COVID-19禍での経済成長に関して②

2021年4月25日(日)

そこで提唱され実施されたドイ・モイ(刷新)政策。これを契機に1990年代半ば、中国を見習い制定された外国投資法により本格化され始めた外資企業のベトナム進出。また並行して地場企業が勃興し始め、自由に経済活動が行なえるようになったことが起爆剤となり、徐々に開放改革が進み変化しています。
だが近年、経済を支えてきたのは外国のFDI・直接投資だが、これに関して今もなお投資を求め拡大傾向にあるのは明らかで、抜けられない状況が続く。
また政府の全方位外交への姿勢も明確で、その象徴と言えるのが国際社会への参加と積極的に進める各国・地域との自由貿易協定だと考えられます。

1990年前後はベトナムの国内事情が全く分からず、日本人駐住者も僅か。事業環境が整わないお粗末さに加え、電力供給事情は良くなく、法整備もされないうえに何かと制限が厳しい状況の下、一部の先行した日本企業の現地事業の成功物語が神話のように扱われ、新興国進出へのお手本となっていました。いまでも幾つかの企業は存続していますが、この当時の人に拠ると相手もどう対応していいか分らない。並の苦労ではなかった武勇伝を拝聴するが、投資とあれば大臣がもろ手を挙げて面会したと話していました。現在とは雲泥の差。
1995年、ベトナムが手始めに加盟したのがASEAN。その後アメリカとは国交回復。クリントンの画期的な置き土産だがベトナムにとって大変な幸運でした。この当時、私は在住して歓迎ぶりを目にしたがHCM市内は至る所が通行止めの厳戒態勢。この90~2000年頃を第一次投資ブームと呼ぶ人も居ます。
このころは工業団地がまだ少なく、HCM市内には2カ所しかなかった時代で、僅か㎡/50ドル位とかなりリーズナブルな価格。当局は投資に寛容で利益課税も極めて緩やか。今では考えられない有利な優遇税制が適用されました。初期の進出には苦労困難を伴うが、先んずれば創業者利得には高いものがあります。
2007年にはWTOに加盟、この時はHCM市内のメイン道路でパレードをしたほどの熱烈歓迎ムード、これが第二次投資ブーム時期とも評される。
その後2010年頃に徐々に台頭してきたのが携帯電話の息吹。だが基盤整備は充分でなく、サムスンが進出し大きな転換期となったのが第三次投資期で、貿易黒字が2012年から継続されます。

日本とは2009年に日越経済連携協定を締結。2015年には韓国とFTA。
その後、ユーラシア間、またCPTTP、昨年はEUとのFTAと矢継ぎ早に二国間の貿易協定を発効させ、更なる経済活性化とGDP成長への流れに繋がって行くのだが、外国への依存体質が益々止められなくなり度合も増す。
筆者はこの真只中に居て日系企業に在籍。その後はローカル事業に手を染めたが目がテンになるほど端から手探り状態。同様にほぼゼロから多くの人が新規ビジネスをスタート。最も面白い時期を過ごす事が出来たのは幸運でした。

・成長への課題 新興国に共通する実情

この間、僅か30年程度。数字の上では急激な発展を見せ、産業構造の変化が見える。都会の様子も変化して近代的になり、世界の順位を上げてきました。
しかしまだ社会や経済は盤石ではなくODAの支援に頼り。国民生活が豊かになったとは言えず、発展と共に様々な格差が露出し拡大しているのが実情です。
先進工業国への目標達成は遅れており課題も山積。裾野産業の整備が出来ず、素材・部品調達にも問題が残るままだし、解決の見通しがあると言えない。
COVID-19で明るみになった中国への一極集中を避けるためにサプライチェーンのベトナム移転、即ち海外企業の進出への期待だけが膨らむ。地場産業は労働集約型のままアッセンブリーが主体。経営創造型でもR&D型、超高度技術志向でも無く、独自技術やノウハウを持つわけでもなく、特殊なモノが造れません。
化成品は論外。これではモノつくり国としての著しい発展はないと思われます。
政策的な国家課題として捉え、厳しい様だが変革しなければ世界的な部品製造供給国としての地位を確固たるものにし、それ以上にできる術などあり得ない。
数字を見る限りでは成長の実態はみえないのだが、何時迄経っても外資企業が造った数字や海外投資に頼る状況では手のひらで踊らされるだけ。最大の問題である、地場民間企業の自助努力への姿勢と経営能力向上、進化が望まれます。

・直接投資の概要 9年ぶりに認可件数が減少(12月20日現在・速報値)

外国投資庁に拠ると、2020年度の認可ベース(出資・株式取得は除く)での直接投資は、新規が146億4642万ドル(12,5%減)で、2523件(35%減)。追加認可が64億1449万ドル(10,6%増)で1140件(17,5%減)となっています。
追加認可が多いのは進出企業の事業拡大が要因となっています。また認可件数は2012年度以降に年々増加していたものの、感染の影響があって9年ぶりに下回りました。
国別投資額は、シンガポールのLNG発電所案件が大きく68億2842万ドルで一位。これは前年比3,8倍。韓国はハノイ市西湖周辺での都市開発が大きく29億4594万ドルと二位(47,8%減)。三位中国20億6961万ドル(32,1%減)。日本は12億1899万ドル・七位となっています。
投資した地域はHCM市が約43億6千万ドル(15,3%)で一位、二位はバクリュウ省、三位にハノイ市、以下バリア・ブンタウ省、ビンユン省の順。
投資を業種別でみると、製造が117億8463万ドル(34,6%減)で一位を維持。二位はライフライン・49,3億ドル、三位に不動産・22,4億ドル、
四位が小売り・卸売り・65,6億ドル、五位に建設・31,6億ドルの順。
認可件数では製造が1480件、ライフライン28件、不動産102件、小売り・卸売りが868件、建設108件。全体では3663件(32,8%減)。
認可件数を国・地域別でみると、韓国が963件(41,9%減)の一位。二位は中国で476件(44,3%減)。三位に日本427件(37,2%減)、となっています。

また実行額は前年比で僅かに2%減の199億800万ドルとほぼ堅調に推移。
出資・株式投資認可件数も前年比52%減となって、74億6920千万ドル。
だが第4四半期には増加傾向が見られ今後増えると思えます。

株式会社VACコンサルティング 顧問
(IBPC大阪 ベトナムアドバイザー)
木村秀生