社会主義国では土地所有権がない では外国人は不動産を買える?

2023年6月21日(水)

ベトナムは社会主義国で土地は人民の物。これを国が管理するという考え方。従って所有権は無く使用権だけなのです。しかしこの辺りは完全無欠というもので無く、自由に売買が出来、利益を得ることも可能です。当然経済や社会が発展すれば土地の価値には自然と差が出て来るのは自明の理。これは立地環境からみれば一目瞭然、収益還元で計算も出来る。もちろん土地は用途によって(地域)制限されているし建築規制もある。また外国人は買うことが出来ない。
ところが2014年の法律改正で、一定の条件や戸数の上限はあるものの外国人も購入することが出来るようになりました。この制限は外国人投資家による過剰投資と、不動産価格高騰を防ぐ意味合いがあったのです。

外国人が購入できるようになった切掛けのひとつに、以前売れなかった時期があり外国人に買って貰おうとした。筆者は考える所、その手始めとなったのが資金を持つ二重国籍者、海外に住むベト僑にも購入できるようにしたのです。
転売にもベトナム人から外国人への中古物件転売禁止条件があるし、一部では業者が自主的に制限を設けている場合もあるので自由ではなく、充分な調査が必要。また所有期間の制限も50年とされるが、延長は可能となっています。
COVID-19が蔓延した結果、また金融事情に拠り、ベトナムの不動産は今極めて深刻な状況に置かれているが、ではこの数年の狂乱的上昇は一体何だったか。

海外で不動産を持つという夢を持っている人も多いかも知れません。だが何度も指摘してきた通り、購入の可否を決めるだけの状況を知るのは極めて難しく、無理があるので簡単に考えないのが良い。万一の場合、売らなければならない状況になった時はそう簡単ではありません。あくまでも当該国の法律に基づいた手続きに従わなければならないのだが、これは日本でベトナムの物件を扱う業者でさえ理解できていない場合が殆どなので注意するべきです。

外国人個人の所有に関して、ベトナムに於ける土地の保有。社会住宅(この定義とは、政府、地方人民委員会が建設し、購入を支援する低所得者や公務員向けの住宅)、工場労働者、商業住宅開発の為の土地使用形式、住宅所有権の確定される時点などの報案について、党の方針と照らし合わせて見直しを図り検討するように政府に求めたとしているが、詳細は明らかではありません。

・外国人に対する改正法案に関し 紆余曲折あったが維持

またこの改正案では、外国人の住宅購入・所有を認める条項の維持を提案しています。この策定を行うに関して建設省は、見解の相違があって当初建設省は外国人の住宅購入に付いて、土地法と住宅法の間には矛盾があるとして論議があったことを示唆しているが、けだし正論であることに違いありません。
2013年の住宅法改正時点では外国人に土地使用権はないとしているため、整合性に不透明感が残るし、要領を得ない。だが落としどころとして、今さら異議を唱えるのは法的に欠陥があるのを認めたことになり、大問題に発展する可能性があるので頬かむり。従来の条項をそのままあいまいにして、継続することをやむを得ず認めることを政府に提案したものと考えます。
確かに上物である住宅は所有権が認められているが、土地使用権と切り離して考えられるものでは絶対にありません。また住宅法は土地法に優先する法律でもないので、社会主義の基本概念である土地の使用権を外国人に認める訳にはいかないという考え方について間違いではなく、むしろ正しいと言えます。
だが誰が考えても分かることで最大の疑問。土地に関しどのような解釈をしているのか筆者も不思議に思ったけれど、当初から不自然な形のまま疑念があっても否定しなかったのは政治的な超法規的決断があったとしか思えません。
然るにこれっぽっちも使用権は認められないが、自動的に付帯するなら仕方がない。グレーのまま不条理ながらも拡大解釈するしかなかったと推測します。
蒸しかえして返還せよなど今更言えず国の信義を問われ兼ねない。元金+利息に補償金など出せる訳でもない。ベトナムらしくアバウトさが活きているかも。

2014年にベトナムに入国を許可された外国人(企業)は、国防や安全保障に拘わる地域を除いて、集合住宅や戸建て住宅の種類を問わず、戸数に制限はあるものの購入できるとしている。要するにビザさえあれば誰もが簡単に合法的に購入可能になったという次第です。
所有に関しては、土地使用権、住宅所有権、及び土地に付属するその他資産の証明書(ピンクブックと言われる)を取得することが、住宅法に基づき認められるとなっています。また外国人に与えられる所有期間は政令により50年間とされているが、所定の手続きを行えば一回限り更新、50年間の延長可能となっています。この辺りも常識的に考えれば計100年などあり得ないと思うのが正論と言えるが、日本人には理解し難いことに違いありません。それより一定期間を過ぎれば老朽化が出て来るので、早く売り逃げすることです。
なお、外国人は土地使用の対象にはなっていない。即ち土地のみの使用権を得ることは出来ないとしています。
ではどのくらい外国人が購入したのかだが、建設省は全国で外国人が所有する住宅をまとめた所、アパートを中心に個人・法人合わせ3035物件あった。しかし戸建て住宅の購入は報告が上ってこない。要するにゼロという訳です。
これは意外にも少ない、というのが感想。やはり社会主義国での住宅の購入はリスクを伴うということが理解されているということであり、現地での生活や事業をしていて事情なりが分かっている個人や法人のみが、長期的に保有するだけのメリットがあるとして購入したものと推測します。
実習生を受けいれ、現地でも操業している社長は、娘さんが留学する際に考えたけれど、購入には至らなかったということがあります。自前で持つよりも、賃貸に決めたのはリスクを考えたからで、これは日本では考えられないような事情や管理上の問題が実際にあり、賢明な判断であったかもしれません。

株式会社VACコンサルティング 顧問
(IBPC大阪 ベトナムアドバイザー)
木村秀生