インドネシアは2019年2月、国際オリンピック委員会(IOC)に2032年の夏季オリンピック招致の意向を正式に伝え、東南アジア初の開催を目指しています。
これには、2018年に開催されたアジア大会の成功が大きな契機となっています。
アジア大会でのインドネシア選手の活躍に国民が熱狂
インドネシアでは2018年8月18日から9月2日にかけて、首都ジャカルタとスマトラ島のパレンバンで「第18回アジア競技大会」が開催され、45か国・地域から約1万1千人の選手が参加しました。同国でのアジア大会の開催は、初代スカルノ大統領時代の1962年以来、56年ぶりでした。
インドネシアは、金メダル31個、銀メダル24個、銅メダル43個の合計98個のメダルを獲得しました。メダル総数で中国(289個)、日本(205個)、韓国(177個)に次いで4位に付ける過去最高の成績を収め、国中が熱狂に包まれました。
大会は当初ベトナムでの開催が決定していましたが、ベトナムが財政事情を理由に開催を辞退したため、急きょインドネシアで開催されることになりました。大会準備は大幅に遅れたものの、何とか開催までこぎ着け、終わってみればインドネシア選手の活躍が光るなど、大会は成功に終わりました。
メダル量産に貢献した「プンチャック・シラット」
インドネシアのメダルラッシュの原動力となったと考えられるのが、東南アジアのマレー地域を発祥とする伝統武術「プンチャック・シラット(pencak silat)」です。アジア大会に初めて採用された同競技において、インドネシアは14個の金メダルを獲得し、同国の躍進に大きく寄与しました。
プンチャック・シラットは、日本の柔術に似て素手により攻防を展開する護身術です。インドネシア国内には、800を超える流派が存在し、それぞれの流派が独自の技術を持っています。
競技スポーツとしてのプンチャック・シラットは、世界でも広まりを見せており、世界大会も開かれています。日本にも「日本プンチャック・シラット協会」が設立されています。
オリンピック種目に認められる可能性も
2020年の東京オリンピックの競技種目には、プンチャック・シラットは含まれていません。
ですが、オリンピック開催がインドネシアに決まれば、追加種目として認められる可能性があります。このため、同国の選手たちは、2022年中国・杭州で開催されるアジア大会に続いて、2032年のオリンピックも見据えて猛練習に励んでいるそうです。
2032年オリンピックの開催都市は、2025年のIOC総会で決定する見込みです。