HDバンク、即ちホー・チ・ミン市開発会社商業銀行であるが、4月に開催された株主総会で2026年の税引き前利益の目標を約30兆VND(11億4千万ドル)以上と設定した。このため金融エコシステムの拡大と成長の勢いを維持する計画もしていることが明らかになったと報じられています。
このHDバンクだが、取締役副会長にグエン・ティー・フォン・タオ氏がいて、彼女はまだ56歳という働き盛りの若さで今を時めくベトナムの大富豪。先のコラムに書いたけれど、急成長している小売業を主体とするコングロマリット、マサンの創業者グエン・ダン・クアン氏と、これもまたベトナム一の富裕者と言われ、国内であらゆる企業群を創り上げているVINグループ会長ファム・ニャット・ヴオン氏とロシア留学組三羽烏として有名。
マサンはラーメン製造を1996年に開始し、その後小売業に進出して大躍進。
ヴオン氏はウクライナでラーメン製造に携わり、資金を作ってベトナムに戻って不動産事業で成功、自動車製造などにも乗り出した。またタオ氏は2007年にベトジェットエアを創業、格安航空事業で大成功し、このHDバンクや、ソビコグループ会長などを務めている。
タオ氏はロシアの研究所で博士号を取得、モスクワで金融・信用の学士、国立経済学院でも労働経済学の学士号を取得している他、ロシアシステム研究アカデミーのフェローとなっている。フランス政府からはベトナム人実業家として特別星勲章を授与された実績も持つ優秀な事業家なのです。保有資産は42億ドルと言われ、ヴオン氏に次ぐベトナム2位の金持ち。
HDバンクの昨年末時点での総資産は931兆VND(約354億ドルで)前年比34%の増加。税引き前利益も26,7%増の21兆3500億VND(8億1100万ドル)と目標の110%達成となった。営業利益も25,5%増加し42兆4千億VNDで、収益性は高くROE5,3%、ROA2,1%とある。
不良資産は比較的低く資本適正性比率は16,7%で、この結果から配当と賞与に30%を配分し、提携資本を59兆VNDにするとしたのです。
業績著しいけれど、2026年は成長を維持し予想される市場の課題に対応するとしている。CEOのダン氏は、今年は市場をフィルタリングするため必要な時期になるとし、自己資本約101兆VND、不良資産を2%未満に押さえ、2030年までに新たな開発サイクルの出発点として統合された金融システムの構築に焦点を当てる。しかしこれにはHDバンク、系列のHDB証券、デジタルバンキングのVIKKI,消費者金融のHD SAISONが含まれる。
これらの事業部門間での相乗効果でシナジー効果を生み出し、市場の変動に対する強靭性を高めるとしている。昨年にはエコシステムの構築も成長、HDB証券とVIKKIバンクは夫々に1兆VNDの超える利益を計上したが、特にVIKKIは営業開始後わずか7カ月で黒字を達成したという。
これはベトナム金融業界では画期的なことで、如何にして変革したのか大いに気になる所でもあります。我々が知る所では、ある日本の銀行の現地責任者がベトナムは銀行ごっこだと揶揄していたが、日本企業の経理担当はベトナムの銀行は融資を行う際に、担当者に幾ばくかの賄賂を請求されたとか、20年以上も前にハ小切手は無く、不動産の決済に筆者が渡されたのはリュックサックに入るくらいの札束。昼時に行くと休憩時間だが工員はカウンターの中で堂々とお昼寝をするか、客が居ても菓子をほうばっている位みっともない姿だった。
この変身には恐らく外国の専門家、あるいは金融専門家で経済学博士でもあり、航空会社を設立し、瞬く間にベトナム航空業界にその名ありと高めたタオ氏の経営センスが生きていると考えるのです。経済記事には2011年以降、タオ教授の長期的戦略的方向性が業務の拡大に貢献したとしている。
またこのHDバンクの社長は韓国人であり、海外の銀行とも取引関係があるためグローバル的思考はあると思えます。
今回の株主総会でも国際投資ファンド、金融専門家と会合が持たれたけれど、ドイツ銀行の元副総裁で現HDバンク上級顧問であるフィルっプ・レスラー氏は、この銀行の役割はベトナムなどの新興市場とグローバル資本をつなぐ金融機関の役目がある事を強調したとある。
HDバンクはロンドン証券市場を含む、国際パートナーとの協力拡大を行ってHCM市に新しくできた金融センターに関する取り組みにも参加。今回の総会では持続可能な成長と国際基準にあったガバナンス、長期的な価値創造の優先事項を強調したと報じられています。
ベトナムの金融業界もHCM市とダナンに開設される金融センターで国際金融社会へ仲間入りを行い、国内だけではなく海外金融機関や、海外投資ファンドを引き込み、今年度以降にこれからのベトナムの将来を作って行く大きな機会を得たと解釈していいと考えるのです。取り分け今回の大4回全国共産党大会で選出されたフン新首相は、ベトナム国家銀行の総裁出身であり、IMFでの経験も深くて長い。これはベトナム禁輸業界の改革には大きな後ろ盾になるし、
タオ氏の様に海外の大学などで経済学、金融で学位や博士号を収めた専門家がグローバルナ金融ビジネスを動かすとなれば、この先、ベトナムの金融市場は大きく急速に近代化し、力を付けてゆくことになると期待が持てるのです。
株式会社VACコンサルティング 顧問
(IBPC大阪 ベトナムアドバイザー)
木村秀生