宇宙開発に乗り出したベトナム?

2022年2月15日(火)

鹿児島県、種子島の内之浦から打ち上げられたイプシロンロケット5号機。
このロケットに搭載されていた9基の衛星のひとつが、ベトナムの小型衛星であるナノドラゴン。これはベトナム科学技術研究所所属の国家宇宙センターが開発したキューブサットです。
この衛星は海上の船舶の動きを追跡と監視を目的とするもので、ベトナム大使であるナム氏も現地で目撃、ベトナムが自国で宇宙産業を発展させることが出来ると感激した想いをVOV5で述べている。
この衛星、重さ約4㎏。10cm×10cm×34,05cm大のもので、開発・設計などベトナム国内でなされたとあります。3月に完成後、九州工業大学の超小型衛星試験センターで振動、衝撃、熱真空などの耐久性能試験を受けて、基準をクリアしたものです。
この記事にはあたかも自国で打ち上げたかのような書かれかたで、詳細はない。しかし日本でベトナム製の衛星が打ち上げられたのは今回が初めてではなく、2019年1月にもイプシロンロケット4号機で他の6基の衛星と一緒に打ち上げられ、軌道に乗っていまでも活動しています。衛星の名前はマイクロドラゴン。制作を担当したのは2013年~2017年にかけ東京大学や慶応大学でなど日本の5カ所の大学や研究所で研鑽を積んだ宇宙開発センターのスタッフ36人が共同で開発製造したもの。この衛星の特長とはLCTF(液晶可変フィルター)カメラ2台が搭載された海域観測衛星となっており、水質の評価や水産資源の位置特定、海域で生じる現象の観察です。打ち上げはアフリカ・ギニアのフランス基地から。
これまでベトナムは外国から衛星画像を購入しており、1枚約20万~50万円の費用が嵩んでいたのです。このため連日一日100枚もの衛星写真を即時受信できるようになりました。寿命は5年と長くはありません。
だが衛星は初めてでは無い。最初に通信衛星があり、これはベトナム郵政通信グループによるVINASAT1で2008年。2号機は2012年にVINASAT2。
2013年5月に打ち上げられた重量約1㎏のVNREDSat‐1(ピコドラゴン)が地球観測で第1号となっています。この機でベトナムはタイ、インドネシア、マレーシア、シンガポールに次ぐ地球観測衛星を持つ5番目の国になりました。
2基目は17年にベルギー企業に製造を委託。ベルギーのODA6千万ユーロを利用したもの。主に地球観測で使われ資源探査、災害監視、環境観測の目的で高解像度撮影が可能となっています。
しかし11月22日現在、この衛星に搭載された3回線から電波が未だ受信できていないとの報道。連日コマンドを送信するも状況は全く分からないとある。

・専門家育成計画

ベトナムは2030年までに宇宙科学分野での専門家を300人、エンジニア3000人を育成するため、首相決定がなされ即日発効しました。
これと並行して研究所の改修、光学センサーやレーザーの開発製造、ベトナム初の宇宙センター建設を目指すと報じています。
この目的は自然災害監視や社会変動の監視?となっているが、先行基の老朽化に対応しなければならないためです。

・ベトナムに宇宙飛行士がいた!日本より早く宇宙へ飛んだ

殆ど知られていないこの話。実話だが1980年ソビエト時代にバイコヌール宇宙基地からベトナム、否アジア人で初めて宇宙へ行ったベトナム人がいます。
ベトナム戦争が終結してまだ5年、80年7月20日ソユーズ37号に搭乗し宇宙ステーションへ到着。わずか8日間の滞在でした。
彼の名はファム・トアン。ベトナム人民空軍に所属し、1977年にソ連邦のガガーリン空軍士官学校で16か月間の宇宙飛行士になるための訓練を受けて最終的に選ばれたのです。
この計画はソ連邦のインターコスモス計画の一環で、ベトナムから2名が派遣されそのうちの一人に決められました。
今と違って危険はこの上ない。アメリカより宇宙技術が先行したといえ宇宙船とステーションとのドッキングはこれまで2度失敗。確実に成功の保証は絶対にあると言えない中、ベトナムから科学者や報道関係者も来て固唾をのんで見守っていたと記録されている。
また帰還時に通信が途絶えて緊張が走ったものの回復。無事に地球へ生還したとありますが、現在の半年など宇宙ステーションに滞在できる時代と異なり、狭い空間での生活、食事は宇宙食で飲料水も限られ、眠るときは縛り付けられた寝袋の中で睡眠をとっていたと言います。
滞在中は宇宙物理学や医学・生物学、無重量状態での冶金など、約30の実験を行ったそうです。
トアン氏はソ連邦から外国人初のレーニン勲章とソ連英雄の称号を授与され、ベトナムに帰国後も空軍に勤務。1999年に空軍中将。2000年には国防産業総局長、2002年に国内トップの軍隊銀行総裁にまで上り詰めました。
現在でもベトナムの英雄と呼ばれ、その功績を評価しています。この様な歴史があってこそ、ベトナムは宇宙への国家としての誇りと挑戦を続ける礎がある訳で、積極的にこれからも人材育成と技術獲得へ予算を投じてゆく可能性は高いと考えられているが、技術開発はようやく始まったばかりです。

株式会社VACコンサルティング 顧問
(IBPC大阪 ベトナムアドバイザー)
木村秀生