ベトナム人の海外観光が増える

2024年6月10日(月)

現地紙が報じる所、今年1~2月に日本を訪れたベトナム人は107,000人を超えることが分ったという。2019年の同時期との比較で約40%増加したとされ、また2月単月では過去最多の6万人を突破した。これまでは2023年2月の55,800人なので急増に驚かされます。
では何故二月に多いのか。これは旧正月(テト)に当たるためで、長期休暇が取れることと、やはり円安の効果が大きく、コロナ禍前よりも安くなったことも背景にある。現在のレートは1円=168,3VNDとなっており、これは超円高の時に1円=約370VND位であった時と比べてほぼ半分なので、如何に今の円安が異常なのか理解できます。また国民の可処分所得が増えたことで海外旅行が手軽になったとの理由も考えられるが、国内の航空運賃が昨年から1,5~2倍にも高騰したことで旅行費用が高くなった事に加え、日本に対する人気が高まったとするベトナム政府観光局の分析結果があるとされています。
2年前3月下旬、長年の知人が仕事で来日。京都に立ち寄って共に食事をした。丁度桜が満開の頃、学生時代から通った、今では観光客に知られる程になった喫茶店から近い八坂神社の枝垂れ桜を観に行き、喜んでもらえたことがある。
ベトナムにも桜はあるというが、これは種が違うし日本の様に花の種類が多く、色形に大きさも違い、時期に成ると全国の彼方此方で咲くものでもありません。まして愛でる風習などないし、満開の綺麗さより散り際の潔さに美学を見出す精神文化がある訳でない。疎水に流れる花筏、花吹雪、花明りなど美しい言葉と感性は日本人なら遺伝子的に備わっているが、こうした季節の美しさに触れる機会、桜花の絨毯の上を歩くなんて想像できる術や感覚はない。
またコロナ禍前に商工会議所の有志メンバーが来日。京都に2泊したが、この時は外国人観光客が行かない奥嵯峨へ行き、苔むす茅葺の茶屋で抹茶を和菓子、井戸水の旨さに感嘆、古くから使っているおくどさん(竈)を見せて貰った。
鴨川沿いに建つ歴史ある料理旅館で日本食を堪能して頂いたこともある。日本人でも行かない処こそ、異文化体験以上に何か心で感じとるものがありました。
2~3月の訪日数はまだ集計できていないとあるけれど、桜の季節には多くのベトナム人が来るので、訪日者は増えている可能性もあるとしています。

こうしたベトナム人の来日は、20年ほど前には考えられなかったことだし、それこそビザを取るのには苦労しました。いまなら観光ツアーであれば取得は簡単だが、個人旅行の場合は未だもって難しいのです。先の人達は何度か来日しているので、いわゆる数次ビザを持っているから良いのだが、これに対してベトナム政府は日本に一般市民の観光目的のためビザ簡素化を要求しています。
ベトナム人の海外旅行は隣国カンボジアが近くて多かったが、今年はこれまでのところ、東南アジアに北東アジアが多くて、各国でトップ10にランクインしているとあります。一般国民でも行けるようになったのは、場合によっては国内ツアーより安いのが理由。海外を知り、その文化や魅力に触れたいという期待感が高まっているというわけ。これは一般市民の文化度が進んだ証拠です。
また日本だけではなく、台湾や韓国でもこの第一四半期はベトナム人の旅行客が増加したとあります。台湾へは17,000人であったと報じられたけれど、韓国はこれまでビジネスと観光で訪越する韓国人が年間42万人以上あったがほぼ一方通行。2017年から急に訪韓ベトナム人が増えたと韓国観光公社が報告したとあるが、第一四半期には12万人のベトナム人が訪韓、昨年比で約39%増加したとあります。これは韓国人と結婚したベトナム人家族の相互訪問もあるが、筆者の記憶では仁川経由のASIANA航空の一年オープンが6万円台と異常に安かった時期もあって散々世話になったけれど、運賃があっという間に上昇し始めたのが丁度双方の往来が増えだし始めた頃であったのです。
ベトナムの現地旅行会社では、北東アジアへのベトナム人の観光目的の多くは桜を観に行くらしいとの調査があるという。それによれば87%は桜が主目的とあったのです。さらに前年同期比で63%も増加、現地での支出額は2500ドルであり、気持ち的には2週間くらい現地での滞在を希望しているとある。
4月30日、5月1日はメーデー。多くの企業でこの時期、長期休暇を取れるようになったので、こうなるとこれまで以上に海外へ行ける機会は増えるため海外旅行熱が上がるのは当然です。
大手ベンタンツーリストでは、現在は夏の休みに向けて旅行商品を充実させているが、その中でも日本、韓国が人気とあり予約が既に始まっていると云う。これまではタイ、シンガポール、マレーシアが多かった印象があります。知人なども日本は遠くて費用が掛る、というので手始めはこうした海外から始まりました。だが人気が衰えた訳では無く、こうした伝統的な国はタイで1~2月に13万人以上訪れたが、前年比では7%減少。またシンガポールは3月までの集計で93、000人と微増したが、こういう状況は当面続くかもしれません。
だが半面、日本に来る外国人観光客はほぼコロナ禍以前に回復傾向が見られている模様だとかで、これは京都駅でバスを待つ列を観れば分る。また21日は東寺・弘法市の日、早朝から雨模様にも拘わらず多くの外国人が来ていた。
京都駅から東へ急ぐ人の殆どは市に出かける人。この様に歴史的な伝統や文化に親しむ人が増えたと感じるが、さらに観光地巡りから進化し地方の魅力発見。さらに家族単位、個人旅行へと変化するのだが、高級ホテルだけでなく個人が気易すく宿泊できる施設は必要。しかし彼らには日本での社会習慣にマナーは守ってもらいたいが、何れの国であっても特に団体ツアー客は望み薄。

株式会社VACコンサルティング 顧問
(IBPC大阪 ベトナムアドバイザー)
木村秀生