ブロックチェーン普及とベンチャーキャピタル

2022年10月4日(火)

暗号技術に拠りデジタル情報(資産)を分散管理するブロックチェーン(BC)が世界の潮流になりつつあります。
日経新聞には分散型台帳とカッコ書きされた記事を頻繁に見るが、2008年ナカモト某とされる日本人らしき人物?がBCを発明したとされ、暗号資産の公開取引台帳としての役割があるという。詳しくは検索してみてください。
ベトナムは経済回復の原動力に、金融、小売り、製造業、ゲーム、エネルギーや物流や教育など多くの業界業種でBCを導入し、事業効率化やコストダウン、財務管理等への幅広い利用を期待しており。このため科学技術省では、今年度からこのブロックチェーン導入支援に向けて事業を整理し、社会的利益からの見地とか、貢献度から優先順位を付ける方針を出している。
しかしBC研究所のチュアン博士は、起業や創造の余地は残されており、今後一層普及するとしながらも高いコストに見合うだけの効果が得られるのか検証しなくてはいけないと、慎重かつ時流に反するネガティブな姿勢も見せている。
今年になって政府が目指す国内デジタル化に伴い、銀行業界は暗号資産普及に拠りベトコムバンクや軍隊銀行が導入をすると発表。保険業界や農業分野でも試験的に導入を図る計画を相次いで出しています。

ベトナムにもブロックチェーンを使って分散型金融(DeFi)を手掛ける企業があり、この発展に拠る契約(BC上でのスマートコントラクト)や、暗号資産での非代替性トークン(仮想通貨においてのデジタルコイン、キャッシュレス決済での認証デバイス)など新しい技術が実現され、世界的なスタートアップ企業が生れているとし、BCの将来性を高く評価しています。
しかしベトナムではこのBCの人材開発と育成が遅れており、この原因はこの分野にチャレンジしようという人の少なさと法律の壁が足かせだという。
こんな中、今年5月ベトナム・ブロックチェーン協会が政府の許可を得て設立。技術導入と量的、質的能力発展と研究を目指しているという。世界的には結構出遅れ感があるものの、ようやく業界としてこの分野への投資を求めています。

・商工省が進めるインダストリー4.O関連技術

商工省は傘下の研究機関でIoTやAI、ブロックチェーン、ロボテクス、3Dなどの先端技術研究と実用化を進めてきたと報じられています。
商工省は13の研究機関を持っていると云い、この内の2研究所は株式会社化されて積極的に活動しており、各プロジェクトの研究成果は企業の生産能力や品質向上、競争力強化など地場産業に役立っていると自己評価している。
各研究機関は基礎と基幹産業発展のため研究を強化しており、インダストリー4.0の流れに沿うスマート生産開発やデジタル。トランスフォーメーションを推進する計画とあり、既に炭鉱の制御システムや外資企業が採用するAIを使って行う品質検査システム、IoTを用いて酪農での自動給餌・換気システムなども開発し、企業がこれを採用している実例を発信しています。
また茶葉生産と加工での自動制御システムを独自で開発、工場で利用されている外に、産業用ロボット分野では倉庫でのスマート荷積み下ろしを開発、外国製品に比べて40~60%のコストダウンに成功。これは地場の中小物流企業が採用したけれど、技術的アドバイスや実用への提案なども行っているという。
これに関して商工省は、これ等はベトナム人技術者に拠る設計、開発、製造と設置。重要な工程でAIとIoTを活用して100%自動化した事に意義があると自慢するが、先端技術国からすればどの程度なのか。地場企業は研究機関の支援を得て、単なる汎用部品造りや下請け的委託製造から脱皮している実態もあり、今後実績を積めば果たして技術立国になれるか?まだ始まったばかり。

・ベンチャーキャピタル ベトナムは過去最高額

国内スタートアップ企業の2021年度、ベンチャーキャピタルの投資総額がCOVID-19禍にも関らず過去最高の14億ドルと前年に比べて4倍に急成長したとあります。年々最高額を更新しているのはネット通販や電子決済の普及の外、キャッシュレス決済アプリのMOMOやSky MavisといったITユニコーンが登場したことも追い風となっていると報道されています。

ベトナムEC(電子商取引)事情について以前も書いたが、最近シンガポール物流企業とヨーロッパの宅配企業が調査したところでは、ベトナムのEC利用者による2021年度の一人当たりの平均購入数は104パッケージとなり、調査した東南アジアでトップになったと報じられ、急発展に何とも驚きです。
この6か国はシンガポール、タイ、マレーシア、フィリッピン、インドネシアとベトナム。かつてこれらの国はベトナムに先行していた国であったが、現在は平均66個と6割程度に収まっている。
調査ではベトナムでは日用消費材、衣類とか履物などファッション系が多く、日常的に利用しているという人は73%にも達している。また海外のサイトから多数の商品を購入した経験がある人も59%と意外に多く居るものですね。
ここから見えてくることは、ベトナム国内には思うほど目ぼしい商品がなく、ブランドサイトもない。海外は取引条件が良く透明性がある。返品オプションが簡単便利。などの不平不満がかなりの数字を占めていることが判明しました。
これ迄も国内でネット購入した商品に拠るトラブルは結構多く、また支払いや返品でも問題が多かったベトナム。これは商品力とか品質の問題。最近は簡単に外国の商品も検索できるし、若者は最新ファッションへの興味が高く敏感。また日系デパートや海外有名ブランドのベトナム進出もあるなど、ユーザーの目が肥えてきているという実態もある。殊に海外留学や仕事などで海外生活を経験した人にとっては、幾ら「ベトナム製品は高品質」としてベトナム製品を買おうなんてスローガンを鼓舞しても満足しない。こうした現実が実際にあり、経済成長に伴う生活者の購買力向上と購買意識の変化が急速に変化している。国内製造・販売業者はこの実態が分からず、時流に乗り遅れているのが実情。
かつての様にモノが買えなかった、買いたくても無かった時代ではもはやない。
スーパーでさえも、地元の生活者にさえ売ってやるというような横柄な姿勢であったのが僅か10~20年前。ベトナムにとってECは小売業態が段階的に発展してこなかったからこそ、ニーズにマッチし急速に変化した流通革命です。

ベトナムが東南アジアEC市場で占める割合はまだ15%。年々利用者が増え、2021年は前年から600万人増加して5180万人とか。他国に比べ高額商品や多種多様の商品がラインアップされるとさらに伸長する可能性があるのです。

株式会社VACコンサルティング 顧問
(IBPC大阪 ベトナムアドバイザー)
木村秀生