ベトナムはインド人観光客獲得に注力

2024年9月20日(金)

インドは経済発展により観光客数は2019年に2700万人に達したという。
これは過去10年で倍増した。エコノミスト誌は2023年にインド人の海外旅行に支出した額は330億ドルで、10年間で3倍となっているとあります。
このままであれば2025年には450億ドルにも膨れあがるとされている。
インド国内大手旅行業者でも、もっとも期待しているのがインド人観光客に置いているほど。そして今後7~8年で現在の5~6倍の規模に拡大するであろうと推測しています。
こうした事情がある中で、タイとマレーシアはインド人に対しビザ免除を決定したという。また中東やアジア各国ではインド人観光客の取り合いが始まった。
タイはこの10年間で毎年100万人のインド人観光客を迎えているが、2024年度上半期で既に100万人を突破。その殆どが初めての海外旅行だったとある。各国はインドお得意の歌って踊れる映画スターをPRに使って誘致を始めるとかで大きな転換期に入った。
またマレーシアなどは昔からインド人が多く住み、貿易に従事しているので、比較的行き易い国であるに違いありません。
こんな中でベトナムでもインド人観光客が増加している。2023年に30万人強であったが、今年上半期は約23万人。前年同期比で165%の増加。
こういう状況から地場企業は観光市場に注目していると云うのです。
すでにベトナム国営の大手旅行社はインド企業の社員旅行を受け入れており、今後の市場性と潜在需要に大きな期待をもっているとする。この会社のインド人観光客の占める割合は16%だが、これはインドからの直行便が限られているため、インド人観光客はこれまでは他のアジア圏や中東へ観光に行っており今後は市場開拓に魅力を感じている。日本、韓国、中国、欧米と来越観光客は変遷してきたが、交通手段さえ整えば受け入れ態勢は問題ないので、人口増加と経済発展が著しく、また旅行者の大半を占める中間層で、最も海外に魅力を感じている25~34歳のボリュームゾーンの開拓と、国内観光地への投資を始めるとあります。この層はインドの人口の20%を占め、現在約9700万人がパスポートを所有、さらに2027年には倍増するとあるので見逃せない。
だがこれまでのアジア圏の人とは多くの面で異なるためマーケティングも大切。
日本人にとってベトナム料理は人気で様々な食文化を味わえる。しかしインドは宗教観とか歴史的に肉食が限られているしベジタリアンも多い。HCM市内にインド料理専門店など少なかったけれど、何れの国の人でも初めは良いとしてもいずれ多くの料理人が必要になるし、気持ちよく旅行するには相手の文化も分かる旅行業関係者が大量に必要となる筈です。
またこれまの通訳人材では追い付かないため、英語はもちろんだがヒンディー語を習得させたガイドを大量に養成しなければなりません。だがこういう語学学校は無く外国語大学にも講座は無かったのでは。かつては韓国語、ロシア語の看板をリゾート地で多数見かけたが、今度は英語とヒンディー語になるのか。
さらに比較的個人旅行や家族中心で楽しむ傾向とされており、そういう人のために特別な旅行商品の開拓も必要になっているはず。これはある意味で支出を団体客よりも多く期待できるとか、単に期待しても政府がビザを免除や簡略化するなど対策を講じなければなりません。

・インドへの携帯電話輸出が倍増

インドへ風向きが急速に変わっているのは携帯電話の輸出が増えている事で、数字の上でも出ています。
今年7月末まで統計でインドへの携帯電話・部品の輸出は11.5億ドルとなり、前年同期比の2倍を超えたとある。これはインドへ輸出した製品で唯一10億ドルを超えたとし、輸出額の21,5%を占めている。
インドのスマホ市場は急速に成長しているとあり、今年の販売は446億ドルに達し、その販売台数は1億9千万台にもなると予想されていると云われる。
現在、所有率は人口の0,1%にしか過ぎないとされており、普及する余地は未だに大きい。だがベトナムで携帯電話が普及し始めた2000年前後、価格は数百ドルもしたので一般人が買えることは無かった。まだサムスンがこの国で操業するかしないかの時代で、ノキアにソニー、エリクソン、パナソニックといった製品が主流だったが、これらは今ではすっかり姿を消しました。
少しでの安い製品をというので、航空会社の乗務員に依頼して裸で個人的に持ち帰ってもらったくらい超高級品だったのです。しかし現在は安く買えるし、単なる携帯電話でなくスマートフォン。当時はカメラも一般人は持っていないので、国内旅行者はフイルム写真で撮ってもらって現像してから送付したほど。
この所は携帯電話以外にインドへの輸出も増えており、機械や電子部品も上位にあがって来たし、CPと付属品、設備、工具、パーツ類も増えこれらで27%を占めている訳なので、インドの工業を支えるのはもしかするとベトナム?
ベトナムからインドへの輸出はまたカシューナッツ、木材・加工品、飼料、車と付属品も急増し前年同期比50~90%の増加。この結果、今年7月までのインドへ輸出した総額は53,7億ドル、15,2%増。インドから輸入した総額は33億ドルだが、これは9,2%減。しかしこれからも急速に貿易量は増えてゆくものと考えられます。またインドはベトナムにとって必要な鉄鋼、化学品、医薬品、繊維や資料の原材料供給国。インド市場は電子製品、コーヒー、胡椒、靴履物などの重要な輸出先で相互に補完作用がある共生関係にあると言える。

株式会社VACコンサルティング 顧問
(IBPC大阪 ベトナムアドバイザー)
木村秀生