・5月の連休
日本のゴールデンウイークと同様、ベトナムもこの時節は休みが続きます。
4月29日はフン王の命日、30日解放記念日、5月1日がメーデー、という祝祭日、今年はこれを含む5日間の連休となりました。
かつては旅行と言ってもテトに帰郷か、新婚旅行位が関の山。交通インフラは未整備、ダラットで出会った新妻は車酔いで真っ青、介抱する羽目になった思い出も。だが経済発展で所得が増え社会的変化もあり家族主義から個の時代へ。休日は必ずしも家人の世話しなければならない風潮ではなくなってきた。
となれば人間の本能、知らない街を歩いてみたい、との好奇心は誰にもある。
ある程度の金銭的余裕、長期休暇と気持ちがあれば非日常体験は実現できます。
この連休に国内旅行が昨年比40%増の700万人、外国人観光客は約30万人来越しました。そして収入はと言えば約24兆VND(1370億円・前年比9%増)とされており、観光・飲食業界はホット一息付いたという所。
旅行者を見ると、北中部タインホア省が前年33%増加して約120万人。観光収入は48,3増の2兆8650億VND(164億円)。2位メコンデルタ・カントー市982,000人、観光収入5230億VND(30億円)。3位はHCM市で950,000人、観光収入3兆1300億VND(180億円)。
同市は取り分け外国人観光客が48,000人と最も多く、観光収入も前年比約95%増加と報じており、地域への経済貢献度は極めて高く見過せない。
しかし一方では、フーコック島のあるキエンザン省は観光者が9,4%の減少。265,000人、観光収入も24,3%減1325億VND(7億6千万円)となった。これは航空運賃が高騰したためとある。だがそれだけなのか?
フーコック島と言えばヌックマムと胡椒の一大産地。良質な産品が造られます。
かつてはのんびりできたが急速に一大リゾート地へと変貌。ひとつには飛行場の大改修があったからで、以前はと言えばHCM市から一日数便のプロペラ機で1時間ほど。空港は人や牛、バイクなどが横切る位に長閑、観光名所などは殆どなく自然豊かな島。コテージへはバイクタクシーで行くが胡椒畑を縫って赤い砂煙を撒き散らす。高級ホテルはサイゴンツーリストの一軒だけ。やがて多くのホテルが建ち、海上ロープウェイも完成したが、地元雇用に貢献するも狭い島にあれこれ造ればいいというものでは無く、巨額投資の割に飽きられたのではと感じる。島の総合開発計画がない、業者に理念やコンセプトは無い。
施設を利用すれば金が落ちて行くだけ、サービス料が高いと不満が続出するし、運転手が客を連れて来ると30%も手数料を払っているのなら当然の報い。
筆者はTV取材に同行して各地に行ったが、地方は観光開発が未開拓の宝庫。埋もれたままの自然と素朴な観光資源の掘り起しが活性化要因になり得ます。
・ベトナム人の観光観にも変化(進化)が出てきたか?
こうした中、海外旅行も好調の様で主に近隣諸国が主流。今年はタイ、韓国、インドネシア、シンガポールが多いと報じられており、取り敢えず安近短から。分けても越韓間は直行便が多く韓国人の海外旅行先人気NO1がダナン。加えて若いベトナム人の韓国への関心度は高く過熱気味。TVドラマは数多く放映され若手人気歌手なども来越。語学履修も盛んで、韓国人男性との結婚は嫁不足とかで外国人の中で最も高いなど、自然と足が向かうのは必然の成行きです。
これまでは海外と言えばカンボジアへの団体旅行が多く、シェムリアップでのアンコールワット観光が好評。何せ一団がオレンジ色の帽子を被っていたから、一目でそれと分かる。HCM市から直行バスで国境越えのため手軽、飛行機を利用してもそれほど高くなく時間も掛からずに海外体験可能が決定的要因です。
それが一般の人も航空機を利用して足を延ばし、日本にもこの時節に沢山の人が来ていました。僅か20年でこれ程までベトナム人の旅行先が変わりました。
訪日初心者はお馴染みのゴールデンルートから始まり、神戸和牛のすき焼き・しゃぶしゃぶが定番。爾後は雪の北海道や温泉、やがて旅館に宿泊して多様な異文化体験。殊に四季の美しさを愛で満喫したい。買物と物見遊山だけでない経験は若ければ大切で、互いの文化・慣習を理解する思想へと繋がり見聞も広められる。さらに農山魚村や歴史・自然遺産の地へと拡がるなど個人的体験型へと移って行くのは世界的傾向と言えるし、旅慣れた人達を中心に目的がより鮮明で個性的になってきたなどの兆しが出て来ている状況は確かです。
京都で一時、超リッチ外国人層の散財をあてにし一等地に超高級ホテルを建設。旅の楽しみ方は人夫々。どうこう言う積りはないが、外国人の多くは来日前に歴史や文化、生活習慣を調べ、我々も知らない古来脈々と続く伝統文化や歴史遺産、宗教的精神性にも価値を認める。人生を楽しむ術に長けた人などは無駄をせずノンビリと質実を旨とするバックパックも肯定。離島へ興味を持ち里山の農家に民泊し、家庭料理と地域の伝統文化や生活に触れる感動体験。これは日本が抱える過疎化活性化への一助となり一挙両得。経験上から得難い最高の贅沢と思うが増えてきている。受入れる方も気負わずありのままがいいのです。
日本の観光行政は貧弱、人数と収入を追っかけるだけ頭脳が足りず現場音痴。
在住ベトナム人も市井の生活や自然に魅了され庶民と触れ合い土地に溶け込む気儘旅。思い付くまま気の向くまま青春18切符でローカル路線を使いこなし、ぶらり立ち寄った古民家での長逗留もまたご縁。貴重な経験に満足していた。
中国がベトナムへの旅行を解禁。急速に中国人観光客が増加傾向にある模様。これからはベトナム人の海外旅行先も中国、さらに欧米を始めとし世界各国への流れが急速に増えて行く筈です。
別の報道では中国へ行った外国人観光客のうち何処の国の人間が最もカードを使うのか?というニュースがあったけど、何とベトナム人というのだから驚く。もちろん一部だろうが今のところは以前の中国、韓国などと同じく、土産物に高級ブランドバッグに靴、化粧品など身の回り品。このご時世にシコタマ金を使い放題できる金持ちが増えたという証明の他ならないが、贅沢三昧も何れは消えて行くのが世の習いです。
・ビザ有効期限を延長
5月14日の現地報では、国会はEビザの有効期限を現在の30日から最長で3カ月に延長することを決定したとあります。これで複数回の入国が可能になるので政府案を支持したという訳です。
国会の国防・安全保障委員会の委員長であるToi氏は、この変更は投資機会を得るため長期で滞在したいとする外国人投資家の要望に応えるもので、歓迎すべきだと述べている。
さらに同委員会は、現在15日間である特定国からのビザなし入国に関して、滞在期間を45日に延長することにも同意していると報じている。
これは近隣アジア諸国のビザ発給要件状況からみれば、ベトナムの15日間というのは短く、改善を求める声が多かったことにも拠ります。
多くの観光客にとっては15日間であっても充分である、と思うけれど、実際には観光だけという規定はなく、ビジネスなどでもこれを利用している。
また学生旅行、ボランティア活動、あるいは仕事での調査であればこの期間で出来るというのは難しくビザを取らなければ訪越できなかった。
2000年前後は短期間の観光でもビザは要ったし、仕事などで1~3カ月間の場合も事前に日本国内にあるベトナムの大使館(東京)、もしくは大阪、福岡の総領事館でとらなければならなかったのです。またかつては当日に行けば、1時間もかからずに発給してくれたので、九州の知人などは福岡に総領事館が無かった時、前日に大阪に来てビザを取得。その日はホテルに宿泊し、翌日の朝便でHCM市へと向かいました。だが数年前からは当日発行は出来なくなり、日数を要する事になったので、これは不便この上ありません。
ベトナム人も同じくハノイかHCMでしか取れない。不便だし費用が嵩んだ。こういう無駄が無くなるのは喜ばしいが、もっと早く実施できたに違いない。国防上の訳の分からない理由で、やっとノンビザも15日間。海外からの投資を歓迎する割には長期間こうした優遇策を講じなかったのです。
株式会社VACコンサルティング 顧問
(IBPC大阪 ベトナムアドバイザー)
木村秀生