ロンタン新国際空港は6月に開港が予定されるけれど

2026年5月29日(金)

いよいよロンタン新国際空港が今年6月に商業運行を開始することになった。
今回の開港は第一フェーズとされるが、年間2500万人が利用し、貨物量は120万トンに達する計画となっています。
航空機需要が急速に増加しているベトナム。このため航空業界では新規参入や航空機の新規大量発注が増えており、航空業界だけでなくHCM市周辺を中心としてベトナム南東部の交通インフラ改善にとっても新空港開港は重要なことでもあるのです。またこの新空港周辺部は至近距離に海外企業が多く進出する工業団地がいくつも散在。完成した製品の輸出は海路が選択できるし、緊急の場合には空路で納品も可能となるため物的流通メリットが大きいと考えられる。
第二期に計画されているのは、2030~2035年の間で、並行する滑走路と第2旅客ターミナルを完成させ年間5000万人が利用できるようにする。
第三期は2035~2045年にかけて実施するとあり、残りの施設計画と、年間1億人の乗降客、500万トンの航空貨物が利用できる巨大空港になるという最終計画が完成する予定になっています。

ところが大きな問題は空港へのアクセス。これだけ多くの利用者が想定され、タンタンソンニャット空港は国内線ということになる訳だが、さて海外からの旅行客がHCM市内に向かうとなればどの交通機関が利用できるのか?かなり前から不便さが懸念されていたが、新空港とは裏腹に実務的には地上での交通インフラシステムがほぼ手付かずのまま状態。誇るべき運行開始記念の当日でさえ、全く手段がなく期待も出来ない有様という事態になっている様です。
この辺りベトナムらしいというか、建設を担当する事業体が同時に完成すべき目標を必ずやり遂げるという計画の工程管理とか、意地や熱意に欠けるのです。
この問題に関してはかつてコラムに詳細を書いているけれど、これまで利用していたタンソンニャット空港をよく知る人に取れば距離的にもかなり遠くて、果たしてフライトに間に合うのか?さえ分らない。空港施設は計画通りに完成しているとしても空港へのアクセスが不十分なままでの開港。仮に市内から車で移動となれば高速道路を使った所で、海外便は新空港発着となるので渋滞に巻き込まれる可能性、また交通事故に遭遇すれば計算上での移動時間など無いに等しい。では代替の道路が幾つもあるかと言えばこれも機能しないと考えるのが良い。他国の様にリムジンバスが各地に向けて縦横無尽、頻繁に出ているというものでもなさそう。これまで以上に物理的な制限で乗り遅れる破目になる事態も覚悟しなければならないのは、空港と接続する交通インフラ総合計画の欠陥であり、予測は出来たけれど無策だったとしか言いようがありません。
政府、行政や空港を管理する所轄官庁が、この空港アクセス接続インフラ計画を考える時間が無かったかと言えば、それは全くあり得ないと考えられます。
あるとすれば実務経験の不足、金が無く知恵も無かった。空港の基本計画作成と実施設計は韓国にオマカセしたけれど、縄張り意識なのか、空港公社や行政が充分に協議をしていなかった、と厳しい目で見る必要がある。
この新空港が出来る土地には元々滑走路があったが、周辺部は誰もが入れるし草がぼうぼうと生えている荒れ地だった。もちろん所有する農地を農民から買い上げなければ、これだけ大規模な国家事業であるインフラ開発は出来ない。だからこそ当初から接続する道路、鉄道計画を並行してするべきだったのです。

・空港を結ぶ幹線道路の状況

HCM市内の中心部から新空港課では約50キロの距離、国際的にみればそれほど遠いというものではありません。しかし問題は距離ではなく、空港と接続する物流を含む輸送ネットワークと分散なのです。
日本の主要航空は近隣大都市と鉄道や地下鉄が乗り入れているし、幹線道路を新しく造るにあたっては高速道路と接続するようになっている。この道路を使ってリムジンバスが地方都市と結んで運行しているし、海上空港ならジェット船を運航している。
この新空港へはHCM市から高速道路が接続している。開業当初に利用した際はそうでもなかったけれど、このところ急激な車の増加で結構渋滞が発生しており特に休日は酷い状態と聞く。因みに日本のJICAが建設の任に当たったがゼネコンは韓国企業。まだ運転手が慣れているかと言えばそうでなく、現地ニュースに拠ると車を路側帯に留めているなどの問題もあり、初心者のマナー違反が起きているという。もし衝突や事故が起きれば僅か50キロの移動は、時間に大きく影響する。これは飛行機の運行に於いて極めて重要になります。
空港ゲートウェイ内ではターミナルから国道51号線へのアクセスとなるが、計画しているT1は完成しているけれど、T2道路は遅れて7月に予定というから開港には間に合わない。またこの2つの道路は空港の出入りとなるけれど、長期的には多方面からのアクセスは充分ではないと地元紙が掲載している。

ビエンホアとブンタウを結ぶ高速道路は今年に完成する予定。この道路が完成すれば拡張整備された国道51号線の負担は大きく軽減され、ビエンホア方面とブンタウ方面からは時間軸が短縮され、また航空物流と港湾とが連携されることになるのでこの地域に進出している企業にとって利便性は向上します。
またベンルック~新空港の58キロを結ぶ高速道路はドンナイ省を結ぶので、これは戦略的に有効な意味を持つ。
外に重要な道路としてHCM市・リングロード3が今年に完成する予定であり、多方面からの接続が可能になる。
またHCM市からの高速道路が市内~ロンタン~ダウジャイ間で2027年に拡張される計画となっていて、徐々に空港へのアクセスが良くなるとある。

・空港に乗り入れる地下鉄プロジェクト計画

HCM市建設局が建設省に報告したとされる、市内と新空港を結ぶ都市交通の導入を推進する計画が浮上している。
これに拠ると2030年までに完成する予定であることが分った。これはタンソンニャット空港~ベンタイン~トゥティエム~ロンタン空港を結ぶという計画だが、今年度から建設が始まり2030年までに完成する予定とあります。
ベンタイン~トゥティエム間はチュオンハイグループ(タコ)に官民パートナーシップ(PPP)方式、およびBT契約の形で実現可能性調査報告書の作成を委託している。予定では今年4月までに建設を始め、2030年までに完了する計画。現地企業の実態とはこんなもの。
またこの先のロンタン空港も同様にタコに調査・実施を委託することになっており、この区間は今年6月に着工し2030年に完成を目指すとしています。*タコはベトナムの地場自動車生産会社で、大型車両、日本・韓国などの企業のノックダウンを行っている企業。

さらに日本のODAで建設した地下鉄1号線(ベンタイン~スイティエン)と地下鉄6号線を結ぶ計画は、ドンナイ省の中心部から新空港まで延伸するとして推進するという。この計画はタンソンニャット空港から第一期工事として、フーフーという地点までを優先投資事項として工事を今年度に開始、2030年にはロンタン空港まで接続するという訳で、国内航空線と国際航空線を鉄道で結ぶことになる。
だが鉄道計画はHCM市とドンナイ省に渡るため、ドンナイ省側ではDonaCoopとVinaCapitalの合弁企業が、スイティエン地下鉄駅から省の新しい行政センターの新駅からロンタン空港までの38,5キロを公私のPPP形式で計画を進めるとしています。
この延伸計画に関しては、HCM市は2025年12月26日に、国民議会議決第510号に基づいて、地下鉄1号線がドンナイ省を通過して延伸するプロジェクトリストに加えることに同意したとしている。またHCM市とドンナイ省の両人民評議会が協議して、実施責任機関としてドンナイ省人民委員会に任じることを決定したとあるが何ともややこしい話である。だが建設を行うのは地場企業だが、工事実績は日系企業のJV(下請け)だけで実力の程は不明。

株式会社VACコンサルティング 顧問
(IBPC大阪 ベトナムアドバイザー)
木村秀生