高市女史の不要な発言から中国が態度を硬化し、レアアースはまたもや禁輸になるのか?との不安がこれを使用しなければならない製造業に過ったけれど、中国側が何とか輸出許可を出したのでほっとした方も多いのでは。
同じ時期に兼ねてより話題であった日本の領海内でレアアースを豊富に含んだ泥を深海底から引き上げたニュース。現段階では採掘、運搬と製造のコストが掛かり過ぎて実用化は何時になるのか何とも言えないけれど、技術が確立され、これを精製する事業を近海の島内で行なえるなら、日本の必要とする年間の数十年分とも云われる消費量が賄える計算とかで、資源大国入りを果たします。
希土類は実はベトナムからも輸入しているが、その量は需要に応え得るだけのものでなく、安定して供給できる国・地域は限られている。
随分前になるけれど、IBPC大阪のベトナム相談で筆者が担当したある企業から受けた事案。日本にいるベトナム人からレアアースがベトナムに有って、これを採掘する費用が必要で支援して欲しいけれど如何?とあったのです。
場所はと聞くと、メコンデルタだと聞いているとのことだが、それはあり得ないでしょう。幾らなんでもここ掘れワンワンと探知犬でもメコンの大地には埋まっている筈など無く、無理では。と話したけれど、こういう嘘が付けるほどベトナムには何かがある、と錯覚させる魅力があったようです。
最近になって北部でこうしたレアアースが豊富に存在するとのニュースがあり、コラムにした。かつてベトナム外務省で通訳・検査官をしていた人が居たが、秋田大学鉱山学部卒、やっと本領が発揮できるけれど元気でしょうか?
・ベトナムは北部に宝を持っている
現地経済報が伝える所では、ベトナムは世界有数の鉱物資源が埋蔵している国だとし、この宝物とはレアアースだ、としています。
2月3日、農業環境副大臣はある報告をした。これは地質・鉱物局は2025年にこの分野の機関の構築と改善に関して助言したとあり、それは地質・鉱物に関する法律改正、4つの法令と2つの決議、21の重要な指導通達を制定するため当局に提出したのです。
すでにいくつかの法律が昨年12月11日に国会で承認され、2026年1月1日に施行されています。また同時に通達が発令され、事業や業界管理のため統一された実現可能となっているとあります。
しかし地質・鉱物局では基礎調査の段階であり、実務的には特に希土類という戦略鉱物に付いては潜在的な評価計画に力を入れており、現地調査でその量の評価を完了し、希土類に関する全国ベースでのデータを完成させるとしている。
初期調査でベトナムはレアアース資源を豊富に埋蔵する世界有数の国と判明、国家戦略としての策定を行うことになったのです。
2026年には地質と鉱物分野での行政違反を制裁する法令を政府に提出すること、戦略策定を行うための資料を完成させること、2030年に向けて計画の調整を続け2050年を目指すこと、さらに鉱物資源の基礎データ、統計に関する基準と技術規則の完成を目指すとなっています。また鉱物管理の手続きのオンラインサービスの導入を行い、新法が実施される中で違反を迅速に発見、または防止するため専門的検査の実施を強化するとしている。
2026年には戦略鉱物(希土類)の潜在的な有望地域での探査を行う一環として、試験採掘を行うプロジェクトを継続して実施することを予定している。
・希土類プロジェクトは早急かつ確実に実施される必要がある
農業環境省の副大臣は制度の整備、鉱物管理の任務に加え、地質・鉱物局は特に中央地域でのプロジェクトにおいて基礎地質調査に注意を払うように指示、また資金の配分計画や仕組みを見直し調整する必要性を強調しました。
副大臣に拠れば、希土類に付いては党と国家の指導者が特別に関心を持っている課題であり早急かつ確実に行う必要があるとし、プロジェクトは調査や評価に留まらず、試験段階、技術、実施する組織を考慮して戦略鉱物産業の発展と基盤を築く必要があるとしたと報じられています。
・首相はレアアース産業の発展を要請
1月に開催された政府の常任委員会の会議で首相は、希土類の国家戦略の策定に関する事項について、国家の管理の強化と産業の発展が重要事項であることを強調。課題を解決して戦略的自立性に貢献する事、財政と投資、国家と官民協力および投資家による開発、高度で適切な技術を習得する事、官民協力にはDXに基づくスマートマネジメントを導入する事、を指示したとあります。
そのうえで農業・環境省と関連機関に対して、見解の調整と、草案、報告書、計画を完成させ、当局の意見を募らせるよう求めたのです。
ベトナムには2200万トンの希土類があるとアメリカ地質調査所が報告しているけれど、これは中国の4400万トンに次いで埋蔵量が世界二位であり、またアメリカの180万トンの12倍になるとしている。こうなるとベトナムは希土類のリーダーとなるけれど、採掘から精製に至る技術やノウハウがなく、これをどの様に乗り切るのか、大きな課題に直面している訳です。
この状況に中国は、ベトナムの希土類に目を付けて投資を協力したいと表明、すでに2023年11月には、世界最大の希土類企業のひとつである中国希土類公社(国内で38%保有)が協力を申し出、さらに昨年にも手を挙げている。
・マサングループでの動き
筆者が最も気になるベトナム企業とはマサンだが、グループにMasan Hingh‐Tech‐Materialsという企業がある。この企業の子会社タングステン・マサンはタングステンを取り扱っているのです
この企業に関する記事は、世界的な需要によりこの企業がヨーロッパやアジア、日本も例外ではなく注文が絶えず、基準価格の10%も高い価格で輸出しているが、これは市場の厳しさを反映しているだけではなく、加工能力、品質管理に優れ、なおかつ納品への信頼性から来るものだとしています。
タングステン価格の動きは強い上昇に乗り、2025年の最終にはわずか1週間で基準価格が18,7%も跳ね上がり、これは市場最大の上昇幅であるけれど、最高価格の更新となったのです。これは同社にとって長期計画での基盤強化とレアアース世界市場での位置付けとなる重要な分岐点になるとされています。
このために2025年度の業績は収益が7,443億VNDとなり、前年比では19%増加したとあるが、価格は今後も上昇傾向にあるため、成長への期待度は極めて大きいとされている。
タングステンに加えて半導体やレーザー、光ファイバーに必要なフルオライト(蛍石)のサプライヤーでもある。フルオライトでもこの会社は1432億VNDの収益を記録したのだが、埋蔵量と精製能力の両方に利点を持っており、2026年~2034年に於いて、世界の市場にあっては主要サプライヤーの一つとなっていると報じられていました。
多くの主要国はこうした戦略的鉱物資源の供給先の多様化を加速しているが、同社の主要製品である上記の二品目の他に、ビスマス(蒼鉛)も供給。これは医薬化粧品から超電導やハンダなど幅広く工業製品に使用される鉱物である。これらはアメリカやEUなどの必須原料リストに掲載されており、防衛装備と再生エネルギーに欠かすことができないという。
この企業が運営するというヌイバオ鉱山は2025年末までに政府の鉱物資源に入れられるが、2800万トン以上ともされる埋蔵量が見込まれ、長期経営の重要な柱になるはず。
これから先は安定した供給に向けての信頼性向上、世界のユーザーとのパートナーシップを強化する基盤の構築が必要になってくる。同社は今年度最大12,500億VNDの収益を目指すとあるが、生産量を増やすということは、精製を行うために環境への負荷が起きない様、配慮を充分にすることが重要です。
また政府はこれらの製品を、一企業だけの問題でなく、重要な戦略物資として輸出管理を行う可能性は先に書いた通りで、これを充分に認識したうえで企業は生産調整を行わなければいけない立場にある。
株式会社VACコンサルティング 顧問
(IBPC大阪 ベトナムアドバイザー)
木村秀生