農産物の生産・出荷と流通

2019年9月1日(日)

安全野菜の普及にはまだまだ時間が掛ると言うのが大方の一致した見方です。
販売者も日本では販売者が普通に行っている、生産地の表示や生産者の顔などが「見える化」という手法や、消費者に安心を与える考え方のアピールをしていません。何よりも生産者、流通業者の自覚は不足しているといえます。
日本の支援でパイロットファームが実施されつつありますが、地方行政もバラバラで統一されていない。また制度を悪用した業者が摘発された事件も発生。このため認証に対する信頼度は低く、思うほど普及しないと指摘されます。
一部地域で生産者仲間が共同で(果実)生産~出荷作業をする所を見ましたが、まだ小規模で事例は多くありません。従って生産効率が低く、手間が嵩むのが現実です。しかしここでも専門家は居なく、従来のやり方を踏襲するだけなので知識・技術不足は否定できず、基本的には差別化は殆ど出来ていません。
さらにビジネスとして事業が出来る経験者がいないこと、資金面での問題があり設備や機械化が遅れているため、効率が極めて低くて、低収入が続く原因となっています。一次産品の生産は出来るけれど付加価値のある商品や加工食品を企画生産する知恵や知識が欠けているのが現実の姿。ベトナムの農業は日本に比べて40年ほど遅れているという指摘は当たっているようです。
また300キロ程離れた中部高原で野菜等の栽培を行なっている人は、大学の農学部を出ており知識は豊富。しかし作業に使う備品資材などは現地調達できないため、HCM市に来た時に買付けるといいます。この様に材料購入の問題もあります。
ベトナムで野菜を朝摘みしても日本のような機械選別やフィルム包装もしていませんし、予冷をすることなく出荷するのが一般的。しかも保管箱も鮮度を保つものではなく、流通・販売段階でも冷蔵手段がない伝統的手法が主です。
一部日系事業所では日本から輸入した特殊ケースを使っていますが、そういう知識はローカルにはありません。また日本では何種類かの鮮度保持剤が開発されていますが、あっても価格が高くコストに転嫁されると見合わず、まだその段階にはなくただでさえ高温下での小口輸送に依るため商品ロスが多く、またベトナムの気候では温度管理は絶対的に必要な筈。しかしコールドチェーンが未整備のため輸送中の傷みと品質低下は著しく、廃棄割合は20~30%に及ぶと言われます。栽培設備、材料、流通資材にも商機があります。
また最終販売者の所でも商品管理は良いとは言えず、売物という商売感覚を持った丁寧な扱い方が求められます。
残念ながら有機野菜業者のHCM市デポを見ても充分な冷蔵保管設備はなく、生産地から直接運んでも短期間に売れなければ黒ずみ、萎れる。余りを貰ったことがあり、まだ成長段階での過渡期です。また取り扱う有機野菜の大きさ、形や色など改良改善の余地は大きく、一過性にならない様にと願うのです。
こういう中で土壌改良から始め、農作物だけでなく加工品に至るまで企業化に成功した人も何人か出てきています。ある企業は長い期間を費やし現地農家と信頼関係を作り、今では隣接地に工場を建て共同で優良品質の製品をオーナーの娘さんがいる海外に輸出するまでになり、利益を出して出資者に分配していると話しました。長年の忍耐が要った指導と戦略的経営方針が功を奏したのですが、端境期でもあり急速に経営者や省の取り組み姿勢や優劣が明確になってきたと感じています。

株式会社VACコンサルティング 顧問
(IBPC大阪 ベトナムアドバイザー)
木村秀生