相も変わらない日本企業のベトナム進出意欲。今回も毎年秋に開催されている機械部品工業展の視察と、現地企業とのビジネス交流会が行われました。
主催は大阪府に関係する公益財団法人、在阪企業の海外進出を支援しています。今回も参加するのは大阪に事業所がある中小企業。中にはすでに進出している企業や以前に参加して現地で事務所や法人を設立した企業もあります。
参加した企業の多くは初の訪越ですが、現地進出とか委託生産を行うというより自社製品を売りたいという傾向になっているようで、9社が3時間に及んで現地企業と熱心に商談が行ってました。
現地はVCCIベトナム商工会議所HCM支部が日本側のリクエストに応じてローカル企業を選択しています。中小企業が本当に商談を望むベトナムの相手企業はVCCIならではのこと。日系大手とされるコンサル企業や政府機関でもなかなか検索出来るものではありませんし、通訳もトップクラスが用意できるので熱のこもった話が行われました。どうしても工業や機械の専門用語が入るので、これを訳するのは普通の通訳では困難なのです。
今回気が付いたのは、既に企業で実習生を採用している、また監理団体を持っている企業があった事です。旧知にベトナムの政財界に強く深いコネクションがある方がいたのでご紹介しましたが、人材難を窺え、またそれを事業としてされていた企業があり、思わぬ別の形でのビジネス交流が図れたのです。
HCM市7区のSECC(サイゴン国際展示場)で、10月10日から3日間開催された2019METAREX。ベトナムや日本だけではなくアジア諸国、欧米などからも企業が参加しています。参加するベトナム企業の製品は年々良くなってきている気がしますし、日本側からも多くの企業が売り込みに来ていてブースで商談が行われています。ベトナムの工業生産事情が専門家であれば大体理解できるのでそれなりに有益な催しではあるのです。
さて、ベトナムのビジネス社会はどんどん変化しています。政府は2020年までにベトナムの先進工業国入りを目指すとしています。これを実現するためには裾野産業を充実しなければならない。このため日本からの投資と企業進出は絶対欠かせません。
しかしこの所の投資をみると、大規模不動産開発が目立ち、日本の大手商社にゼネコンはスマートシティーへの投資が際立っていることが分かります。
部品産業をないがしろにするというものではありませんが、経済成長が続き、所得が急上昇する中でより良い生活をしたいという事で、住宅の質にも変化が起きつつあるのです。HCM市も高層ビルから市街を見ると、少し前まで沼地だった所に超高層アパートが何棟も立てられ、夜にはかつて漆黒の闇に包まれていたのが、今ではネオンがキラキラ。劇的な変化です。
さらにはサービス産業が大きく成長。消費構造も変わって来ています。街中には通信販売の商品配達をするバイクが走り、段ボールの小包を届けている光景を目にします。
こういうわけで、ビジネス交流会に参加する現地企業を集めるのに苦労があるのです。かつては二つ返事でOKだったのが、そうはいかない。ではその理由は何処に拠るのか。
それは、なるほど会場では熱心にまた丁寧に話が進み、期待すれど日本企業は帰国した後のことが問題。連絡が来ない、判断が遅い、いつの間にかウヤムヤ。
ある意味これば共通した日本への企業観なのです。良い商品を売りたい、または販売したい。しかしこの様な状況が続けば時間の無駄。もちろん日本企業の側にも何らかの理由が無いとは限りません。ならばはっきりと理由を伝える事が相手へのビジネスマナーではないでしょうか。
こういうことが重なる、では結果は何が起きるのかと言うと。ベトナム側でもビジネスミッションや現地企業視察も行われていますが、日本ではありません。貿易高が日本に及ばないドイツなどヨーロッパ。
実際、HCM工科大学を出た人が作った会社。此処は研究用の機械道具や材料、試薬をドイツから仕入れています。決して日本製が悪いのではなく、ベトナムでも医療機器なども専門に扱っている商社があります。しかしこれは機会損失。日本企業の判断の遅さなどがこういう状況となって現実に起きています。
積極性も必要だが、判断の的確さとスピードが大切。単なる様子見ではなく、その場で結論を出せる位の人が参加する事が必要になります。
また海外と経済連携協定の積極的締結。これに拠りベトナム企業も競争力強化が必要。製品の高品質化が求められます。という事は良い物つくりをするために、いい機械が必要になる。町工場では作業環境の良くない所で、中古機械を使っていたのが、そうはいかなくなっているのが現実。この辺りにもローカル企業の変化が見られます。
もう今までのマッチングのやり方だけでは限界もあるのが感じられます。
株式会社VACコンサルティング 顧問
(IBPC大阪 ベトナムアドバイザー)
木村秀生