・上半期は好調に推移 GDP成長率上方修正
市内の各地区やアパートなどは完全封鎖、地域間の移動制限を強要し強硬姿勢でCOVID-19蔓延防止策を実施した結果、思いのほか打撃を受け落ち込んだ経済。
これはあかんと企業を立て直して活性化するため、身の変わりも素早く成長へ舵を切ったベトナム。その成果は現実になってきています。
計画投資省の発表に拠ると、2022年度に入って徐々に回復の傾向を見せ、この上半期は当初に計画し、国会で承認された6~6,5%の成長目標をクリア。同省は推定値であるが上半期は6,42%と、前年同期の5,74%に比べても、また直近の3年間で最も成長した事は、成長への切り替えが大正解だったのかもしれない。
さらに統計総局は4~6月の第四半期だけみれば、7,72%と2011年以来の四半期で最高値を示したとしています。
これを踏まえたうえで計画投資省は下半期を予想。経済成長を上方修正して7%とすることを政府に提案したと報道されている。
この数字を想定した要因は、関連省庁や地方の行政が経済回復を行うために、政府が指示した方針を着実に実行した成果である。さらに経済安定と物価上昇に対処するためには企業、国民、取り分け低所得層に向けて支援を適切に講じる必要があるとしています。だが実際にはアピールできる様な手厚い金銭的、物質的支援など無く、また物価上昇は世界的であるため抗えず、都市生活者や地方出の人の多くが苦しい懐を余儀なくされている切実な社会問題はそのまま。
事実7月の最低賃金改定では企業の業績は改善したようだが、労働者が普通に生活をするうえでの期待する引上げを得るところまで行きませんでした。
計画投資省はこの修正する7%成長を達成ためには第3四半期の成長目標を9%に置き、第3四半期には6,3%にする必要があるとするポジティブ案と、当初目標の6,5%を達成する案の両方を考えている。一見するところ成長傾向にあるけれど、ウクライナ侵攻問題から派生する世界経済の不確定要素があるのではとの懸念、もしくは万一の場合の責任逃れの為なのかと推測できるが、実際の所はそれに対処できるだけの各種要因は盤石であるといえません。
ところで7月5~6日、ロシアのラブロフ外相が来越。戦略パートナーシップ樹立10周年記念とあるがVOV5でも詳しい報道はない。ベトナムにとっては無下にできない大切な国。フック元首相は2021年に訪露し2030年迄この包括的戦略PNSへのビジョンに関して共同声明を出したが、今回の真の訪越目的は天然ガスと石油の売り込みであると識者の斜め読みもあります。
・上半期のマクロ指標
VOV5・ベトナムの声放送は先の上半期の経済状況が好転したことに触れ、引き続いてマクロ経済は安定。インフレも抑制されており、国家予算も歳入と歳出の均衡がとれているとしています。だが成長軌道に入っていても想定以上に経済が疲弊したゆえ、一早く封鎖解除に踏み切った訳だが労働市場の回復が前提。しかし人は居ても人材がいないと自他ともに認めるところ。
政府は経済成長を目指し、体制改革、人材育成、インフラ開発の3つを戦略的突破口として位置付けていると伝えています。このため首相は重点となる建設工事現場を視察し、各地方省へも足を延ばして頻繁に会合を持ち、これを継続しているとあり新しい産業構築にも取り組んでいる。
アメリカの格付け大手S&Pはベトナムの長期信用格付けをBB+に引き上げ、安定的としたのは成長を遂げた一つの証明でもあると言えます。
また経済成長が軌道に乗ってきた事は、この上期に新規起業と事業再開が10万社を超え過去最高となっており、事業と市場拡大への意欲向上が見られたことであり、復活の兆しと将来への期待を肌で感じとれます。
殆どの産業で成長が見られ、農林水産業は3,02%。取り分け鉱工業・建設業8,87%、サービス業が8,56%で、GDPに占める割合は夫々46,85%、48,59%だったとあります。
内需も反動で旺盛。最終消費支出は前年同期比7,32%増加。資産累計は4,57%増。財・サービスの輸出は12,33%増、同輸入が4,88%となった。
なお統計総局の統計ではこの期の産業割合は農林水産業11,05%、鉱工業・建設業39,3%、サービス業が40,63%となり構造の変化がもろに出ている。
・上半期の輸出入
2022年度上半期の輸出は1860億3181万ドルで、これは前年同期比17,3%の増加。また輸入は1852億8898万ドル、15,5%増加した。
貿易収支は7億4283万ドルの黒字。
輸出は欧米向けが好調、だが輸入は世界的な傾向から石油製品が増えたとある。
輸出の内訳をみるとアメリカが565億9993万ドル、前年同期比24,1%増加。2位は中国で261億7110万ドル(6,6%増)、3位韓国121億210万ドル(17,1%増)、4位日本113億7897万ドル(12,9%増)。以下香港、オランダ、ドイツ、インド、タイ、カナダの順だが、特に欧州勢とカナダの前年比大幅増が目立ち、インドも出てきました。
輸入は中国が1位611億2412万ドル(14,6%増)、2位韓国325億3862万ドル(27,9%増)、3位台湾121億2614万ドル(19,3%増)、4位日本120億3811万ドル(10,9%増)、5位アメリカ75億46百万ドル(▼2,4%)、以下タイ、オーストラリア、マレーシア、インド、ネシア、インドの順。オーストラリアとインドネシアは石炭や鉱物資源の輸入急増が特徴となっている。
輸出・輸入から見える特徴とは、ベトナムの輸出にアメリカが大きく貢献してベトナムの大幅黒字。だがアメリカの輸入は輸出に対して僅か16,7%と完全不均衡だが、この状況が近年続いています。
反対にベトナムにとって中国と韓国は原材料・資材輸入国で大幅赤字国。その輸出輸入比は中国が2,34倍、韓国は2,69倍の大幅な入超となっている。韓国とベトナムがFTAを締結した時に、ベトナムは輸出の増大が見込めると踏みました。だが当時筆者は「それはない、喰われるだけ」と言った通り数字が証明している。是正できる状態にはなく増加する一方。
また輸出品目は依然として1位が電話機・部品、2位コンピュータ関連製品。この2品目で30%となっている命綱。5位に綿製品、6位に履物があって地場産業が活躍しており世界シェアも増えています。
しかし、輸入を見れば1位にCP関連製品、2位が機械関連、3位は電話機・部品、5位鉄屑、さらに5位は綿布・生地、6位プラスティック原料、以下化学原料、金属、石油製品、化学製品と続くが、この国の問題である原材料・資材、またこれを使って製造する機械輸入が占めている構造に変わりない。
さらに輸出に対して外資系企業の割合が73.1%となっているが、この傾向は増々強く現れており、外資の投資が増えればどうなるかは明らかです。
株式会社VACコンサルティング 顧問
(IBPC大阪 ベトナムアドバイザー)
木村秀生