年初来4カ月間 ベトナムへの海外投資の動き

2024年6月18日(火)

ベトナムの政局、実は6人もの政府要人が解任されるなどで混乱している最中。政治中枢がかなり中国寄りでは無いかとの見方もあり、事実閣僚の訪中などで
越中インフラ案件や中国の対越投資が増えて来た実情は容易に観て取れます。
だがこのような状況であってもベトナムへの投資が減少しているというものではなく、コロナ禍で経済的後遺症があったにも拘わらず増加しており、数字上からみれば経済が失速したという事実はありません。僅か4カ月間の海外からの投資状況だが下記の通りとなっている。
今年1~4月のベトナムへのFDI認可額は前年同期比で4,5%増加して、約92億7000万ドル。また実行額は7,4%増の62億8000万ドルとなり、この5年間で最高額を記録したと報じられています。

FDIの内訳は、新規認可件数が28,8%増加し966件、許可額は73,2%増の71億1000万ドル。この内訳として加工・製造部門が約50億ドルと、もの作りへの投資が最も高く、これは生産拠点の中国からの移転という影響があるのかも知れません。次に不動産部門への16億ドルとなっているが、地場不動産企業が多くの問題を抱えている中で外資企業の参入が顕著になっている。
これなどは急激に成長した影響もあるけれど、国の施策と法律の不備、事業に関する関係者の経験等の不足、経営陣の欲と未熟さが表面化しただけと筆者は考えている。さらに社会資本への生産と流通が続いているという状況であった。
また追加認可件数は345件、認可額は25,6%減の12億3000万ドルとなっているが若干の減少。

しかし国別ではシンガポールが25億9000万ドルで36,4%占めて1位。香港、が約9億ドルで2位、3位は日本で約8億1400万ドル、中国の順となっている。特徴は中華圏の国が多いことであり、迂回投資も中にあるけれど、この所のベトナム側の動きの影響が出て来た可能性はあるのかも知れません。
こういった状況にあるけれど、日本が例年と大きく変動のない3位と健闘しているのは、日本企業がベトナムを未だに有望な投資先として観ていることに間違い無く、政治的安定が続くであろうとの思いがいま以ってあるとか、或いは政治には国内と同じく殆ど関心が無く、意識すらしていないのかもしれません。
多くの世界的企業が既に中国から生産拠点を移している中、中国から離れられないベトナムの現実。其処で如何なる考えを持ち、何を観ようとしているのか。
さらに外国人投資家はベトナムへの資本支出として約9億3千万ドルを902件の案件と株式購入に拠出したともあります。
一方ベトナムの投資家は海外への新規投資案件に36案件に9830万ドルを拠出、これは昨年比で約30%の減少とあります。投資先は世界14か国とあり、中でもオランダが5460万ドルと最高の受け入れを行なったとしています。

・進出に関して 現地の実態を知らなければ話にならない

混沌としているベトナム国内政治。今後中国企業の急進出もあり得るのだが、この所、日本で「ベトナム進出セミナー」というのを余り聞かなくなりました。
以前は至る所で色々な団体が頻繁に開催。何れの会場も満席状態で。現地事情や進出に関して様々な情報をお伝えしたこともありました。中には現地の状況を知らずして肩書だけでデータの羅列。こんなのは全く意味のない講釈師の話で、真の現場の実情に疎く数字の内容も分からない講師の無駄話。だが企業の担当者はそれこそ情報が少ない中で藁をもすがる思いで真剣に話を聞いていた。
こんな状況であれば、現地で一カ月ほど滞在し、進出した企業の現地責任者に本当の状況を聴くとか、Caféでノンビリ街を観ている方が余程ためになります。
話の多くは労働力が若くて手先が器用と神話まみれ。おまけに真面目とくるのには心底笑うほかありません。

だが実際には労働生産性は低く、労働力の質的評価も高くないのが実態。これは自国の統計総局の局長が述べたことだし、現地紙が報じている位なのです。
即ち高等教育が思う程出来ておらず、産業に必要な人材を養成する機関が無いのが原因だし、技術や知識を教授できる職員が居ないから。そのために日本の高専制度を導入することになった次第です。
だが肝心の若い人材は労働輸出と称し、実習生として年間目標まで定めて海外へと派遣する。こんな状態では人など育てられないし、彼らが帰国して後に、自国の産業に貢献しているか否かを見れば分かるが、成果など殆んどなく機能もしていないのが本当の姿なのです。
要は単なるコストを掛けないその場の外貨稼ぎに過ぎず、もはや外貨準備高を見れば必要ないのに未だに続けているという情けない実態がある。この多くは日本だが、後で述べるがこのところ様相に変化が生じており、他のアジア諸国どころかヨーロッパへシフトが進みかけようとしている。こういう現地の状況を分かっていないのがお人好し我が日本。円安だけではない問題もあるけれど、何も分かっていないのが現場を知らない、決断が遅くて慢心の国と行政です。
また長い間もの作りを模索し裾野産業を育成するとしながらも出来ていないし、工作機械、原材料や精密部品の多くは輸入しなければならないのが実情です。
この様な現実があるのだが、中国からグローバルチェーンの移転などと叫んでいるのは誠に滑稽な話です。

株式会社VACコンサルティング 顧問
(IBPC大阪 ベトナムアドバイザー)
木村秀生