GDP成長率予測からみて

2022年7月6日(水)

ベトナムの今年第1四半期の国内総生産(GDP)成長率は5,03%に達したと聞く。政府が年間目標としているのは6,5%達成だが、慌てない、騒がない。まだ第2四半期が始まったばかりで、統計総局はこのまま様子を見ながら目標修正を当面行なわないとしている。一例を挙げるなら、3月15日より外国人観光客の全面受入れ再開が始まりました。VOV5・ベトナムの声放送に拠ると外国人観光客の数は急速に増えて延べ9万人に達し、昨年同期比で89%増加したと報じており、これを今年の経済活性化の動向を探る一つの指標とみます。事実アメリカのグーグル傘下の旅行需要を分析するサービス会社「ディスティネーション・インサイト」では、年初から3月末までのベトナムへの旅行に関する海外からの検索頻度の伸び率が75%を超え世界最大を記録したとある。この様な数字の裏付けから見ても、2022年度に500万人の外国人観光客を含む6500万人の観光客を見込んでいるのは頷けます。

・確実に回復基調にあるのか!?

政府は社会経済開発計画の実現のため、その課題と解決策に付いての政府決議に基づく行動をすれば、2022年度のベトナム経済は6~6,5%成長を実現することが可能だと分析しています。
分野別にみると、農林水産業は2,45%で経済成長全体の5,76%を、製造・建設業は8,36%の増加で、経済成長の51,08%を占め、サービス産業は4,58%、経済成長の43,16%を担ったが、これは観光・飲食業の不振の影響が明らかにみてとれるが、再起に期待したい。
初期にはあれほど厳格な感染予防策を講じたが、ウイッズコロナ政策への転換。産業基盤が盤石でないことを露呈。このため経済活性化のために方策を転換したことが成果となっているのはこの数字から分かってくる。
4月中旬から急速に全国の感染者が激減の傾向を見せており、次の波がどのように影響するのかは予断を許すものではないが、このまま推移なら年間目標の達成はかなり信憑性が高いと考えられます。
この第一四半期の5,03%は、4,72%であった昨年同期比と、2020年度同3,66%を上回るもので、COVID-19発生前の6,85%には及ばないものの、回復傾向にあるとの認識に立っています。
理由のひとつに挙げられるのが、VAT(付加価値税)や金利の引き下げ効果であり、政府の社会経済回復への支援策が製造業の回復と市場への投資に少なからず貢献しているということに違いありません。また経済が活性化しているというのは企業の設立データが証明する所です。統計総局に拠ると、今年1~3月期にベトナム国内で新規設立された企業数は前同期比の18%強、34,590社で、登録資本金は5,2%増加して471兆2150億VND(約2兆5600億円)で、1社あたりでは136億VND(約7400万円)。またこの期に事業を再開した企業は前同期比73,6%増、25,588社となっています。もちろん解散や一時休業を余儀なくされる企業もあるが、これをはるかに上回る新設が続いているのは、経済が回復し新たに事業を始めようとする人が増えているからで、年を追うごとに資本金の額が増えているのは新規立ち上げ事業が大型化していることの証明です。
殊に3月の新規設立数は前月比で約96%、前年同月比で28%の増加となっており、さらに資本金額も前年同期比からすると35%ほど増えているのです。
この企業新設の増加と大型化傾向は、経済が回復し活性化する程にさらに明確になるのではと考えられる。
また今年に入ってから外資系企業の進出も増え、1月に新規に設立された企業(支店、駐在員事務所)の数は149件と前年同月比5,7%の増加。2月には同96件、35%増。3月は同139件、10,3%増となっていて殆どは新規企業進出で、駐在員事務所はこの第1四半期でわずかに8件となっています。
取り敢えず駐在員を置いて情報収集や様子見なんて時代ではありません。もし事業を立ち上げる場合、昇格などできるものでは無く、一からやり直しをしなければならない、明らかに無駄。費用が嵩むだけだし、この間、事務所を借り続けなければならず現地スタッフも採用しなければ仕事はできない。日本から送り込まれる社員の生活費や経費などを考えると大きな負担が生じます。また万一引き上げるとなれば、その手続きに多額の費用と時間が掛る事を知るべき。
駐在員を置くのであれば長期出張ベースでアパートを借りて、現場に行くとか、現地の有能なパートナーやコンサルタント企業に依頼し、くまなく現地事情の実態調査や分析を行い戦略構築。進出のため布石を置く方が理に適っている。
駐在員事務所を作った、なんてことで海外進出を果たしたのはと思うのは笑止千万。実は金銭の無駄遣いでしかありません。おまけに生産活動や営業は一切出来ません。日本の様にマンションを借り自由に好き勝手できるものではない。これを勘違いしていると時折抜きうち検査を食らうことになり、不正と見なされた場合は多額の罰金を課される羽目になるので注意しなければなりません。
さて統計総局に拠れば、この第一四半期には製造加工分野が7,79%の成長を果たし、取り分け携帯電話・部品類が19%、グルタミン酸ナトリウム15,7%、自動車13,4%、衣料12,4%、牛乳9,2%となったと報じています。
携帯電話・部品は輸出向けだが、他の商品は国内需要で、生活が豊かになり、また健康志向の表れと考えます。こうした内容からも国内の市場や生活様式の変化が見えてくる。

国内の基幹になるのは農業だが、サービス産業も順調かつ堅実な回復が見られ、日を追うごとに数字はプラスに膨らむと思える。
前年から停止されていた様々な事業や店舗が再開した結果、様々な業種で躍進しています。銀行・保険など金融部門が9,75%、運輸・倉庫業7,06%、小売り・卸売業2,98%、ホテル・飲食が1,79%。
大きく成長が期待できる新分野も含まれ、倉庫業などは日本企業が新規に参入しており可能性はまだ充分残っています。

株式会社VACコンサルティング 顧問
(IBPC大阪 ベトナムアドバイザー)
木村秀生