HCM市はなんでも市制50周年とか。だが急速に発展したのは2000年台に入ってから。この主な理由は海外からの投資であり海外企業のベトナム進出なのだが、市内に幾つかの工業団地が造られて、そこに台湾、日本企業などが進出、操業してきた事に拠るものと考えます。
工場が増えれば製造に携わる人が必要だが、この多くは現金収入の少ない南部メコン地域などから出稼ぎの人達。数人で小さな部屋を借り自炊の共同生活。収入の殆どを親元に送金して兄弟弟妹に教育を受けさせたなど、様々な家庭の内情を聞いた事がある。貧困ゆえに本人は学校に行けなかったが、何れにしてもこの様な人達が産業を支え、輸出額を上げ経済発展の一翼を担って来ました。
当時市内で最大規模は時のフィリッピンのスービックを上回ると云われた7区のタントアン(新順)工業団地、此処はHCM市と台湾政府に属する企業との合弁で作った企業フーミーフンが、この一帯でベトナム初の新都市を開発する総合計画の中で広大なマングローブの沼地を埋め立てて造成したのです。
しかし当初は全然売れない。そこで様々な税の優遇措置が講じられ徐々に区画が埋まって来たけれど、中でも日系企業の占める割合は50%を超えていた。
筆者が覚えている価格は1平米当り僅か50ドル。賃貸期間50年だが政府が与えた開発の許可の段階からとなるので、すでに30年上経過している勘定になる。2000年前後、7区はニャベー区から分かれた新しい区だが、周辺は開発が進んでおらず沼地が多かったし、このPMHが手掛けたアパート、住宅も買い手が付かない。何ら利便施設、学校もない僻地に市中心部からワザワザ来るなんて考えられなかった。市内と言えども今では想像できない地域でした。
・HCM市8つのインフラプロジェクトに着手
7月1日、HCM市人民委員会はホー・チ・ミン主席にちなんでニャーロン・カインホア埠頭で行なわれた50年周年の祝賀行事を行う中で、8つの重要なインフラ案件のうちの一つの起工式を行ったとしています。
この起工式には、チュオン・タン・サン元国家主席、市委員会書記など指導者、各部門の長、投資家などが出席したが、サン氏が現れたのには驚いた。これにどのような意味合いがあるのか興味を持ってみている。
なぜニャーロン・カインホア埠頭が選ばれたか。ホーチミン市を全国にというモットーで民間経済の発展に関する政治局決議の精神を表し、ホー・チ・ミンさんの歴史的遺産と結び、サイゴン川の開発で文化空間の創造をする訳です。
市では8つのプロジェクトが投資総額約96億ドルで公共投資、PPP、民間資本に拠る直接投資など多様な資源を動員して実行されると誇示している。
ニャーロン・カインホア埠頭の最大の価値は、既存の構築物ではなく、此処に築かれた歴史的記憶と国民の精神とし、既存の価値観に代わる新たなシンボルを作るのではなく、歴史を保存し継続させる事である。サングループが行う、文化公園、公共グリーンプロジェクトが完成すれば、ニャーロン・カインホア埠頭、バックダン埠頭は国民の誇り、発展思考を感じられるものだとホーおじさんの権威を利用している。緑と現代的なアイデンティティ豊かな公共の空間複合施設であり、グループ責任者のチュオン会長は単なる投資ではなく、責任と歴史的機会であるとした。
またHCM市の東南部カンザーと、ブンタウを結ぶ海上横断ルートへの投資を担うVinグループのアン氏は、戦略的に重要で大規模な交通プロジェクトであるとしたけれど、Vinグループではカンザー地区に大規模な住宅開発と、HCM市中心部までの約54キロに鉄道を敷設する計画を持っている。
海上交通は以前から計画があった案件。完成すれば所用時間約10分となり、貿易、観光、貨物輸送にと人々の生活に大きな変化をもたらすけれど、何よりもVinグループに最大の利益を献上することになるのです。
・積極的行動を
8つのプロジェクトとは先の2案件に加え、ロンタイン国際空港~ホートラム都市高速道路、ビンティエン道路橋、HCM市~モクバイ、ベンルック~ロンタイン空港高速道路、また同高速道路の国道50号線交差点への投資、カイメップ・チーバイ港の国際積み替えゲートウェイ港の敷地に新たな投資を行い、年間1100万TEUとする、となっている。
市当局の幹部はこの8つのインフラ案件は、戦略的な一角で市の画期的な発展を約束するもので、各部局や区、自治体の人民委員会は政治的責任感を持って手続きの処理を回避するとか、押し付けること、自慢は絶対にならないと檄を飛ばしている。
即ち計画遂行について、撤去、技術インフラの移転、建設資材の供給に関して困難や門段が生じないように、また迅速に解決するために共に行動し参加するべきとしたので、力の入れ具合が如何にも分かるというもの。
さらに投資家、建設業者、此処では事業に参画する大手財閥系の企業グループを指すけれど、最大限の経営資源、最新の機械と技術を惜しげ無く駆使、集中させて科学的で詳細な計画の策定をするようにと指示。お得意のスローガンは太陽を乗り越え、雨に勝ち、最高の品質、そして絶対的な労働安全を確保する精神でやり遂げるゾ~、と社会主義的プロパガンダ丸出しでプロジェクト完成を鼓舞していたとあります。起工式という名のもとに演出が際立ったもので、日本であれば神式で敬虔を持ち安全を願って厳かに祈り捧げる、と程遠いもの。
・HCM市北東で不動産市場が動いている 新しい価値を創造
東部地域は地下鉄線開通以前から住宅開発と道路インフラが盛んであったが、これはハノイ道路と国道一号線が北部に伸びているからで、隣接していた省であるドンナイ、ビンユン、バーリアブンタウでは物流手段の良さもあって、外資系企業のために工業団地が造成されてきた。そして今年の秋には新空港であるロンタン国際空港がやっと開港予定だが、これに合わせた住宅開発も盛ん。西はメコンに通じるが、多く企業ドンタム社がロンアン省の国道1号線沿いに大規模開発を行っていた。南は開発が遅れ、7区のPMH新都市の開発が行われてから30年近くになるが、最近はVinグループがカンザー地区で大規模な開発を計画、此処に電車を通すという計画まであり、膨張を続けるHCM市の集積する人口を如何にして吸収するかが課題。市内でアパートの新規着工を事実上認めなかった市には救いの神だが、高級過ぎて一般の市民は買えない。
また北西の方向には国道22号線がホクモン、クチを経由してカンボジア国境へと走っており、この同路線にも開発が行われ知人がアパートを購入している。
国道13号線をさらに北に上がって行くと、ビンユン省都のトゥーヤウモットに至るが、此処では日本の東急が20年以上前から住宅開発を進めている。
では空白地帯は何処なのか。これが最近の新聞記事に掲載した市北東部という。
此処はベトナム国鉄の線路沿いにあたるが、旧トゥドック区などが該当する。
記事には三菱が開発した住宅モンレイ・サイゴンが好調な販売実績があり注目を集めているとある。6月25日には僅か3日間で2つのタワーが売り出され高級不動産市場を巻き起こしたと報じているが、昔からの高級住宅地ではない。
アナリストに拠ると余りの好成績に三菱が市場にショックをもたらしたとあり、北東地域での不動産市場へ熱気が一挙に高まったとしているけれど話題作り。
これまで日本の不動産企業は、阪急阪神、西鉄などが市内でアパートを供給してきたが、何れも建築性能や品質の高さこれは日本のゼネコンへの信頼感でもあるが、これまで国内にはなかった設備に効率的な導線を持った間取りを備え、市民の中でも弁護士や企業経営者などリッチ層から人気があり完売している。
何よりも魅力は日本の企業であり、前例のない北東部での販売に新たな生活の価値を創造するという期待感が強いとある。この地域での価格上昇にも不動産業者は関心を持っているともされるが、価格上昇よりも実質的価値とか国際投資家の能力が話題となっている。最近の住宅購入者は販売主を選ぶ選択基準があり購入意思決定前に情報の収集を慎重に積極的に行っており、これが評価されている要因の一つでもある。散々問題があった地場企業よりも信頼できる、実質的価値を求めている。三菱は世界的ブランドであり、ベトナムでの実績が新しい生活空間を求める顧客に価値ある選択肢を与えるとし、長期的に価値のあるプロジェクトと見なされ、市場の魅力も創造しているとした。
株式会社VACコンサルティング 顧問
(IBPC大阪 ベトナムアドバイザー)
木村秀生