住宅法改正案に関して 喧々諤々の顛末とは?

2023年6月22日(木)

国の常務委員会は3月に開催した会議で、住宅法改正案に関しての結論として集合住宅に所有期限を設ける規定を補充すべきではないとしました。
しかし一方で、使用上(生活するうえで)安全性が確保できなくなった場合は、集合住宅に住む住民の移転・取り壊し・改築・手直しに付いての権限、手続き、手順に関しては、より具体的で実効性の高い規定を加えるべきとしました。
これは先に書いた通り、日本の様なマンション法とも呼ばれる区分所有に関する法律が無く、また建築関連法での規定も無いという裏返しに過ぎません。
本来であれば、このような問題が起きることは必ず想定しておくべきであり、法律に定めておき、購入時にあらかじめ購入者に明示するべきなのです。
コンクリートの寿命は60年ともいわれるが、これは中性化を意味する一般論でその地域の気候とか風土によって大きく異なる。また建設業者の能力である施工精度の問題や使用する建材などによっても違いがあるし、設備そのものの老朽化とか様々な原因があって、当初建設省が考えた80年~100年という所有期限(寿命)など、常識的に考えるとあり得ないことなのです。
常務委員会では、この改正は極めてセンシティブで、重要かつ社会生活に広く影響を及ぼす問題。このため政府とすり合わせが必要だとして、常務委員会案と政府案の二案をこの5月に開幕される国会で審議するため、法案として提出する予定となっていました。この辺りに権力の見えない壁と忖度を感じます。

・所有権の上限が論議に上った 基となる建物の耐用年数(寿命)の考え方

先に結論として所有権についての上限を決めないとしました。しかしながら、ここに至るまでには賛成の立場である政府と機関、反対する各関係団体などで様々な論議が沸騰、夫々の考え方や利益が先に立って時間を費やしたのです。
まず政府はアパートの所有期間を制限することについて、今回の住宅法改正で期間を固定することを期待していた。
ところが法律上は、一般人はこの所有権に付いて永続的であると示しており、多くの居住者も法律で明記されていないため、仮に建物が崩壊しても移転する必要性など考えていないとしています。だが古いアパートの場合、安全を確保しなければならないが、建物の改修や取り壊して建て替えることは現在の状況から(資金的にも)困難であると思っていることも確かです。
法律では大規模改修に関する項目など基本的に無い。また管理組合の様な存在はあっても、法的根拠に基づいたものでは無く不動産企業が独自に作った規約に基づいて設立したものです。これは筆者が購入したアパートで開催の総会で経験があって、管理組合なるものは分譲企業が主体であり主導するものでした。
管理費は毎月、修繕積立金は購入時に徴収されたが、それに関して企業=管理組合が居住者の承認や了解を得ずに費消、これにはその使途は明記されない。組合は日本の様に法律に拠って設立されるもので無く、入居者が組合員となり運営するものでもありません。要するに管理費は会社の収入であったのです。従って監査もされず修繕も企業の都合によって勝手になされました。
さらに会議には地元の公安が出席するという異様さ。入居者は購入者もいるが、賃貸で居住する外国人も多いので、こうしたことに全く関心は無いのは当然。
建物は何時か必ず老朽化する。とすれば何れ修繕や建替え問題に直面するけれど今の状況では為す術は皆無。会社任せでは、その時に慌てても仕方がない。

そうした事情から、実際に大都市圏では現実に問題は発生した事実があるため、常任委員会は草案の中で、アパートの使用期間、および建築物の所有権確立と終了に関する規定を補足する必要があるとした。そこまでやるか、です。
ところがこの管理の状況には全く触れず、国が耐用年数の基準を設けるなど、日本人には言語道断であって意味不明となるけれど、社会主義国ゆえに民意よりも国の判断が優先されることもあるので、何とも理解し難いがこれが現実。
日本人の中でも購入した方も居るのだが、まさかこのような論議が出るなんて想像すらできなかったでしょうが、これが社会体制の違いで怖い所です。

建物が老朽化し解体するとなれば自動的に個人の所有権は消滅すると解せます。だが土地使用権はそのまま残るけれど、これに関する明確な規定がないため、場合に拠っては何百人もが権利者となり、引き続いて使用可能となります。
こうなると収拾などつく訳など無く、戸建て住宅と異なるので話はややこしい。分割できるかと言えば猫の額ほどの狭小面積なので無理。とすれば新築しなければならないという結論に行きつくほかありません。だがそんな費用など出せるはずなどあり得ないし、この間は何処に住むのかなど問題は山積するだけ。

日本でも同じ状況に置かれるが、一応は法律に基づき管理組合の総会で議決に拠って決定され、賛成が基準を超えれば高齢などの事情で反対する人は買い取り請求ができるけれど、ここでは何もできない。その前々段階でしかない。
では国会の常任委員会が出したというアパートの耐用年数だが、明確ではなく設計図書と管理当局によって決定される保有期間に基づいて期間を固定するという素人の無知振りとしか言いようがありません。
事情はともあれ、建設省は今回の住宅法改正に伴い、期間を提案するため建物の平均寿命を算定。50~70年として、これを基に所有権の期間を制限したいと考えたのです。

株式会社VACコンサルティング 顧問
(IBPC大阪 ベトナムアドバイザー)
木村秀生