ベトナム国家品質賞の制定と物流問題

2021年12月4日(土)

・国内で操業する企業の品質向上へ腰を上げた

ベトナムは国際社会から評価を高めている段階へと発展し、世界各国・地域と経済連携協定を積極的に進めることが可能となり、その成果が出てきている。
こうした中で企業間には格差が生まれています。今でも発展途上にあることに変わりなく、今後は地場企業の国際競争力を強化、品質向上や価値創造が重要なポイントになる。日本の様な工業規格、国家資格など無く、意識と行動への変革がようやく始まったとも考えます。
これは海外企業進出によるもので、適当に製品を造れなくなった時代へと変化。外資企業は付随して進出した系列企業の部品に頼る事なく、一抜けた地場企業が基準に合うもの作りが出来る様になり、このため注文が増え徐々に国内企業の製品を採用しても何ら遜色がないとの評価を得るまでに成長したと言えます。

こうした状況から優秀な企業を顕彰するベトナム国家品質賞が決定され、今回100社余りの企業が表彰を受けたとあります。
これまでにも「ベトナム製品は優秀、ベトナム製品を買おう」なんていう標語があり、例えば国産電化製品にシールが貼ってある。だが扇風機など、ものの見事に回転速度の調節が効かない、デザインは旧い、首振りしない、などの裏切り。愛国者でも国産品はねぇ、という印象をもっていた。ボルトやナットも現場でテーピングをしないと完全に締まらないような有様では外国製品を使うのは当然。たかがネジされど螺子。

首相賞は突出した能力を持ち、競争力を著しく上げたとする団体や企業に与えられるもの。これには日本、タイ、イタリアなどの海外企業も含まれ、同国の輸出に大きく貢献しているほか、一般市民の生活水準を上げる役目も果たし、ベトナム製品への評価と認識を高め輸出額を増やしているとされます。
ひと昔前、社会主義経済特有の計画生産という思考に依る国営企業が主であった時代では考えられない事。戦後こうした企業や行政は南部の人を採用しない。それ故に意地で民間の事業を頑張ってきた経緯が今に繋がっている。
筆者の友人もその口で父親が南の将軍で、本人は一兵卒だったがこれと言える先へ就職できなかったと述懐。しかし実は原動力にもなったのです。こうして若者は自分で起業、やがて成長。民間企業へ発展します。

20数年前の話。学力が低く経営能力やビジネスセンスがない元軍人に企業の運営など託せるものではありません。事実日本のさる大手企業が進出した当時、JV先の日本人社長は心底嘆いていました。時代が下り先進国並みと言えないにしろ経済、社会が大きく変化。かつて貧困を分かち合うなんてプロパガンダが跋扈。誰しもが貧しい生活など当然と思ったが、今そうはいかない。豊かになりたくて起業が増え、能力次第で格差が生じる自由ビジネス社会へと変化。
この様な急速に変わりつつあるビジネス事情や、国際性が出てきた経緯を見るに付け、この先は有能な若い人の挑戦と活躍に託して行きたい。

・域内貿易の促進と物流問題

APECに加盟する21か国がオンラインで貿易担当相と会議を行ったとある。
域内のDGP成長率は、2021年度に5,7%、22年度には4,1%となるとの予測。各国はこれを達成するため相互依存を行い、貿易障壁を除き自由で開かれた状態に保つ事に合意しました。
ベトナムは域内でサプライチェーンを効果的に運営するために流通を促進する重要性を参加国に提言しました。大臣がなぜこんな話をしたか。それは自国が世界のサプライチェーンの移転先として脚光を浴びたからで、真に物的流通が遅れているからに過ぎません。

簡単な話。引っ越しする際の状況をみれば、荷物が傷まない様に梱包、部屋もキズが付かないために上に下、横にまで養生する日本。トラックへの荷積みや運転も酷くなくスタッフは訓練されています。ここではそんな事はあり得ない。
天地無用、詰め込むだけで、引っ越し先に到着すれば傷がある。雨が多い雨季でさえお構いなく濡れっぱなし。これはひとコマです。日系企業がライセンスを得ることはかなり難しかったのですが、何故かS社は早くに成功し大活躍。

輸出入が増加し、ネット販売も急成長する現在、物流の重要性が日ごとに増してきています。物流費が総コストに占める割合は高いとされているベトナム、費用の削減には道路整備と港の整備、倉庫、物流センターが必要です。
このところ急激に3~4倍に上昇したと言われる高コストのワケ。運輸省からすればインフラ整備が遅れているのが一因、だそうです。
HCM市内では通行時間の規制があるし、高速道路網の全国的整備は当面覚つかない。また鉄道網は整備されていないため、国内では長距離を走るトラック頼み。国内輸送は北から南の端までトラックによる陸送が80%を占めているほどの生命線です。
だがトラックターミナルが港や高速道や国道近くに建設されたとは聞かないし、工業団地から製品を輸出するのにも、梱包、保管や仕分けなどを行う倉庫に、通関手続きが可能となるセンターや、システム構築が出来ておらず、不足しているのが現状だとあります。従って工業団地でトラックを工場に横付けし通関も行っている実態がありました。こうなると検査をする税関職員との不鮮明なやり取りが深夜に繰り広げられる問題が実際にあって企業の悩みのタネになる。

鉄道に至ってはとんでもなく時間が掛るし、輸送に関するノウハウも殆んどありません。ある時見たのが北部ホンガイで産出された無煙炭のみ運ぶ無蓋車の長い列。鉱山から港までの短い距離だが、船積みにはこれが一番効率的な方法。
ベトナムでは製造できず輸入に頼る大きな物体や資源・素材など、かつて通関業務が滞ったことがある。これではスムーズさに欠けコンテナを長期間移動できず、港から搬出するにも接続が悪くて時間と費用ロスを指摘された事がある。

株式会社VACコンサルティング 顧問
(IBPC大阪 ベトナムアドバイザー)
木村秀生