COVID-19感染拡大 でも先行き経済の見通しは明るい?①

2021年11月24日(水)

・COVID-19で起きている厳しい現況 市民の生活は不安とストレスで限界に

ベトナムは7月より感染者が徐々に増え始め、8月中旬以降、現地からの情報では連日1万数千人もの人が感染。9月3日現在で累計50万人を超え、留まりをみせない。このため病院だけでは感染者を収容できず、5段階のレベルに分けて隔離を強化。レベル1は各区・県とトゥドゥック市の集中隔離施設へ。レベル2の軽症者は仮設野戦病院を16カ所に設営して収容。レベル3は20カ所の指定病院。レベル4の重症者は15の指定病院。レベル5の命が危険な重篤患者はチョーライ病院など4カ所で隔離治療されるが、普段でさえ患者が溢れ返り、ベッドは足りず廊下にも並べるほど酷い状況だが受け入れ可能か?
自宅療養中に急変、やむなく115にコールしても救急車は来てくれません。
何でも人民委員会の指示が無いと出動できない、と言うのが現地の厳しい現実。
日本、米国、英国等から供与されたワクチンでは足りず、財源難から寄付額の多い組織へ優先接種の噂。また日本・韓国の製薬会社より技術供与され国内でワクチン製造の動きと、国産ワクチン臨床試験が急速に進むほどに慌ただしい。発生から一年半以上経つ間、優等生にも隙があったか、何度か波が続くとみられた感染なのにワクチン接種は頭になかったのか。HCM市ではあれほど住民行動を監視、厳格な完全都市封鎖も行なったが、瞬時に広がったのは気の緩みか、読みの甘さか、旅行などに拠る人の移動が原因か。市民生活が停滞する中、政府への不満も燻り始め形はどうあれ噴出する可能性も無きにしもあらず。
在住している邦人にも感染者が出て30名を超えたそうだし(8月・非公表)、帰国したくても思う様にはいかない。万一感染しても国際病院へ入院はできずローカル基準で扱われて集団隔離され、治療を受けることになると聞きます。
こうなると医療設備や医薬品がどのような状況なのか容易に推測できますから、危機が直ぐ目の前に迫って来ているといっても過言でない。在HCM市日本総領事館は当局と協議して、在留邦人千名に軍病院でワクチン接種とメール送付。
商工会議所は会員企業に向けアンケート。回答した企業の結果によると駐在員と家族の一時または本帰国を検討しているが「はい」130社(27,4%)、「検討中」184社(38,7%)、「検討していない」184社(33,9%)。
しかし会社が気になるのか状況を見極めて帰国を判断するという人が33%。帰国準備を進めている25%、これから準備し8月中には11%となっており、学校が閉鎖し子供の教育の遅れを心配する人も居るが日本人的な様子見状態。
大手企業であればある程度現場をハンドリングできる現地のスタッフがいて、帰国のため高額な飛行機代も気にしなくてもいいが、自営等で在住する同朋にとって何れを選択するにも困難が付きまとい、生活費も底が見えて不安が募る。

・経済は回復の兆しを強調 だが楽観はできずCOVID-19感染者増加に懸念

8月中旬から感染者急拡大が続く中、統計総局は今年上半期のGDP成長率が5,64%であったと発表。昨年同期は1,84%だったので、これからすると大きく改善しており、ベトナム経済は回復基調にあると世界の銀行などの調査機関は報じていますが、果たして下期はどうなるのか?予想するのは難しい。
鉱工業指数は8,91%の増加。製造加工業11,42%増は中でも最大の原動力となっており、また農林業分野でも3,69%増と前年を2,42%上回ったとし、いずれも第二4半期に目覚ましい回復をしたとあります。
海外との貿易にあっては総額3167億ドル強と32,2%の増加。この内輸出が1576億ドル強・28,4%の増加、輸入は1591億ドル・36,1%増で回復基調とするがこの所赤字が続いている。だが何故か国家銀行は8月11日に今年2回目の通貨を対ドルで約1%切り上げ。ドル買いが多すぎたのか?
また海外企業に依る総投資は推定値で1170兆VND(約525億ドル)に達し、前年同期比で7,2%の増加。昨年実績の3%を上回り好調に推移した。
さらにベトナム企業の海外新規投資も1億4千万ドルと78%増加。追加投資にあっては約4億ドルと10,8倍にまで膨らみ、総投資では5億4700万ドルと金額ベースで2,5倍に達しています。
しかし現時点でHCM市の感染者急拡大とワクチン不足による接種の遅れから、やがてハノイや地方都市にまで蔓延する可能性も否定できず、これが復旧への足を引っ張るのではと懸念。特に製造拠点が多い北部バクニン省、バクザン省、南部HCM市、ビンユン省、ドンナイ省で感染者が急増。工業団地内の工場では通勤を禁止し工場内での宿泊に切り替えたにも関わらず、日系企業の工場でもクラスターが発生して隔離され、工場も操業停止状態。難題が続いて回復の見込みは全く立たない。内需にも影響が出始め、このまま推移すれば2021年の目標である6,5%成長は厳しいとの指摘が経済専門家から出ています。

・海外の銀行から見るとベトナム市場は魅力的

上半期国内で新規事業設立と事業再開をした企業の合計は、前年同期比で93,320社と6,9%の増加。新規事業における登録資本金額は、1社あたり平均140億VND(312千ドル)と約24%の増加。年々出資額が大きくなり、事業は拡大と多様化の傾向を見せ、地場経済が活性化されている状況が伺える。
海外の銀行に拠る東南アジア各国の経済情勢調査では、ベトナムが各経済指標からみて、事業を推進するうえで最も魅力があるとの考えは変わっていません。
スタンダードチャータード銀行は、ASEAN加盟10ヵ国の中で事業機会を模索する企業に対し期待が持てる国のひとつに挙げ、今後一年間でASEAN地域でのビジネスが堅調に推移するだろうと述べています。

株式会社VACコンサルティング 顧問
(IBPC大阪 ベトナムアドバイザー)
木村秀生