信じてはいけない ベトナム人のビジネス感覚

2022年7月23日(土)

在住時に現地のパートナーと共に新規事業を開始。長い間一緒に仕事をしてきたが、数ある中から遭遇した話の一部分を、個人的経験として挙げてみます。
もちろん全てがそうでは無く、中には日本に留学、また他の国で生活した優秀な人とは今も交流が続いています。
ことの経緯は筆者が日系企業に居た時に採用した、地方出身で苦学して日本語を習得したベトナム人。彼とは10年間に亘り共に仕事で苦労してきた仲間。しかし思わぬ裏切を喰うが、特別珍しいことではありません

・前段の経緯 不動産価格の高騰

なぜこれを書こうと思ったのか。それはある現地の不動産に関する記事が掲載されたが、これに関連するからです。
記事にはHCM市北東部にあるクチ県の地価が此処数カ月で急騰したとあった。クチは多くの旅行者が観光に行く所で、戦争中に解放戦線の基地があり、北部から物資の補給などを行なったホーチミンルートの南部最終地点なのです。
戦跡としてトンネルが公開されており其処には病院や育児室、食堂などの生活空間が見学できます。
だが戦争が終わっても決して裕福な地域ではなく開発が最も遅れた所の一つ。これは市中心からかなり遠くて、企業の進出が少なかった理由であり、実習生の出身地もこの地区に多かったのはこうした背景があります。

昨年HCM市の一部だがトゥドック区が市に昇格。ややこしい話だが、それはさておき、このクチもこの様なHCM市に属する一都市になる可能性があるとして、ここ数カ月間で急騰して昨年以来2倍、1㎡400万VNDにもなった。今では週末になると市内からあらゆる人がこの儲け話に夢中になり、めぼしい土地は既に売れ、値上がりを期待し農地にまで手を出す言う狂乱ぶりと報じたのです。素人が関わるのは危険だがとまらず、最後に誰かがババを掴まされる。
市中心の不動産価格がとんでもない価格になり、インフレ懸念から今まで見向きされなかったこんな所にまで需要が見込めるとして殺到。さらに値段は上がるとしています。不動産企業はそのうち熱が冷めれば価格は沈静化すると警鐘を鳴らし、投資者の80%は損失を被るとしているが、分り切ったこと。

今から16年ほど前、一次のバブル時にもこれと同じような現象がありました。
槍玉に上ったのがビンユン省。今は日本の東急と現地の省管轄のベカメックス社が開発した新都市。この周辺部も並行してアホみたいに値が上がりました。
不動産業者(資格も経験もない素人)が、噂を信じてこぞって買いに行き、値は日本のバブル時と同じ様に頻繁に書き換えられました。知り合いの不動産屋は私にも儲かるから買えと親切に声をくれたが、果たして結果は大損。買った土地は再販もできず塩漬け。せやから言うたやろ!
残念だが私は日本で多くの開発を手掛けてきており、バブルに売り抜けたし、ベトナムでもまだ荒れ地だった新興住宅地に建設されたアパートを購入。8年間の住居費が掛らないまま住み続け、3倍以上の値で売ったことがあります。
この目からすれば何れ破綻が見えると、やめるように忠告したが聞く耳が無い。
大学を出て日本語もできる。日系企業に就職したのに、姉が不動産で大儲け。これに触発され、生業にすると言うけれど知識や経験はないので大やけど。
土台ベトナムの不動産関連なんてみんな同じ。だから危険この上ない。

・文化の違い

もう一つ、COVID-19で苦境を強いられているベトナム人留学生に実習生。彼らを支援しようと食糧配布を計画した協会の支部。此処に私も名を連ねていて、そこに青年学生会の会長であるS君と打ち合わせをした。
日本人役員が語学学校や専門学校を訪問、チラシを渡して告知を依頼した。
ところが反応が無いと言う。本当に来るのか、集めた食品が無駄にならないか、と心配する。
この時、私は現地での経験からベトナム人は極端に言えばその日、その時でないと分らず、先の事を考えない。現地でさえ知人友人などの自宅を訪問する時でさえ、事前に訪いの連絡をすることなく急に来ることがある。幸い私の友人などはこういうことは流石にしないが、一般的に計画性がなく、おまけに交通費との損得勘定を考えるわけです。これには長く在住するS君も頷き、全く以ってその通り、日本で生活していてもこの習性は直らないと言ったのです。
まして今では全員がSNSでやり取りをしている。リアルタイムで母国の家族友人と交信ができるので、既に情報は伝わっている。若い人なら尚更のことで、
心配無用と、当日を待つことになった訳です。

日本企業がベトナム進出。現地へ赴任しなければならない。そこで出くわすのが文化・慣習の違い。仕事をしていればその国のやり方や習慣が大きく異なることに気付く。これは何処でも同じ事。その国の歴史、社会と文化の成り立ち、自然環境などに拠るものと考えます。グローバル・スタンダードは必要、だが社内で通用しても、社会で日本のやり方に固執するのは無理がある。
日本の他者を思いやる気遣いや親切心、没個性であっても協調性や責任感重視、恥の文化は世界とはかけ離れたものと言われる通り、時として優柔不断と不評。海外では日本人の美徳とされるものであっても通用するのは難しい。
日本の常識は世界の非常識は言い過ぎだが、海外のビジネスフィールドで仕事する限り、相手・国の状況や事情、よく伝われる国民性を弁えるのが肝要です。
そこには国際的ビジネス感覚(センス)や経験度の違い、高度かつ先進教育を受けたのか、技術習熟度の深さ、社会生活における常識的マナー、家庭教育があり、歴史的過程で派生した民族的思考もあると考えます。だが豊かになったと言え、過去から貧困を引きずってきた内面(タチ)が突如現れる事がある。
頭の良し悪しや語学能力でもなく、なによりも人の道に外れるのは何れの国であっても普遍的に評価されることに大きな違いはない。

株式会社VACコンサルティング 顧問
(IBPC大阪 ベトナムアドバイザー)
木村秀生