ブータンは、ヒマラヤ山脈の東に位置する仏教王国です。北に中国、南にインドと2つの大国に挟まれた内陸の小国であり、面積は九州とほぼ同じです。
国内総生産(GDP)に代表される経済水準とは異なる「国民総幸福量(Gross National Happiness:GNH)」という独自の理念を提唱し、それに基づいて国家を運営していることでも知られています。GNHは、経済成長を重視する姿勢を見直すと同時に、伝統的な社会や文化、環境にも配慮した「国民の幸福」の実現を目指す考え方です。
独自の観光システムを導入
ブータンは固有の社会や伝統的な民族文化を守るため、長い間鎖国政策をとってきました。海外からの旅行者を受け入れるようなったのは、1974年からです。
同国は、GNH理念に沿って「High Value, Low Impact」という基本方針のもと、観光を推進しています。これは、観光により観光客や国家・国民に高い価値をもたらしつつも、伝統文化や自然環境への負の影響を最小限に抑えよう、という概念です。
「節度ある開国」を主旨とし、安易な観光客数の増加を追求していないブータンへの旅行は、現地または国外の旅行会社を通じて手配しなければなりません。その際、宿泊数に応じてブータン政府が定めた金額[公定料金(Minimum Daily Package)]を事前に支払わなければ、ビザが下りません。その額は、1人1日あたり200~290米ドル。公定料金には、宿泊費(三つ星ホテルに宿泊)や食事代、国内移動費、ガイド代などに加え、内国税(65米ドル)が含まれています。
公定料金制度により、同国の1日当たりの旅行費用は、近隣のアジア諸国と比べると高い水準にあり、バックパッカーのような低予算の旅行者は、実質的に排除されています。その結果、来訪者数の抑制や、質が高い旅行者の選別につながっています。
最初に進出した外資系ホテルは最高級リゾート
ブータンの観光政策は、富裕層の誘致を志向しているようにも考えられます。
それを象徴するのが、世界有数のラグジュアリーリゾート「アマン」が展開する「アマンコラ(Amankora)」です。
ブータンに初めてオープンした外資系ホテルがアマンでした。ブータン国内には、首都ティンプーなどに5軒のロッジとして点在します。
アマンコラへは、アップグレード料金を支払うことで宿泊が可能です。
アマンは、最高級リゾートチェーンとして知られ、日本にも東京都千代田区に「アマン東京」、三重県志摩市に「アマネム」、そして2019年11月、京都市北区に開業した「アマン京都」があります。いずれも、客室単価は1泊10万円以上です。