ベトナムでも分譲アパートを購入すると毎月管理費を払う事になります。また購入時には日本と同じ様に修繕積立金のような類の金銭を一括で支払いました。
しかし明確で詳細な法律があって、これを管理規約とか使用細則などの文書で交付された訳ではなく、契約書の条項にそのような文章は確かにありました。従ってかなり厚い契約書(越語と英語)だったのです。
法律に基づいた管理組合があるのではなく、管理していたのは分譲会社であり、管理費はその会社の収入となっており、毎年の収支報告や監査などは全くありませんでした。
我々からみればこの様に住宅に関してもかなり不備があるのだが、今年住宅法が改正されるという中で、このアパート管理費の支払義務に関して議員からの質問があったと報じています。
彼は管理費の支払義務が住宅法108条第2項にある、アパートの所有者は、共用部分のメンテナンスを実施するため資金が充分でない場合、追加の費用を負担する責任があるとの規定を引用。しかし実際には多くの所有者は追加費用を拒否しているため、アパートの維持管理が困難になるケースがあったと説明。
という事は、かなりの集合住宅でこうした修繕費用が発生し、その費用分担でトラブルがあったという証明でもあるのです。しかし管理者は所有者に強制的に費用を分担させる手段を持っていなかった。
そこで今回の法案(案)では、所有者が費用を負担しない場合、管理委員会は支払いが行われるまで電気、水道の提供を一時的に停止する、との解決策が盛り込まれているのです。議員はこれに対して生活に必要なものであり、憲法と人権に関する法律に違反しているという、とんでもない内容で面食らいます。
これは民主主義の原理原則から逸脱した強権発動。議員は真っ当な考え方だがこのような話になるとは日本人からみれば見当すらつきません。まして電気・水道(ガスはない)を止める権限を管理委員会に与えるなど想像の域を超えている。記事にされ、法改正の草案になっている自体が超異常な話なのです。
話はこれだけでは終わっていません。いくら読んでも全然理解できないのだが、省人民委員会は当事者間の合意が民法の規定に準規している間、民間アパートの管理及び運営サービスの価格を交渉する際、当事者が参考にする基礎として機能するサービス価格のフレームワークを公表する。と全く訳が分からない。
要するに日本のように各マンションの管理組合が、総会の議決に拠って管理費を決め、何か問題が発生した時にも、法律に基づいた内容に沿って議決されるものではありません。
各アパートでの事情が異なるため、管理費は当然異なる訳で、本来人民委員会が絡んでゆくべきものでは無いけれど、その範疇にあると解釈できるのです。
即ち管理費などに関し、人民委員会がある程度の適正な価格指針を持っているという風に理解できるわけだが、これは完全な民事介入であり、当事者である各住戸の所有者同士で追加分の修繕費用問題が解決できなければ、これを参考にしろ、と言っているようなもの。だが幾ら何でも考えられない愚挙に近い。
これが社会主義国での現実であり、こういう事態になると、外国人がこの国で住宅を購入するなんて馬鹿げており、恐ろしくなるのが当然です。
また草案には、アパートの管理委員会がその権限を越えた場合、程度に応じて刑事責任について審査される。などもあるとし、この内容も論議されているが、アパートの管理委員会は商業法人とされるとし、法的に矛盾もあるなど草案としては甚だ不十分。さらに維持資金を強制的に引き出す際に、法律に違反した場合、省が管轄機関に調査及び処理を要請するなど、もはや完全に理解不能な世界に嵌まり込んでいる。普段はこんな条項など意識して生活している人など居ないし、此処までくれば当のベトナム人でも分かる筈などありません。
他国の事情ながら日本のように集合住宅に付いては、明確な区分所有に関する法律がないため、須らく問題があれば省の人民委員会が中に入る、ということになっていると受け止められます。
筆者が思うに、先に共用部分と書いてあったが、実際に専用部分と共用部分との区分けが本当に分かっているのか。まして共用部分の専用使用権なども本当に理解できているかと言えばかなり怪しい。さらに日本では建築基準法上での面積と登記面積は異なるが、さらに共用部分の専用使用権に属する面積を、契約書で事実販売面積に参入してあったのです。これは自身の契約書を見た時からの疑問なのだが、一般の日本人でも専門知識が無いと恐らく分かりません。
こうした状況が明らかでなく、また販売する担当者も分かっていないのが実態。
ベトナムは法整備が不十分。というのが進出する企業から見ても認識がある程だし、実際にそうした場面に遭遇することが多く、弁護士であっても苦慮することがある様です。
まして国民が生活するうえで住宅に関してまでも省の人民委員会に管理されている訳なので、彼らからすればそれが普通との認識なのかもしれないが、他国の人から見ればあり得ないことです。
株式会社VACコンサルティング 顧問
(IBPC大阪 ベトナムアドバイザー)
木村秀生