インドネシア政府は、首都をジャカルタからジャワ島外へ移転する方針を閣議決定しました。移転先は、ジャワ島の北に位置するカリマンタン島が有力視されています。早ければ本記事のアップ時にも、具体的な移転先が発表されているかもしれません。
移転理由としては、世界最悪といわれる交通渋滞のほか、地盤沈下が激しく洪水などの災害も頻発していることなどが挙げられています。同国政府は、2020年に用地を取得し、2021年から建設工事に着手する計画です。移転は、2024年から段階的に実施していく予定です。
移転計画は、ブラジルの例を参考にして進めていくとのことです。ブラジルでは、1960年に新首都ブラジリアが完成し、リオデジャネイロから首都機能が移転しました。
過去に実現したアジア諸国の首都機能移転
近年でも、世界のさまざまな国において、経済発展や安全保障上などの理由により、首都機能の移転が実施されています。
アジアでは、ミャンマーが、2006年に首都をヤンゴンからネピドーへ移転。中央アジアのカザフスタンは、1997年に、南部のアルマトゥから、国土のほぼ中心に位置するアスタナ(現在の名称はヌルスルタン)へ首都を移転しました。さらにマレーシアも、1990年代半ばから、首都機能の一部をクアラルンプール近郊のプトラジャヤに移しています(首都はクアラルンプールのまま)。
理由がよく分からない移転も
中央政府が置かれる首都を移転するには、妥当な理由があるはずです。しかし必ずしも、そうとは考えられないケースがあります。
カザフスタンでは、地震への懸念、地理的な理由、民族問題などから、アスタナ(当時の名称はアクモラ)が首都に選ばれたといわれています。
しかしながら、いずれの理由も、巨費を投じて首都を移転するには根拠に乏しいものでした。加えて、議論が尽くされていたわけではなく、当時の世論も遷都を支持するとは言い難いものでした。首都移転は、当時のヌルスルタン・ナザルバエフ大統領の強力なイニシアチブにより行われたのでした。
先に触れた、ブラジルの首都となったブラジリアへは、建設当初こそ、「人工的で人間味のない都市」「世紀の失敗作」といった批判がありました。ですが、都市として成熟するに従って、生活環境などの面で好意的な評価が定着しつつあるようです。
ブラジルの例を見ると、新首都に関しては、移転当初はいろいろと言われるものの、長い目で発展を見守っていくのがよさそうです。