ベトナムでリサイクルとリユースが活発化

2021年2月4日(木)

ベトナムはプラスチックの生産が増え続け、ここ数年は毎年18%前後の成長を見せています。これに要する原料は2019年度で560万トン、しかし自国での調達は半分以下の260万トンといわれ、海外からの輸入に頼っており、この額91億円。2023年までに1000万トンになると見込まれ輸入は増える一方。実際に工場へ行くと、日本製チップ等の紙袋が山積されています。担当者はこれを使い日本の電気製品の部品を造っていると話しました。
またこれまで廃プラスチックを再生原料として受け入れてきました。だがゴミを国内に持ち込むなとの世論の反対などもあってストップ。これではコストが嵩む企業にとっては大打撃で、原料不足や調達困難に陥ったとあります。

さらに問題は消費する以上に増え続けるプラゴミの量。年間200万トンにも達しており、これに拠る環境汚染も社会問題となっていて殆どはモラルと意識によるもの。平気でゴミを捨てているが、清掃人の仕事を作ると嘯く呆れた話。テレビでは河川や海での酷い汚染状況を流して啓蒙をするが効果はない。
またプラゴミの多くは梱包資材用で、役目が終われば廃棄されるが、この莫大な量が問題となっていました。さらに輸出で2位となる地場企業が強い繊維・アパレル産業と、靴履物産業では廃棄物の9割がこのプラゴミだとあります。
こうした所にゴミの分別が導入され、廃棄プラゴミの50%程度迄をリサイクルして、再利用できるなら企業の製造コストは15%ほど抑えられるとの試算。
俄かにリサイクル強化が始まっています。
政府は企業にプラスチックを含む廃棄物や産業ゴミ回収を促進し、再利用への導入費用には優遇策を採用。リサイクルによって原材料の海外輸入を削減し、国内で必要とする50%を賄う計画をしています。
これはベトナム環境保護基金といい、再生利用を図る企業へはその資金を最大70%まで、年率2,6~3,6%の低利率にする優遇措置を始めました。
また既に日本では開発済で導入が進みかけている生分解性プラスチックの活用も新しい技術だとして注目しています。

・企業の取り組みがやっと始まった

政府は「2030年に向けた海のプラスチックごみ管理に関するナショナル・アクションプラン」を発表しましたが、産業界でもこのプランを実行する行動が始まっています。
日本にもOEMで輸入されているベトナムトップの菓子メーカー、キンド社では2025年までにすべてのパッケージを再利用できるものにすることを決定。
ネスレ・VNも包装資材企業屋メーカーと共同で「PROベトナム(Packaging Recycling Organization Vietnam)」を立ち上げ、回収プロセスや製品の包装の改良を行い、20205年までに100%リサイクル可能なパッケージを促進するとしています。
スーパーのサイゴンコープは、日本では既に実施されていますが、空き缶や紙パック等を回収する活動をスタートさせたと言います。此処では段ボールの箱は無料でくれないので、持ち帰りは自由にできません。

・生分解性プラスチック工場を建設 22年度に計画

鉄鋼メーカーで家具なども製造する上場企業アンファット社。この会社が自然界の微生物で分解されるプラスチックを、年間2万トン製造する工場新設計画が話題にのぼりました。
しかし同社の製品はこれまで明確な基準が無かったという生分解性、即ちこれまで国内市場に出た、原料に添加剤を加えただけでマイクロプラスチックへと分解しやすいという曖昧なものでは無く、完全に土中で分解される製品。
異業種であり開発は困難だったという。またこの生物由来原料は国内製造できないのでコストが掛る問題がある。また人の意識を変えることが重要としています。本気なら社会への貢献度が高く間違いなく市場は拡大してゆきます。

・行政も重い腰をあげた

商工省は廃棄物管理規制の順守状況を調査。企業が再利用できる製品の生産と紙を材料にした包装資材や消費財を奨励とともに、リユース促進政策を策定。
ハノイ市は一日ゴミ排出量が6000トン程で、このうちプラスチックは10%に及びます。2025年に向けて市関係はナイロンやプラ製品を使用しないと率先垂範。企業や小売業者にも環境負荷の低い製品を使うように求めました。
またこれまで消費者がゴミとして捨てていた牛乳パックも回収を始め1200校から7か月間で240トン、2500万パック分を回収したとあり、これを製糸工場に送り紙製品等にリサイクルしたと自画自賛している。
このように消費者の意識を地域と関連して行う対策が必要と当局は報じますが、
称賛というよりも、やっと始まったか!感があります。
中部の中核都市ダナンでも、取り組みが始まり、市内全ての商業施設でプラスチック包装資材の削減に動きました。このため大手ではショッピングバックを無料提供。当局は2030年までには生分解性や天然素材を使った資材に置き換える計画。さらに一般家庭や個人店舗でも普及させてゆく考えと言います。
これには女性連合が積極的に活動。資源ごみ回収で得た資金を基に貧困家庭の子供の学習支援を始め50~80万VNDを奨学金として分配したのは素晴しい。

・一見積極的な行動に見えるが

此処まで辿り着くには相当の時間が掛かっています。
早くから現地でビジネスに係わった人がベトナム人は順法意識が高いと著書に書いていたがとんでもない全くの出鱈目。あり得ない話。
多くの人は自分勝手。人の言うことを素直に聞かずに我儘やり放題。二度三度の試行を経てようやく出来る。先例として、これまで死亡事故が余りにも多くヘルメット着用義務を課したが、暑いからと言い訳して殆どの人は守らない。
道端で売るヘルメットも安全基準を満たさない粗製乱造。体裁が整えばよし。
自発的に動こうとはしないから、権力が押さえてくる。だが、一旦事を行うと脱兎のごとく集中。ベトナム戦争でも発揮したのがこの能力ともいえる。
一方我国。無責任なTVコメンテータに付和雷同。明確な判断を示さない政府行政の優柔不断と責任の逃れ合い。今回のGOTOでも分ったが先が読めずに使えない世間知らずで無能な役人と政治家の姿。

株式会社VACコンサルティング 顧問
(IBPC大阪 ベトナムアドバイザー)
木村秀生