日本の医療にみられる患者優先 中国人の視点だがベトナムは②

2021年12月30日(木)

国際病院が安心だとは限りません。いざとなれば大掛かりな手術はできない。
となれば、ひとつは近隣の設備があり優秀な医師が居る国へ行く事になります。
例えばタイ。ベトナムの情報誌に広告が掲載されていたことがある病院。此処は医師が日本の医大を出ており技術があって日本語も話せる。介護士や事務職も同じとありました。知り合いの現法社長、タイで心臓手術を受けました。
これは日本人だけでなく、ベトナム人でも同様で重篤な場合、自国では安心できない。そこでシンガポールなど、近い国へ行く場合があります。
飛行機を持っている国際病院の場合は緊急時に保険で海外に搬送するとあり、宣伝もしていますが余程のこと。またもう一つ、其処まではいかないけれど、医師が同行して帰国というケースがありました。帰国中の休診はやむなし。

国際病院での問題
多くの場合日本人医師は内科が多い。ある時、階段で足を痛めた。レントゲンを撮ったが明確に骨折やヒビが判断できない。しかし痛みは打撲程度ではなく一層酷くなる疼痛。後で電話があってもしかすると裏側に細かいヒビがあるかもしれないと話すのです。またCTやMRIを持っていないので他の精密検査が出来ないと言う事があり、こうなった場合、国内病院の方がマシな事もある。
たまたま一旦帰国が迫っていて、関空に到着後、すぐに整形外科へ行き事情を話すと、まさにその通りだった。専門医が少ないと言うのがイタイ泣き所。

この国際病院にもベトナム人医師が居る。ある時耳垢の掃除をしているとき、不注意で鼓膜を破ってしまったことがあります。日本人医師からベトナム人の耳鼻科の専門医と称する医師にバトンタッチ。ところがこの若い医師、何といったかと言えば、日本に帰国して手術せよという。こんな馬鹿げたことはない。
ラグビーなどでもこれは往々にしてある、手術なんて大げさなことまではあり得ない。だが耳鼻専門医とハンコを押した診断書?何とも違和感が残ります。
其処で知り合いの事務スタッフがいたFV(フレンチ・ベトナム)ホスピタルへ行き、元同僚に頼んで耳鼻科の先生に遣いで貰ったのです。するとこの先生、アメリカへ留学後、帰国してこの病院で勤務しているが、耳の中にスコープを入れTV画面で内部を見せてくれました。ぽっかりと穴がはっきり写っている。
前の診断状況を話すと苦笑。膿まないために抗生物質を渡すと言い、3日後に来てくれというだけで何ら問題はないと仰います。
今度はこの国際病院へ文句を言うと、日本人スタッフが出てきてバツの悪さを隠すように払った費用を全額返金すると言うので、こっちがたまげた。
余程いい加減な医師だったのか。なおHCM市には耳鼻専門の病院がありますが、患者でごった返している。

薬にも問題があります。帰国して貰った薬を見せると日本では既に使われていないものという事がありました。また多くの薬剤はフィリピンとかインド製と書いてある。もちろんVN製もあるけれど、現地ニュースでは効果が無いのもがおよそ半数と保健省が発表している位。日本製やドイツなどは調達できない場合に使うような感じです。こんなところでケチってどうすると言いたいが。
出してくれるのは精々3日分程度、日本の様に1週間とか、一カ月も出してはくれない。

・鄙の町で優秀な外科医が

従業員の実家があるニントゥアン省。ベトナムでも豊かではない地方で、塩田が広がっている。以前に日本のTV番組の撮影で一度来た事がある。この近郊でブドウが採れ、これをダラットへ上げてワインを造るのです。
この家でご馳走になり、スパークリングワインを注がれたが下戸なので酔ってしまった。テラスに出て月を眺めていたら愕然と膝が折れて倒れてしまった。すぐ気が付いて起きたけれど、口の中は血だらけで歯が2本欠けている。しまったと思ったが、頭は柔道の心得で大丈夫。家人がバイクで町医者に連れて行ってくれたが夜10時は回っていた。しかし灯を付けて待っていてくれた医師。
何でもハノイとHCM市の医科大学を出て戻ってきたと言う。早速縫合、照明器具など手術道具は日本製とこれにビックリ。手際の良さに感心。薬を貰って日本円で300円と二度ビックリ。深夜料金など取らず、こんな時間でも患者が居れば待っていてくれる。未だに本当に申し訳ない気持ちです。
HCM市の町医者と大違い。一緒に行った子をてっきり奥さんだと勘違いしたけれど、英語で話など彼も久しぶりでしょう。感謝の一言しかありません。
あくる日にバスで半日掛けてHCM市に帰って国際病院へ。折れた歯の治療と唇の状況を診て貰って後日抜糸。で、日本人医師は傷口をガーゼで覆うと言い、ベトナム人医師はそのままの方が速く乾いて治り易いという。後で聞くと綺麗に治すためのガーゼで覆うのが良いようで、流石、日本人的な考えです。
この歯の治療、なんと4500ドル。保険があったので良かったが、海外へ行く場合、何かあると高額な治療費が課されるので、保険に入っておくのが良い。
或いは保険付きのカード、これで助かった人も実際に居ます。
気が付いた事。ベトナムの友人の姉がナース、しかも心臓外科。親切なのだが気が強いとくる。日本の脳外のナース。これも同様。生きるか死ぬかの大手術、やはり気が強くなければなれない様です。両方とも離婚経験ありも共通。

株式会社VACコンサルティング 顧問
(IBPC大阪 ベトナムアドバイザー)
木村秀生