ホーチミン市で多くの企業が資金不足 一般市民の資産防衛とは

2025年4月16日(水)

HCM市ビジネス協会は今年2月の企業経営状況に関する調査結果を発表。
そこにはHCM市にある多くの企業が受注不足、原材料価格の高騰、消費者の需要低迷、資金と人材不足など様々な課題に直面していることが判明したとあります。協会はこの調査結果の発表と同時に企業への支援策についての低減を行なったと現地報が伝えています。
具体的には市内37%の企業では新規受注が不足し、38%が原材料価格高騰に苦しんでいる。さらに半数もの企業が消費低迷に拠る経営難に陥っていると訴えているのです。
今回の調査は中小企業が回復傾向にあるというものの、依然として楽観できる状況にはないことが分かるが、売り上げが上がった企業も30,4%ある。
また原材料や人件費などの高騰により39%の企業は、利益が減少したと回答しているとしています。
しかし多くの企業は投資拡大傾向にあり、三分の一強の企業が採用を増やすとポジティブな面もみせており、採用を控えるとした企業は20,7%にとどまった。また63%の企業はそれでもビジネスは好調だとし、85,7%の企業は今後業績が回復するとポジティブに捉えているとあります。

今回の調査で多くの企業は、資金調達の支援、金利引き下げ、消費刺激策の実施、行政手続きの迅速化を求めていることが分かったという。
しかし多くの企業は過去の借入金の返済、運転資金の確保に苦しんでおり、長期金利の引き下げ政策、返済期限の調整を求めています。
取り分け家族経営の企業では、経営者個人の資産を担保にして借り入れている所が多く、こうなると経営環境が悪化するとたちまち資金不足に陥り易い。
協会では家族経営の企業に向け融資条件を緩和し、その手続きも簡略化するよう求めています。
協会はさらにここ数年、多くの企業経営者資金難に陥っている一方、多くの銀行は高い収益を上げていることを指摘。銀行が利益率を引き下げて、貸出金利を押さえ企業を支援するよう求めている。現在の所、為替レートは年間2%程度に収まっている。銀行は経済が安定している状況で純金利のマージンが最低でも3%、銀行によっては3~4%あるという高水準を指摘。協会はこれを2,5%ほどに引き下げて企業を支援することを求めています。
ベトナムの銀行金利は今の日本とは比べ物にならないほど高い。また実際に借り入れるとなれば個人的に融資担当者へのお礼とか、さらに金利上乗せなど不透明な部分もあってクリアではありません。なので日系は借りたくない。
では一般市民、特に若者は資産をどう守ろうと考えているのか。
確かに給料は増えるけれど、物価上昇も尋常ではなくなかなか貯蓄できない。だから家族みんなが働き、若者でもダブルインカムで糊口をしのいでいる人が多く、それだけ都会での生活は楽ではありません。まして縁戚が全く無い地方から来た人たちは家を借りなければならない、一部の人は田舎の親とか子供への仕送りをしなければならないので少しでも節約するしかありません。
もはやベトナムの都会で家を持つなんて夢の夢、だがこの所、家のローンを借りて一生返済するだけの苦しい生活なんて御免、という人が増えたとあり、それよりも株や金に投資する方が良い、楽をしたいとあります。
統計に拠れば、ベトナムの住宅価格は5~10年前と比較して手が届かないモノになっている。経済成長をした反面、収入より不動産価格の上昇が大きく上回り、僅か20~30年前の世代は国が世界の最貧国のひとつとされ、苦しい時代を送ったとしてもむしろ購入など出来ないのが現実なのです。
実際に筆者の2000年初期の記憶だが、生活の拠点とした7区の新住宅街では100㎡ある3LDKのアパートでも5万ドルで購入できた。もちろん当時でさえ現地の一般人の給与所得からすれば高額なのだが、今とは比べ物にならないほど安く買えました。その後の二回のバブルを経て、住宅開発が郊外にまで及んでも、また住宅性能屋設備が良くなったとしても、この時からしてもほぼ3倍以上が普通という、あり得ないと思う程の今の状況。幾ら頑張っても買える見込みなど全く立たないのです。
この結果、今の若者の多くは自分自身の為にお金を使うことを優先。結婚を避け、子供も持たない選択をします。これは日本の状況とほぼ変わりません。
親の時代と違って比較的物はある、自由度は高く、仕事の幅も広くなったし学力と資金があれば海外への留学も出来るようになった。こうした中で海外のビジネスや生活習慣を身に付け、母国では語学とその才能を活かして成功する人たちも出てきました。アメリカ留学者など日本を超えるくらいの人数だし、日本や韓国、オーストラリアなど入れると少し金回りの良い家族など中・高校から海外に留学させるとか、家庭教師を付けて勉強させ、留学することが目標となっているケースも増えました。知人の娘はイギリスへ留学したが当時はとんでもないこと。だが一時帰国の際には何とも流暢なキングスイングリッシュを話すのにはたまげたものです。だがこうした人達が将来のベトナムを背負うのだろうと確信したけれど、だが帰国を諦めて海外に留まる人の方がズット多いのは考えさせられるところ。本人が戻らない、戻りたくないという事情もあるけれど、親が返ってくるなと諫めることもあるのは、この国がまだ不安定だし、仮に仕事を得ても能力を発揮できることが出来るか不安。さらに政治体制からして自由度は今より無くなると考える訳です。
さて殆どの若者は国に残っているし、実習生として海外に派遣されても、何時か戻ってくる。となれば何れは国内で職を得て家庭を持ち、子供も育成しなければなりません。親が不動産を残してくれればいいけれどそうは簡単にはいかない。こうなると一生、毎月住宅ローンの返済をしたくない。個人的な満足感はもはや住宅ではなく、投資をして家族を豊かにし、良い食事をさせ旅行に行って人生を楽しみたい。それこそ親や祖父母の時代、何の楽しみもなく食うだけの生活など嫌、と思っても仕方ありません。まして海外で生活経験があるのなら、それこそ文化度の差を嫌というほど味わっている。
すなわち、家を購入するという事の代償として、若さを犠牲にするというのを意味するのであれば躊躇なく家の購入をしないという価値判断を選択するというわけです。時代が変わったとして片付けるのは簡単だが、もはや価値基準はとっくの昔に変化していると考えた方が良いのです。経済成長の結果、一見豊かになったけれど、だが精神的な豊かさや文化度は成長していない。
いったん身に付いた豊かさはもう手放せない。何年も苦労して数十年先に家を自分の物にようやくできた。だけどその時はもう何もできない存在になっているだろうし、この間、生活水準を下げるなど考えられないし、何が起きるか分らない。職を失うとか、病気になった。何らなの原因で抵当に入れていた家が差し押さえられることもある。こうなると子供を持つ事も出来ない。
多くは不安要素と、自己実現と言えばかっこいいけれど、目先など構わず楽しく生活したいという考えを持つ人も多く居るという現実がある。
では若者が将来に自信を持てるだけのこと、即ち家を持つ事も可能だけれど、満足のいく生活を保持できるという保証がない。政府が若者にも家が持てると支援策を実施、若い世代を応援して子供の教育・育成も何ら心配がないという事が無い限り安心して子供を持てない。まるで日本と同じです。
全て自分で考えて開拓しなければならないのが自由主義の選択なのだが、良い所だけ社会主義という訳にはいかない。
そこで今どきの若者、金価格が最高値を付けたとか、株式が順調という事に目を付けて、より良いリターンを得られる可能性に目を奪われるだけです。
だが今はいい。健全な投資と異なって、あぶく銭を掴む投機とは別物だが、これを混同している。株式など作られた数字、各局は何十年も我慢強く持つだけだし、金価格も今はIT関係の機会に需要があるというけれど踊らされる危険もある。これを考慮しなければいけないところ。
ベトナムは人口1億人から1千億1千万人を超えた。しかし世界の先進校と同様に出生率が減少し始めた、高齢化社会へ突入し人口ピラミッドに変化。
こういう状況を知っている人はそれほど多くはない。この先何十年、国は何らかの政策を打たないと、先進諸国と同じ運命を辿ることになる。

株式会社VACコンサルティング 顧問
(IBPC大阪 ベトナムアドバイザー)
木村秀生