回復が見えない不動産 資産としての輝きを失う

2024年2月28日(水)

現地報に拠れば、不動産はその(投資)魅力を失い、2023年の主要な資産にはならなかったとあります。
ベトナム不動産協会(VARS)が1月12日にハノイで開催した2024年フォーラムで、同協会のディン会長は「不動産価格の下落は、長期間にわたる市場の無秩序な発展と透明性・安全性の欠如に起因している。2022年5月から2023年末にかけて不動産市場では何千ものプロジェクトが中断され、多くの事業が閉鎖された。さらにブローカーの80%が仕事を失ったとされる。
最も深刻な影響を受けたのはリゾート関連の不動産で供給は80%以上減少し、取引はわずか700件にとどまった」としています。
だがあまりにも抽象的な表現で具体性などなく説明不足。また各部会での総括や討論は無かった模様で、原因を精査している訳では無く、講じる策すら無く、全くのお手上げで何も言えないのか当たり障りのない表現に終始しました。
協会の解説に拠ると、アパートの販売価格はハノイでは1㎡あたり5170万VND(約2068ドル)、HCM市では7100万VND(2840ドル)であったとしています。だが地域性や個別の条件には触れず大雑把な捉え方。
市場で最も堅固な柱である商業用、あるいは公営住宅部門では、供給が5万5千戸に急落し、COVIDパンデミックの約3分の1にまで落ち込んだという。
また昨年新しく完成した国の社会住宅プロジェクトは46件のみで、2021年から2025年の目標の4,7%に留まっているとしています。
ビーチヴィラ、ショップハウス、コンドテル(コンドミニアムとホテルを組み合わせた物件)の供給が減少する他、一部の開発業者は利益配分の約束を果たせず投資家の信頼が急落したとある。
土地に関しては、多くの販売者が30~40%のディスカウントを行なったが、それでも買い手が見つからなかったと危機感を丸出しです。
なお現地報によれば、建設省に拠ると昨年のタウンハウスの価格は全国で10~14%下落したとある。同省の建設経済研究所は、ダナン13%、HCM市12%、ハノイ11%、カインホア省(ニャチャン)12,3%が最も顕著だったという調査報告をしたという。
またHCM市ではいくつかのアパートが価格を下げたとあり、1区のグランドマンハッタンは4,4%、7区サンライズシティーヴューは4,6%、同ベラザアパートは4,2%との下落と報じています。
一方、ハノイの平均価格は各区で4%前後の上昇がみられたとある。
2023年下半期、アパートと戸建て住宅の取引件数は上半期より17%減少したが、土地の取引件数は28%増加したとし、不動産協会とは乖離しています。

・不動産市場の回復は期待薄 業者に従業員も急減少している

不動産コンサルティング会社、DKRAベトナム社のラム会長は、市場がまだ多くの課題に直面しているため、2024年度中の早期回復は期待できない、と述べたとしています。
同氏はまた、企業が差し迫った法改正に積極的に適応すれば、今後5年から7年で市場は徐々に回復し、爾後は持続的に発展するとの予想をしている。
これらは昨年に、協会や業者が期待感を持って2024年には回復するとしたけれど、これなどは筆者が指摘した通りで、回復気配の欠片でさえ全くなく、見通しは完全に外れたという甘い認識でしかなかったわけです。

こういう不動産市場低迷の中、企業に熱心で年々新規企業の設立が増加、また投下資金も増えているベトナムだが、建設省の発表ではこの分野での新規設立企業数が4725社にとどまり、前年比で45%に減少したと現地報が報じています。減少したというけれど、筆者からみれば設立に特段メリットがあるとは思えず、まだこんなに多いのと疑問で驚きしかありません。だが媒介(仲介)なのか、住宅・商業ビル等の開発販売なのか報道でははっきりと分りません。
一方で解散した企業は7,7%の増加で1286社、また一時休業は47,4%で3705社に増加したとあり、低迷ぶりが浮き彫りになっています。
減少した理由は、融資が極めて困難になった。開発に関する行政手続きが煩雑であり、何かと不適切性がありプロジェクトが進まなかった。また各省などでの事業開発・建設に対して所管する行政機関との協議が旨く行かないとか、元々法的には未整備な状況があるゆえに調整できなかった。さらに市場が混乱して機能していないことから計画通りに事業を進められなかった。ことなどの問題や不透明さが挙げられます。
また別の項にも挙げているけれど、多くの不動産企業に在籍している従業員が辞めるとか、解雇等で人員の削減を余儀なくされています。
HCM市で大手と言われ、私の友人の兄貴が働いていたダットサン・グループでは昨年9月時点で2484人となり、前年同期比で4480人(64,%)もの従業員が職場を去ったのです。元来販売に従事する人は歩合給。特別能力があるとか、不動産に関連する法律や建築などに関する知識を持っている訳では無いので、入れ替わりは結構激しかった。
またヴィンホームズは1600人の減少となり、9030人となっている。
HCM市で数多くのアパートを手掛けるノバランド社。個人的にはベトナムの長谷工と考えているレベルの物件を販売するが、749人の減で1089人。
VARSが昨年12月に発表した仲介業者数は、10万人程度。これはピーク時の30万人から大幅な減少となっていると推定しています。

株式会社VACコンサルティング 顧問
(IBPC大阪 ベトナムアドバイザー)
木村秀生