・工業国としての条件が整えばこそ正当な評価ができる
ベトナムが経済成長を続け急速に発展・進化をしていることは数字上では確か。今回のCOVID-19に拠り明るみになったサプライチェーンの中国一極集中を避けるため、特に西側諸国は挙ってこの国が最適であると持て囃しているのが実情。JETROは新興国への進出を支援、企業に補助金まで出しておりその採用が一番多いのはベトナム。同盟国の誼なのか腑に落ちない。
しかし一部の国や企業では、その熟練度や部品の品質・精度などを訝っているとの報道もあるため、自社の進出が能力に見合うだけのものであるのか実際に確認しなければなりません。汎用品なら造れるが特殊な製品をどこまで造れる企業が有るのか。これを十分確かめず、自社に居た実習生が帰国する時に現地で工場を借り、金を出して任せた社長が居る。
2名の元実習生は真面目であった。これはいい。日本ではルーテン作業なのでさほど難しくはない。だがそれ以上のものではなかった。まして数字は読めず営業もできない、しかも同社の製品は特殊、現地で売れる訳などあり得ない。
二つの観点から勘違いを犯したが出資金は取り戻したいと吝い。無理な話。
この事例に似ているのはいくつかあり、多くは創業者経営者の陥りやすい罠。本人は叩上げで苦労し大きくした夢を実習生に託したのが間違い。閉鎖を提案したが、ご子息で現社長が現地へ行く羽目になった。
これまで現地に直に触れてきて、ビジネスに苦心した方であれば状況はお分かりと思うが、計画的に先進工業国に成長するという国家戦略が実際には達成できていない。この現状と理由を最も良く解っているのは政府です。
積極的に進める経済連携協定で貿易高は増加するが、自国企業が弱いから外国投資に期待。この結果、輸出高に占める外資企業の割合は70%を超える実態となっています。
黒字が続き外貨保有高も鰻登りだったが、これが国力だと錯覚してはいけない。
現実には技術力が伴わないため外国の先進技術やノウハウが欲しいのが本音で新規投資に技術移転を求める案も浮上。人材養成ができないため日本から高専制度を導入したい。技術を持たない若者を実習生として海外へ派遣して外貨を稼ぎたい。表面の成長に捉われず、矛盾だらけの別の一面を知るべきです。
従って数字に踊らされて真の実態、企業の経営力、技術力を見誤ってはいけないということに気付くべき。本当の現場を自分の眼で見て、状況を聞いて確かめ、実態を体で知ることが肝心要。確実な水先案内人も必要になってきます。
・もの作り国家としての条件・資格
*マザー・マシンが造れる企業が複数ある。
*国際的に通用する独自部品、素材などを専門的・多角的に製造開発ができるトップ企業、またオンリー・ワン企業が存在する。
*企業に明確な理念や物語、文化として革新的思考、新規分野への挑戦を容認する風土がある。今後は環境保護、再エネに熱心が条件。
*海外と渡り合える度量、現場を知る個性的経営者がいてブランド・マインド・プライドの三ドが備わる。
*試行錯誤の歴史が長く、積み上げてきた特許技術・ノウハウを数多く保有。
*R&Dが継続して行える研究環境と人材が揃い、開発力を持つ。
*伝統や精神文化を受け継ぎ、高品質・高精度の製品を造る職人が居て、研鑽を積む気概と技の伝承ができる。
*市場では世界的商標と絶対的なファンを持つなど、存在感がある。
事業規模の大小は関係なくこれらが絶対的必要条件ではないかと考えます。
・経済成長
ベトナムは今年6,7%の経済成長だとあり、複数の調査機関などがほぼ同じ様な数字を出しています。
また日本企業の進出意欲も高く、既に進出した現地法人も事業拡張のため追加投資をするほど魅力を感じています。
だが以前の進出形態である物つくりより、三次産業へ興味を示す企業は多い。かつての貧国とされたベトナムではなく、若い労働力を使って経済成長が続く新興国。最も活気があり2~3年後に人口1億人を超える消費大国に成長するという顔。もはや物つくりという範疇でなく、消費財を輸出するかSPA方式が有利とされ、現地で製造販売する企業進出が増えるのが時流と思われます。また投資許可などが複雑なためM&Aも合理的で増加を続けると考えられる。
社会主義国でありながら成長のために全方位外交を展開し、世界各国・地域との経済連携協定に精を出す。貧富や地方格差は拡大の一方で、一部の富裕層や特権階級のためインサイダー情報が飛び交う。外資企業に進出して欲しいけれど規制は改善されず、法も未整備、賄賂が改善されないなど社会矛盾だらけ。
経済は好調。外資投資が続くために不動産価格は上昇。一般市民の手に負えずアパートが1㎡2000~3000ドルに高騰は狂気の沙汰。株式はインデックス1300Pを超えたが世界株高に連動する為、特別に評価する必要はないのが実態です。
株式会社VACコンサルティング 顧問
(IBPC大阪 ベトナムアドバイザー)
木村秀生