2030年には5670億キロW/時が目標。このうち再生可能エネルギーが占める割合をほぼ31~39%にする。
さらに2050年に向けた、海上風力発電や蓄電池開発、バイオマスに加えてアンモニアや水素での発電へ移行があるとか盛りだくさん。このPDP8では設備容量は2050年に約50万~57万3000万メガWが目標数値だが、これは2030年の3倍強となる数字なので、この大半を再生可能エネルギーでまかなう計画だが、これは電源構成比からすると60%以上となる。
確かに人口は増え続け、生活様式の変化から電気を大量に使うだろうし、海外企業の投資も現在のところ活発に作用している。産業の再編も出て来るだろう。
だが大切な省エネには触れていないのは何故か。これは再生可能エネルギーにしてもこれからの課題。自国でこうした研究や開発力が殆んど進んでいない事、研究者が居ない、施設が無ければ不可能です。
問題は計画通り達成する可能性はあるのか。目標はいいとして完全に進められるとの保証がありません。つまずく原因は資金。まず国内で関係機関や団体との論議が必要だし、国内では殆んど当て出来ない。これまでの方法として必ず出てくるのが国内外からの投資に拠るインフラ整備。即ち外資系企業の参入を得られなければ実現はできないとの見方がある。文章の間からはこれを当然のようにした関連法規の整備も盛り込んでいるのが証拠です。
・脱炭素化への道筋に着手
2050年までにベトナムは脱炭素を実現。これはCOP26で明確に宣言、国際的に約束したもので簡単には覆せない。このため先の第8次国家電力基本計画を作成したけれど、実際にはかなりハードルが高いとみる。
しかし目標を建てた以上、如何に具体的に進めてゆく事は可能なのかであるが、環境保護に関して法律が2022年に改正されて取り締まりはかなり厳しくなっています。この重要な変更点とは廃棄物処理で、この責任の所在を製造業者に課したという事が挙げられる。HCM市にも産業廃棄物処理を請け負う業者は居るが此のライセンスを取得するのはかなり難しい。中には古くから在住する日本人も居て目の付け所は良かったと考えるけれど、実はこの事業は極めて厳しい。外国企業も汚水を垂れ流していたが環境省は直ちに改善命令を出した上に操業停止と罰金を課した。日本の様に指導から始まらず厳しく対処する。
これまで製造業者は販売段階までであったが、改正後は消費者が使用した後の回収とリサイクルとあり、此処までは幾ら何でも酷すぎると思われるほど厳格。
企業は自社の廃棄物を回収して処理するか、環境保全基金に寄付しなければいけないとされ守らなければ罰金。この義務を拒否すれば法的に処罰されるというものだが完全に取り締まれるものでは無く、意識改革を講ずる必要がある。
例えばベトナムはプラスチック大国で、海洋廃棄量は世界7位といわれている。かつては海外から廃プラが輸入され再生されていた程。テレビで放映されるが殊に都市部の河川で投棄された廃プラや家庭ゴミが滞留、海洋に漂い、海岸に流れつくが誰も片付けようとしないので悪臭にまみれ、水は真っ黒。
こうした事は家庭や社会教育の欠如であるが、HCM市ではようやく分別回収が始まったので幾分かマナーはマシになってきた。
家庭での段ボールや空き缶、プラスチックボトルは回収する人が居て、生活の糧にしており、私の住んだ地域に買い取り業者があった。しかしこれを上回る程の量が捨てられていたので、これに政府が業を煮やして製造企業にまで回収を義務付けたのです。生活にゆとりが出来るとこれまで中古品が売れていたがこれも無くなってきました。誰だって新品や良品を買いたい。そうなると廃棄プラスチックは増えるばかりで不法投棄は増す一方。これを処分するためには燃やすしか方法がなく、そうなるとますます不必要に二酸化炭素が排出されてきたのです。またスーパーでもレジ袋は無くなり市民の考え方も変化している。
ベトナム政府はCOP26以降温室効果ガス削減へ着手。ゼロカーボンの実現のため所感を公布、排出量監視のため運営委員会を設立。COVID-19以降の回復過程で再生可能エネルギーの潜在力を発揮し、二酸化炭素削減への行動に入り、低炭素化社会への発展モデルへの転換を奨励するとしています。さらに炭素税導入も検討しているとの情報もある。
・排出権取引市場の開始が予定されている
政府は2025年までに排出権取引市場を開始するとした。排出権取引とは、国全体の二酸化炭素排出量を設定し、これを各企業等に振り分けるというもの。
さらにこの排出権取引以外に政府が定める一定規模以上の事業所、企業や機関へ温室効果ガスの排出量を記録することを義務付けしたのです。
これは企業が排出量を計算し、限度を下回った場合を余剰分として権利を売ることが出来るとするものです。これには各企業等の積極的な削減への企業姿勢が問われることになる訳で、企業の評価に繋がるという仕掛け。しかし排出量が少なくなればなるほど価格は下がるし、多くなると上がるという需給関係がまた成立するのは必然の成り行きで、安定した取引のために市場は必要です。
これまでもの作り国家化を目指してひたすら特に外資系製造企業の進出を進め、工業団地を全国で造ってきたベトナム。このため人の生活は豊かになったが、これに拠って消費電力が増え、それに比例して電力を創るため火力発電に頼ってきたため急速に石炭と石油の使用が増える悪循環。そして3000トン以上の二酸化炭素を排出する企業に削減を義務付けた。だがそれで収まらなければどうするか。即ち他企業から買い取る事で免罪するが、ベトナムの市場は10億ドルになるとの試算がある。具体的な市場は先記の通りで未完成。だがもう売ることが出来るとあります。この価格はひとつの事例で1トン当たり6ドル、もう一件で10ドルとあるがこの差は何なのでしょうか。天然資源省では最適モデルを決定するため海外市場のケースを研究している。しかし南部を中心にして拡がっている広大なマングローブ地帯。この森林を有するのは国家で実に莫大なクレジットを持っているはずだが、これを如何に配分するのだろうか。
政府は各企業の事業特性を検討し、そのうえで割り当てをすることになるため、この作業と計算にはこれまで通り様々な問題(贈収賄などの不正行為など)が発生する可能性も指摘されており、役人への教育が先ではなかと考えます。
こういった動きに対し特に輸出の70%以上を占める外資系大手企業は早くから認識。社内での産業廃棄物処理や電力消費削減、製造に必要な電力や火力等のエネルギーの効率的使用を工場で行う外、梱包材やプラスチックの減量などに取り組んでいるとある。また廃棄物を利用した製品を造るとか、社員や協力企業へ削減への意識改革も実施している所も出てきたのは好ましい傾向です。
EPZ内の外資系企業は、工業団地内で再生可能エネルギーに拠る電力開発が有効と政府に提言しているが、これに対する回答は出ていません。アイデアがあっても、何事も政府の許可が無ければ動きが取れない所に課題があります。
日本とベトナムとの間で何件か二国間クレジットが発行され取り引されている。今後この協力関係が進展する可能性は高いと思われるし、日本は削減や装置などの分野で高い技術やノウハウがあり、これを機会に事業参入が考えられます。
株式会社VACコンサルティング 顧問
(IBPC大阪 ベトナムアドバイザー)
木村秀生