マレーシアを世界の「ハラル・ハブ」に

2020年3月20日(金)

以前、本レポートでは、マレーシアが世界で最もハラル制度が整備されていることをお話ししました。
ハラル制度とハラルであるための大原則

マレーシアでは、国を挙げてハラルに取り組んでいます。政府機関で国内唯一のイスラム開発局(JAKIM: Jabatan Kemajuan Islam Malaysia)によるハラル認証以外に、世界のハラルビジネスの中心になることを目指して「ハラル・ハブ(Halal Hub)政策」を掲げ、政府主体によりハラル産業の育成と国際展開戦略を進めています。

「ハラル・ハブ政策」とは?

ハラル・ハブ政策とは、ハラル制度を活用して、外国企業の投資促進や企業誘致を図り、生産されたハラル関連製品の輸出を促進する政策です。これを進めることで、非資源エネルギー産業の育成、雇用の拡大、外貨の獲得、ひいては経済成長を狙っています。

主な施策は、次のとおりです。

■ハラル産業開発公社(HDC: Halal Industry Development Corporation)の設置
 HDCは、ハラル制度を支援しハラル産業を管理する政府直轄会社(宗教機関ではない。)
■ハラル・パーク(Halal Park)の建設
 ハラル・パークは、ハラル関連のメーカーやサービス企業が立地するハラル産業専用工業団地。HDCが管理
■ハラル・トレーニング・プログラムの提供
 ハラルになじみのない非イスラム諸国の企業などに向けて、専門的な研修プログラムを供与
■マレーシア国際ハラル見本市(MIHAS: Malaysia International Halal Showcase)の開催
 MIHASは、世界最大級のハラル見本市。首都クアラルンプールで、マレーシア貿易開発公社(MATRADE: Malaysia External Trade Development Corporation)によって毎年開催

「ハラル・パーク」がハラル・ハブ政策の重要な位置づけ

上に挙げた、ハラル・ハブ政策の具体的な取り組みの中で、マレーシア政府は「ハラル・パーク」を推進しています。ハラル・パークが、国内外のハラル産業の直接投資の受け皿となり、食品産業などを発展させることが期待されています。

2017年には、マレーシア国内に22か所のハラル・パークが設けられ、これらのうち14か所が、HDCのガイドラインを満たした工業団地(HALMAS)と認定されています。

ハラル・パークには、食料・飲料だけでなく、調味料や食品添加物、化粧品といったハラル製品を扱う企業が集約しています。ハラル・パークで操業する企業は、ハラルの物しか製造しておらず、各工場の製造ラインはハラル認証を受けています。これによって、立地企業には、ハラルではない物と接触する心配がなくなるだけでなく、ハラル確保に関するさまざまな情報やノウハウが集積されます。

マレーシア政府は、ハラル・パークで操業する企業に対し、税制上の優遇措置を講じています。優遇措置は、輸出型企業に対して手厚くなっています。