HCM市 2025年度8%の成長を目指すというが

2024年9月12日(木)

現地報が伝えるところ、HCM市は2025年度の経済成長を8~8,5%とするとしている。ところが経済アナリストの見解として、この目標達成はかなり困難だとの指摘をしているというけれど、さてこの理由は。
政府が目標としたのは2030年まで毎年7%成長目標。これには若干高い数字を設定しているけれど、政府は国の産業構造を変えるような方向と行動方針をもっている。そのため工業比率を40%、観光を含むサービス産業を50%以上と大まかに表しているが、其処には一次産業に関して報じられておらず、またこれまで長い間ベトナム経済を支えてきた繊維・アパレル産業、靴履物産業にも何故か触れていないのだが、これは可笑しいと考えます。
かつてイギリスからその地位を奪った日本、そして韓国、香港、中国、そして全盛期のベトナムだが、今や隣国カンボジアやラオス、バングラディシュなどの国々に追いかけられており歴史は繰り返す。となれば余程の付加価値が付いた製品でなければならないけれど、地場産業は中国などにM&Aをされる現状。経営者は儲かるとみればいとも簡単に応じてしまう。買う側も用地確保や工場建屋、ややこしい企業新設の手続きなど必要なく、またルートを確保した状態で購入できるためメリットがある訳で、今後増える傾向にあるのは否めない。
また米にしろ、多くの種類がある南国の果実、コーヒーに胡椒など実り豊かな世界に誇る食と花卉は様々な方法で収穫が望めるし品質向上が可能。世界人口が増える趨勢の中、欠かせないのは農業だが末席に置かれているのが現実です。
米に関しては8月に逝去した元カントー大学学長、スアン氏。多くのベトナム人留学生を受け入れて来た九州大学で博士号を取得した。テーマは熱帯地域での稲作研究、これはこれから温暖化の日本で最も必要とされる研究であり日本との共同研究に在っても多大な功績がありました。また京都大学で客員研究員として日本人研究者とともに成果を上げ、協力関係の構築に努力したとの事で2022年に叙勲されています。何時だったか自宅で元気な姿をTVで観たが、こうした世界的な人材も工業推進化で蚊帳の外に置かれた状態と考えらえる。

HCM市は過去5年間COVID-19パンデミックで停滞中の時期にあったが、2022年には9,03%の成長を見せた。そこでこれを継続させるために、市が示した政令では2025年に2023年に比較して14%増となる422兆VND(約166億ドル)の民間投資を見込んでいるという。この内容とは公共投資への投資を加速して、工業団地やEPZ、ハイテクパークへの国内外からの投資を誘致するという考え。そして貿易では海外企業との協力を強化、地元ビジネス環境を改善する計画があるとするのです。
消費に関しては、効果的な公共投資を実施、引き続き消費刺激策と市場の安定を図るとしている。だが如何にして資金を融通するかは不透明。
またデジタル経済とグリーン経済では関連する行政機関に役割が割り振られた。
そこでHEPZA・工業団地管理委員会はデジタルインフラ、データセンター、ロジステクス、研究開発の分野に集中して投資する方針が承認されたが、そのプロジェクトの開始が促進されるという盛沢山な内容となっている。
商工局は太陽発電システムを公共施設で実施する支援を行い、国家銀行は再生エネルギーと新エネルギー開発の為クレジットを優先するとされているのです。
工業団地第一号はタンソンニャット空港近くに今でも操業するタンビン工業区。さらに台湾企業とJVで完成させた7区PMH工業団地、此処は当時世界一であったフィリッピンのスービック工業団地をも凌駕する強大な工業団地であり、その入居企業の半分以上を日本企業が占めた。もはやこの黄金期は過ぎ、大事なことは産業構造の改革と一次産業とのバランスだがこれは何度も言ってきた。
こうした成功体験があるため、HCM市は工業団地をさらに増やし外資企業を誘致する訳だが、もはや都心に近い用地確保は難しく、さらに人口の都市集中のため住宅用地確保に開発業者が群がっている現状がある。となればどの地域に求めるのかだが、カンボジア国境へ繋がる国道沿いはクチ郡に至るまで工業団地は連続している。さて計画は良いのだが物流の問題から何処に決めるのか。

経済アナリストが言うのには、HCM市は今年7,5%の成長を見込んでいるが、これは難しい。第1四半期は6,5%、第2四半期は6,3%なので難しいとしているけれど、しかし単純にこれを不可とする根拠であるのなら考えは浅い。

ます先にある様なデジタルとグリーン経済。これは何度も国でも行うと世界へ明言しているけれど、地場で報じられるのはこうした能力がある人材不足。
そのため先にやるべきことは人材を増やすための教育と指摘されている。即ち掲げるのは良いけれど実際には人が居ない、追いつかないのが現在の状態です。
さらにCOVID-19で工場が操業できなくなり、解雇された人が給料を上げるとしても戻ってこない。要するに工場勤務するワーカーがいません。世界の工場が中国からベトナムへ移転という中でこれは痛い現象。さらに輪を掛けるのが給与の上昇。能力ある人は当然ながら一般職まで人件費が上昇している。これなら海外からの投資はいままでの状況とはかなり異なってくるのです。
若い人の中で海外留学経験者がITやデジタル関連で起業して成果を挙げているのだが行政や役人が付いて行けない。乖離しておりマッチングが出来ない。
となれば頭脳の海外流出もあり得る。ベトナムの致命的欠陥。資源と原材料が無く、技術とノウハウに有能人材不足、さらにR&Dと資金に欠けるのです。

株式会社VACコンサルティング 顧問
(IBPC大阪 ベトナムアドバイザー)
木村秀生