怪しい投資話には気を付けよう 新興国にもウソが溢れている

2020年6月16日(火)

成長する新興国へは事業機会を求めて様々な人が来ます。其処へ怪しげな人物による可笑しな投資話。金の匂いがする投資家や、多少金があり時間を持て余している人の許へ近寄ってくる嗅覚の鋭い輩がいます。儲け話、新規事業立ち上げ話は欺瞞的だが乗せ易く、常識では考えられないけれど簡単に騙される。
自分は大丈夫と思っても儲けたい欲望に駆られ、社会貢献への想いや実現欲求が抑えられずに付け込まれ、気持ちがそそられて深みに嵌る。多くの日本人は性善説に立つので相手を殆ど疑わない。専門家が居ると見破られるが、何か変だとか、引っかかると感じても後の祭。不測の事態になれば泣き寝入りです。
結局は海外での出来事。いくら腹立たしく思ったところでどうしようもない。

・映画を撮る?

大阪で不動産業をする人物?が来て、知人の今村昌平監督に依頼してベトナムの少数民族の記録映画を撮るとの話。何人かが集まり委員会を開くという。
業界の事情は分るので、帰国の際に調べたがビルには社名板すら見当たらず、初めから怪しい。本人は建売住宅をしているのでそちらがメインだと嘯くが、業法ではあり得ない話だし、辻褄も合わない。
当時監督はかなりの御歳、海外に来てシナリオのない映画にメガホンをとる訳がない。経費は制作委員の手弁当と言うが、やけにテンション上がりっぱなし。この国では映画など容易に撮れません。ロケハンから外務省の検査員が付き、高額日当と全ての諸経費を払わされる。現地の人民委員会の許可。通訳、車両に機材などもそれなりに大枚が必要。この辺り全然分かっていません。
この顛末、いつの間にか沙汰闇。あっ、あの話なくなった。音沙汰がなかった様であっけなく終わりました。有名人を宣伝に使って安心させるとか、大御所を担ぎだすのは古くからの手口で巧妙に信用させる罠。冷静に考えれば分かる。字幕に名前が出ると功名心をくすぐられたか、白昼夢に酔い痴れての覚睡。

・地盤改良の会社を設立し 土木の遅れたベトナムで初工事を受注?

在住者A宅に居候している日本人B。台湾企業で地盤改良の仕事に就いており、其処の技術を導入して事業を始めたいという。Aはこれに咬む意向で、自宅の一部屋に逗留させているが、Bは毎日何処かへ出かけるけれど常に単独行動。何をしているか定かでない。私はゼネコンに居たため、頼まれて自宅兼事務所でBに会って内容を聞きました。写真を見せ薬品を使って固める工法と言う。実績はあるとの説明だが、今は技術資料が無いが次回台湾に戻った時に貰ってくるとの事。軟弱地盤改良と言っても幾つか工法があり、どれを採用するかは状況に依るが方法を聞いても分らない素振りで論理が一貫しない。工事は仮設機材や大型特殊重機に、莫大な初期コストがかかるので、台湾企業はどうする。また事業を行うにしても此処は外資の単独参入は無理。公共事業が殆どなのでどうするかと聞いたが答えられない。
何日か後。Bは台湾へ戻り?そのまま連絡はなく戻って来ないとのこと。進出してくるのに何の準備もなく、部屋も食事もAが供するのも不審。あわよくばAから幾何かの金を引き出そうと目論んだのかは闇の中。嘘がバレ、相手から消えてくれトラブルがないのは勿怪の幸い。プロに相談が第一。

・ケナフ栽培という儲け話?

知人のO夫妻。ある時、日本人と一緒に圃場の視察とか。ベトナムでケナフを栽培してこれを買い取り製紙原料として売るという。ケナフは成長が早く資金回収、利益もいいとの話。だが材木を海外から買う方が経済的。品質と費用対効果が無ければ製紙会社が購買する筈がない-当地進出の段ボール会社の話。
Oは元来世話好きで親分肌。金を持っていると思われ目を付けられたようで、付き合いの広さからビジネス話が舞い込み、成功物語を聴かされている様子。ベトナム人のスタッフも胡散臭そうと思う位。ところが幸運にもこの話は何時しか話題にも上がらず雲霧散消。幾らかの経費は出たようだが大した金額ではなさそう。サンプルや作り話など演出の小道具を用意万端で接近して来ます。

・ベトナムで浄水器を売る? 無心する手段を事前に阻止

実習生が帰国する段に、知り合った会社の社長の許へ。浄水器販売会社を作りたいと相談。要は資金を工面して欲しいという事に他ならない。HCM市郊外に店を作るというがどんな所で商売するのか、どれだけ資金が必要か、応分の費用を幾ら出せるのか、事業計画などは当然なく単なる思い付き。要はおんぶに抱っこ。社長は現地事情が全く分からない。聞いても理解できない所が目の付け所でベトナム人が考える共同経営の思惑が良く出ている。本人が資金拠出しない仕事は失敗する。一旦現金を手にすれば自分のもの。使途は本人の勝手で下手をすると全て無くなる。多くの実習生は商売の経験や知識はない。営業できなく経理も分からずでは会社の運営ができない。親心をくすぐられて支援したけれど次から次に無心され、事業継続は不可能という失敗例は幾つもある。

この他海外事業のプロだと信用させ開業資金上乗とか寸借や着服。架空輸出入などいい加減な話は多い。外国人からもベトナム人同士でも騙される。個人的与太話や経歴はアテにならず、事務所が不明確など法螺の兆候は何処かにある。
カモを狙って虎視眈々、海外で暗躍するクロサギは安宿で身を潜めています。

株式会社VACコンサルティング 顧問
(IBPC大阪 ベトナムアドバイザー)
木村秀生