって最も必要かつ十分な条件であるとする考え方がしばしば出て来ます。
アラビアでは石油の価格よりも水の価値が高いという。砂漠でふんだんに採掘できる石油より水の確保が生命維持には最も大切であり価格も高い、そのため日本の海水を真水化する装置が活躍しているほどです。しかしこの水は生活用で、農業には地下水を使っているとか。水資源の豊富な日本では考えられない事実だが、今や世界は水の争奪戦の様相を呈している。
ところが日本も他人事でなくなってきた。この所の気候変化で取り分け西日本では雨が降らないため、各地のダムは貯水量が急速に低下。このまま好天候が続けば農業用水にも支障をきたすという緊急事態に追い込まれている。日本でも一部の地域では海水を利用して真水化する装置が稼働しているが、これから先には水が豊かと思われるこの日本でも使う必要が出て来ることもあり得る。
また外国人の水資源地近辺での森林購入。このことも合わせて理解すべきです。
ではベトナムはどういうランキングなのか。世界で16位、アジアでは6位となっている。輸出額は560億ドルだが、世界は5,2兆ドルとか。そうするとベトナムは農業生産で世界の1,1%となるのです。
また他国の状況だが、ロシアは穀物生産で重要な国、また大麦や油をとるためのヒマワリの主要生産国で1,7%、670億ドルだが、ヨーロッパを含む主要経済地域の農業生産額とシェアをみると、フランスの1,6%、820億ドル、ドイツ1,2%、600億ドル、イタリア1,1%、560億ドル、スペインが1,2%、640億ドルだが、ワインなど高付加価値農産物を生産。また乳製品にオリーブオイルなどがそれぞれの国の食文化を代表した特色があって、世界トップクラスの美食の国々。規模を競う一方で歴史や伝統のある最高級の逸品を造ってきた誇りや誉が独自の世界的地位を築いているのが大きな特徴です。
これから世界の人口が増えるとなれば、食の安全保障は増々重要な国家戦略となってくる。ますます気候変動が起きている中でどのように品種改良するのか、また増産する必要性において世界共通の課題として捉える事が重要になります。
・インドなどからベトナムに安価なトウモロコシが流入
ベトナムは世界でも有数のトウモロコシ輸入国となっています。この理由とは国内で近年、急速に畜産用の動物飼料や食品の加工用、輸出向けの加工産業に必要とされる原材料として穀物の需要が急速に伸びているためであるが、継続して拡大しているので充分に賄えるものでないとあります。
このためベトナムは今年の上半期で推定820万トンを輸入し20億ドル以上のコストを輸出国に支払っているという。この量は昨年比で51%の増加であり輸入に要した費用は49%増加とあ、これは動物用の配合飼料の増加によるものだが、通常はトウモロコシが30~50%含まれ、畜産と生乳生産がこのところベトナム企業で増えている状況を反映しているという。
またこのまま畜産・酪農事業が拡大して行けば、大量に輸入を維持する必要があるとされ、企業はコストの最適化と必要とする穀物輸入を今の南米やインドから多角化しなければ需要が逼迫し、価格競争力において負ける可能性も否定できず価格を押し上げる要因になると考えられるのです。
現在ベトナムにとってアルゼンチンが最大のトウモロコシ供給国であり、上半期にこの国だけで約350万トン、8億7500万ドル相当を輸入している。2位がブラジルで約240万トン、約6億ドル、前年同期比で120%の増加。
また特にインドからの輸入が増えている。5月にモディ首相の招きによりラム書記長がインドを訪問しているが、急激にインドとの関係が深くなっている。
このために上半期では約70万トン、1億8千万ドル相当を輸入した。これは昨年比で4万1千%の急増であるが、これまで輸入していたタイやカンボジアなどアジア近隣諸国からの輸入は季節的要因、また天候の関係から急速に減少したとあります。
では何故インド産トウモロコシが増えたのか。この要因は価格の優位性、安定した大量供給能力が可能であり、納入スケジュールとされるが、ベトナム企業にとっては原材料の在庫管理と発注計画がスムーズにおこなえるという利点、さらに輸送期間が南米よりも短縮され、コストも圧縮で願ったり叶ったり。
また価格の優位性に加えて最近は品質が向上しているという。輸入業者は安心して発注ができるとして輸入後の管理など投資を増やしており、国内飼料業者の要求に何時でも応えられるようにしていると積極姿勢をみせる。
こうしたインド側の努力に拠る品質向上と価格競争力改善に拠り、インド産のトウモロコシはベトナムの輸入業者にとって魅力のある商品となり、国内需要の増加に比例してますます需要が高くなり、注文が急増しているとあります。
因みに国内産を食してもあまり美味しくないというのが筆者の印象です。
・ベトナム産で国際的に優位がある二つの農産物とは
ベトナムで世界的産農産物とは米、コーヒー、肉料理に欠かせない胡椒が有名、かつてヨーロッパでは金よりも高価とされてきた。そのため列強諸国はアジアを植民地にしてまで様々な農産物を本国に送った収奪と支配という暗黒の歴史があります。この豊穣な農産物は肥沃なメコンデルタ一帯、また中部高原地帯ではコーヒーが栽培され主にロブスター種が8割と云われ、高級なアラビカ種は2割ほどとなっている。
この他にカシューナッツが実に19年間世界のトップシェアを持っています。
2026年上半期には41万2千トン、金額で5億4百万ドルを輸出、これは前年同期比で量的には若干減少したが、金額的には3%程度増えている。
主な輸出先は中国、アメリカで、中国向けは最大の市場であり約10万トン、約7億2千万ドルと24%を占めており、アメリカへは9万1千トン、金額では6億1800万ドルとその差は僅かとなっているが、アメリカは引き続き増加すると見られます。
さらにUAE、カナダでも増加し、ドイツ、オランダ、イギリスなどでケーキやチョコレートの材料、シリアル、ヴィーガン用として一般に普及している。
・希少価値のある天然ものスターアニス
即ち八角、独特の香りがありベトナムと中国が世界の主産地というあの茶色い花びらの形をした香辛料。年間22,000トンがベトナムで生産されている。
年初7カ月間で8,434トン、金額で3,340万ドル相当を輸出。主な輸出先はアジア、インドが5,220トンと約62%を占め、アフリカやヨーロッパにも輸出され、前年比で夫々33%、82%伸びており需要の多様化が見られるという。
ベトナムの様な土壌と気候が生育に良いとされ、北部山岳地域、特にランソン周辺に栽培が集中しているというから厳しい自然条件を好む様です。このためこの地域の産品が、取り分け香料のオイル含有量が高くて香りが最も強く品質は安定しており、有効成分シキミック酸が抗ウイルス薬などの医薬品、化粧品、香水などの原料に使われ、市場からは高い評価を得ているという。料理には豚の角煮(蒸し煮)などスパイスとして用いるが、この八角が無くてはならない。
高さは2~6mほど木には年中緑の葉が拡がり、4年ほどで収穫できるのだが、二シーズン花が咲くため経済的価値は高い。木が成熟するに連れて一株あたり40~50キロも採取できるので栽培農家もありがたいという訳です。
最近は企業が乗り出し、輸出効率の向上また加工過程の改善に投資しており、食品の安全性に関して国際基準を満たしている。このため成長分野として可能性が高く国際市場での価値を業界全体で上げるため期待される農産物です。
株式会社VACコンサルティング 顧問
(IBPC大阪 ベトナムアドバイザー)
木村秀生