シンガポールの統合型リゾート(IR)について(1)/カジノではなくIR

2020年1月5日(日)

日本では、2018年7月に「統合型リゾート(IR: Integrated Resort)実施法」が成立し、早ければ2020年代中頃にも、カジノを含むIRが誕生する予定です。
「IR」という概念はシンガポールで誕生し、その後の観光客数の増加に大きな成果をもたらしたことから、同国のIR政策は注目されています。
そこで、これから3回にわたり、シンガポールのIRについてお話ししたいと思います。

Not a Casino, but an IR

シンガポールでは、過去にも何度かカジノ構想が議論に上がりましたが、ギャンブル依存症や治安悪化などへの懸念が根強く、構想は却下されてきました。
同国は、1990年代後半から2000年半ばにかけて、物価の高騰などにより観光収入は横ばいとなり、2003年のSARS(重症急性呼吸器症候群)の大流行により観光産業は大打撃を受けました。
このようなことから、同国政府はカジノ導入へと方向転換を図り、単なるカジノ施設ではない「IR」という新たなコンセプトをつくり出します。
そして、国民を巻き込んだ議論の末、2005年に「IR開発推進計画」が閣議決定されました。

シンガポールの2つのIR

IRは、マリーナ・ベイとセントーサ島の2か所とすることが決められました。その後、2006年の事業者決定の入札を経て2010年に、シンガポール初となるIRが開業しました。それが次の2つです。

■マリーナ・ベイ・サンズ(Marina Bay Sands)

米国ラスベガスに本拠を置くサンズグループが運営しています。同グループは、地元ラスベガスのほか、マカオでも大規模なIR開発の実績を有することが高く評価されました。
開発コストは、75億シンガポールドル(S$)でした。
55階建て3棟の高層ビルの上に船が載ったようなホテルは特徴的で、シンガポールのランドマークとなっています。また、最上階にあるインフィニティプールもおなじみです。施設には、ホテル以外に、サイエンスアート館、劇場、200軒以上の世界的ブランドショップが立ち並ぶショッピングモール、最大4万5,000人が収容可能なコンベンションセンターなどが併設されています。
カジノの占有面積は1万5,000平方メートルであり、全施設の延床面積の2.6%にすぎませんが、全売り上げの約8割を稼ぎ出しています。

■リゾート・ワールド・セントーサ(Resort World Sentosa)

もう1か所のIRは、シンガポール南部のセントーサ島にあります。マレーシアのレジャー関連複合企業のゲンティン・インターナショナル・スタークルーズ社が運営するリゾート施設です。
開発コストは66億S$。マリーナ・ベイ・サンズと合わせて141億S$となり、これは2009年のGDP比で5%にも及び、GDPを大きく押し上げる効果がありました。
タイプの異なる6つのホテルには、合わせて1,600の客室があります。さらに同IRは、東南アジア初のユニバーサルスタジオ、世界最大規模の水族館、アウトレット、巨大プールなどを擁しています。
カジノの面積は、こちらも1万5,000平方メートル。施設全体の5%以下にもかかわらず、7割強がカジノ部門の売り上げとなっています。

(2)に続きます