仲介人の減少 価格下落による収入減と法改正が原因

2024年2月9日(金)

また価格下落に伴って住宅関係に従事する人も離職したため減って来ている。という現地記事もありました。
VARS(ベトナム不動産仲介協会)に拠ると、仲介に従事する人は12月時点で10万人を下回り、従来比で70&も減少した。しかも認定要件の厳格化でさらに不足する恐れがあり、来年以降は人手不足が懸念されているとあります。
この原因は収入減。ベトナムの不動産セールスは一般的に歩合給で、2023年度中に所得が減少した人は95%。減少率30~40%が過半数で、20~30%は14%、70%を超えた人も14%あったとしています。
大手不動産企業ダットサンの調査では、一旦離職した人がこの業界に戻る意向があるとしたのは38%に留まったが、これだけではなく、改正不動産事業法が成立。このため仲介人の認定が厳格化されるので廃業も予測されるという。
これまでは特別な勉強など不要。講習だけで資格が認定されたのだが、試験に合格することが要件になり、また個人での仲介業務が出来なくなるというのが理由。業者は流石に慌ててしまったが、本来は関連する高度な知識が要るのは当たり前なのに、これまで放置してきただけなのです。
BIVD(ベトナム投資開発銀行)は、不動産市場が24年度に直面する3大課題として、資金流入と物件価格、これに人材不足を挙げている。

これまでにも書いたけれど、ベトナムの不動産市場はいい加減。先の記事の通りなのだが、筆者の会社でも現地スタッフを講習に行かせて資格を取らせたが、実務で通用するモノなど一つもなく、教える方も中途半端だったのです。
兼ねてから言ってきたが、ベトナムは資格社会ではない。このため何れの職種でも専門性は低く、標準化が出来ず技術やノウハウも育たず進化しません。
職人や社員は少し仕事を覚えると、僅かの賃金の違いで転職するし、会社への帰属意識も無い。これだからこそ入れ替わりは激しく、地場企業は真剣になって社員を訓練・育成するなどバカらしくて考えもしません。

不動産に関して言えば、殆どがこれに関係する法律、建築等の知識は全くなく、筆者が自己物件の売却を委託した会社、オーナーは前からの知り合の女性で、近所で店舗を構えており結構日本語が出来きたので日本人の顧客は多かった。一応は真面目で安心できそう。これは重要だが、これだけの話に過ぎません。
他も大なり小なり、あるいは日本人経営でもこうした事情は殆ど変わらずだが、購入者が法律で保護されるというものではなく、何しろ購入後、賃貸でさえもやたらとトラブルが続くというのがベトナムの不動産のジョーシキ。
現場の実態とは法律など関係ない。オーナーチェンジがあれば居住者は直ぐに出されるとか、家賃値上げなど外国人なら平気でヤラレルし、同国人であっても有無を言わさない。嫌なら、と玄関錠を変えて出入りできなくするなどイヤガラセで応酬される。賃貸物件は家主が勝手に家に入ってくる。
多くの業者は問題があっても、もはや関知しないでその場限り。如何に親切に処理してくれるかが業者選びのポイントかも知れません。

また案内を担当した女性もからっきしダメ。たまたま高学歴夫婦で、日系企業に勤務経験もあったというベトナムではかなり良い生活レベルの家族構成。
代わりに筆者が相手に説明して納得、購入に至ったなんて馬鹿みたいな話があるけれど、こうした実務者の仕事に対する曖昧さが社会で通用すること自体、日本人からみれば不可思議だが、何事もベトナム流のアバウトさが蔓延する。

不動産は都会では仕事の無い人が流れて来ていた。知識は無くても問題なし、歩合セールスマン根性だけでOK。通勤時に交差点に立ってバイクに乗っている人へチラシを手渡ししたとか、ネット時代に何処でアドレスを手に入れたか、大手でも頻繁にメールを送ってくる。
また典型的な電ビラ作戦。もはや時代遅れだが、こんなやり方も共通しているけれど、信用できるものではありません。
日本にも昔上場していたけれど、D観光なんて言う会社も大差はなかったが、こんないい加減さの極致が今回の法改正でどのように変わるのだろうか?

都会はこれでもまあ良いけれど、少し離れた所ではさらに酷い超地元密着型の人間関係が未だに存在しており、この洗礼をベトナム人でも受けるのです。
すなわち不動産売媒介(仲介)や建築申請などは、地場の有力者が役所や公安などと懇ろに結び付いていて、余所者を入れない不文律があって受け付けない。これが全からく機能しています。
仮に法律が改正されてもどこかに網をかいくぐって生き延びるだろうと考えるのだが、こういう事が性懲りもなく罷り通る特殊事情とは、法治国家ではなく、長老を重視する人治国家と言われる所以なのです。
いくら経済が発展し、近代化がされているけれども表面だけのこと。こうした「ムラ社会」「身内意識」がいまを以って政治や行政、あるいは企業であっても歴然と有効に活き続け、市民の生活圏で根強く、しぶとく作用しているのです。
これが社会の発展を阻害しているのが実態。さてこれから何年かかって変わるのか。

株式会社VACコンサルティング 顧問
(IBPC大阪 ベトナムアドバイザー)
木村秀生