積極攻勢を仕掛ける外資系企業

2023年1月20日(金)

ベトナムローカル企業が急速に発展と進化している中、外資系企業も指を銜えて静観しているだけではありません。この一つの要因は外資系企業の小売店舗への出店への規制撤廃が2024年にも行われようとしているからです。
即ち各外資系企業を苦しめていたENT(エコノミック・ニーズ・テスト)が撤廃される予定となっている。
これは地場企業の規模が小さく経営力も無いため外資系には太刀打ちできない。だから保護するという名目で、500㎡以上の店舗を出すためには地域のこうした弱小小売店やニーズの調査をしたうえで許可されるというもの。
しかし実際には当局から無理難題を課され、事実上問題が無くてもイヤガラセなのか認められないとか、開業を引き延ばされ中止に追い込まれた所もある。
また1億人に迫る人口と経済成長。かつての貧国ではなくもう立派な中等国。
平均年齢も進み30歳にもなる。こうなるとすっかり中間層が増え、世代交代をして消費行動が変化。常に新しいものを求める生活スタイルへと移って行く訳で、近代的小売業界の一層の成長が期待されるわけです。
例えば日本は市場が飽和気味、人口は減少の一途、何処に活路を見出すかと言えば人口増加が見込まれ経済が発展段階にある国。所得がそれなりに増加し、商品価値が量から質へと変換と拡大が起きている実態がある。まさにこれです。
そこで大資本とこれまでの経営力や独自戦略、人材を注ぎ込んで市場を確保しようとするのです。だがそこにはこれまでに述べたように地場企業も力を付けて来ているため、熾烈な競争が始まる幕開けでもあると考えている。

タイのセントラルはこの数年でベトナムへ大規模投資を行っています。現地にセントラル・リテイル・コーポレーションを設立して、HCM市で最大規模であった電気量販店に始まりスーパーなどをM&A。5年間に日本円で1100億円を投入して店舗数を340から710へほぼ2倍にすると公表している。
様々な商品政策を展開し、あらゆる業態をミックスして出店、全国の行政区の約90%である55地域へ進出する。取り分け大規模スーパーを現在の倍以上もの70店舗出店する計画を立てて積極展開を目指しているのです。

ここ数年勢い付いているのは韓国。中国との関係が危うくなり何処に進出先を探るかとなればベトナム。戦争犯罪は戦争時代の人達からすれば清算と贖罪は終わっていないけれど、もはや若い世代には関係ない。政府は自国民に嘘を付き、金をぶち込んでエンターテイメントで若いベトナム人世代を洗脳した。
ファストフードとして出店したのは「日本のロッテ」。印刷物も日本語だったが、これは様々な事情を加味してものことで、支配人も日本人から赴任した。彼は居心地がよかったのか、そのままベトナムに居残ったのです。
韓国ロッテが進出し始めたのが2000年に入って直後。フライドチキンのロゴなどが何時しか韓国語になり、ホテルも買収。さらに私が住んでいた7区の荒廃地だったところに突如大型ショッピングモールを完成させ、市民を驚かせたが余程暇なのか連日大賑わい。これまでになかったアミューズメント性が大受けしました。向かいにはASIANAの高級アパートまで建っている韓国村。
現在のところこの様な大規模施設は国内5店舗だが、韓国ロッテが起死回生でベトナム市場の開拓はまさに同社の命運を握っています。
HCM市では9億ドルを投資して巨大複合施設を建設着工、さらにハノイでも大型モールを進める計画と復活をかけており、意気込みが違っている。

辛東彬(重光昭夫)会長は国家主席にも直接会えるほどの人物。自国での執行猶予を受けて初の外遊がこの来越で着工式に参列。機は彼に味方した。
さらにHCM市ではサイゴン河対岸、今では超高級地区と化したトゥティエム地区の5万㎡もの開発権を得て複合プロジェクトを計画。もはや韓国ロッテにとってベトナムは自国以上に販売を見込める国なのだが、競争は激しさを増す。
また幾つかの小売りに進出したが、日本勢が伸びないなかで積極的に進出しようとするのがコンビニのGSリテール。さらに後に出て来るが、財閥系のSKがドラッグストア部門の現地最大手であるファーマシティーに出資、外資系で
最大株主となっています。

この韓国に遅れを取っている日本。イオンでさえ過去にM&AしたCitiMartを加えても僅かに17店舗しかない。主力のイオンモールは6か所で運営するが、これを2025年までに16か所にする計画としているのです。
今年になってハノイ近郊に4店舗出店した食品スーパーのマックスバリュー。
肉類・鮮魚類などの生鮮品、特にベーカリーとデリカ(惣菜)をメインにして人気があり急速に伸びているというが、総菜は元々何れのスーパーでも扱っている。進出した日本のパン会社が販売するパンは旨くてベトナムでは大人気。
これは競合する外資系がハノイには無いためでもあるが、既存の店では不安である衛生面での安全性と品質が評価され、販売量は右肩上がり。店舗面積を若干広くして500㎡位にして2025年迄には100店舗出店する方針とある。
同社やPB商品を扱う子会社A社も品質管理にかけては日本の小売業の中でも最も厳しい。我々は理解しても現地に全く伝わっていないが今後訴求は必要。
確かに店は清潔でオシャレ感が漂っている。地域のショッピングモールを核としてセントラルキッチン設け、こうした店へ配送とは戦略的に成功した模様。
2024年にも進出する中部の地方都市フエ市で初のモールだが、なぜダナンでないのか。日本とは歴史上関係もあり、観光・文教の古都ではあるが、人口は少なく封建的な地域ゆえ地元民に何処まで受け入れられるか。
日本の報道ではアジアで培ったノウハウを活かして出店攻勢を掛けるというが、如何にも上手く表現を繕ってはいるが、当初計画したほどには伸びていない。

株式会社VACコンサルティング 顧問
(IBPC大阪 ベトナムアドバイザー)
木村秀生