日本米はなぜ美味しいのか 海外記事から

2022年3月18日(金)

日本とベトナムの米については、昨年11月のコラムで、「ベトナムで食べる寿司は何故美味しくないのか(大切な米の話)」の中で触れています。
ベトナムでの日本レストランの様子なども併せて読んで頂ければと存じます。
日毎に豊饒の秋が深くなり、食べ物はどんどん美味しくなる季節となりました。
かつてこの時節に来日したベトナムの友人に、本物の日本料理を知って欲しいと美しさ溢れる旬に併せた味覚を堪能してもらいました。宿泊した旅館では、朝食に味わう炊き立てのご飯を海苔で巻くとか、玉子かけご飯、おにぎりなどシンプルだからこそ判る日本の白飯の旨さにも驚いたのです。
先頃のニュースでは新潟県産特Aブランド米、新之助のことを報じていました。今年のノーベル物理学賞を受賞した真鍋淑郎博士。世界で初めて地球温暖化を予測した研究での成果だが、自然は正直。年々平均気温の高さが北上していて、海でも異変が起き、北海道でも鮭が採れなくなり代わりに鰤が豊漁とか。魚屋でも北海道産ブリと表示され、妙な感じを覚えますが、米どころでも人気銘柄が影響を受け始める様になってきたとか。
そこで新潟県が新たな品種の開発・改良に取り組んで、数百種から選び出して交配。8年かけ売り出されたのがこの品種と説明書きがあったのです。
従来のブランド米、親のコシヒカリと比べて暑さに強い事は猛暑の中で証明され、茎が太く15センチくらい短いという特徴は強風でも倒れにくいとある。
この所、ほぼ毎年のように新品種が開発され、2020年には富富富。19年いちほまれ、雪若丸。17年青天の霹靂。16年なつほのか、恋の予感など、枚挙に暇がないほど何処かの県で、何かしら特徴のある米が出されています。
だが数ある改良品の中、新種登録されて市場に出るのはほんの一部。また半世紀に及ぶコシヒカリ信仰も徐々に変化して来ているとあります。
さらに残念な事に日本人のコメ消費量はどんどん減少、半世紀で半減したとか。新品種が幾つも出され、差別化されているのにコメ離れが止まりません。
筆者が子供時分、米屋に米穀通帳なんてものを持って買いに行ったが配給制。
自由に買えるものではなかった思い出がある。近年パン食が増加、油脂や肉類、乳製品の消費も増え食の西洋化が進むのをみます。日本人のお腹には米食が良いのに拘わらず未だに坂道を転がる様に減り、1962年に一人当たりの消費量118,3kgが、2016年には54,4Kgと約55%も減少した。即ち一日茶碗5,4杯が16年経って2,5杯に減ったのです。
大阪・道頓堀の有名店・くいだおれの看板に食事一回分の米の量が一合とあり、子供心に得やんか、と即座に損得勘定。喜びの感情はもはや昔話。食の価値観が変化、消費は日ごとに減っていて米価も下落とは生産者が浮かばれません。
中国人旅行者が来日して、日本の米は美味しいとネットにあげるほどご執心。
そしてその秘密は何なのかとひも解いています。もちろん田植えや栽培も大切な要素だが、此処で書かれていたのは収穫後の処理方法。乾燥・籾摺り・色彩選別・計量袋詰めの4工程。殆どが機械化されているけれど品質に大きく関係するのが籾摺り。日本では温度が上がらない様にしているので良い食感が残り旨いと書かれている。
さらにセンサーで悪い米や石などを取り除く選別技術が優れており、安全でおいしい米が食べられるとしています。

ベトナムでは先のコラムに書いたように、日本の米企業が早くから進出して、種子を日本から取り寄せている。これを農家に仕様に基づいて委託栽培しています。現在は2種類でベトナムの米よりはるかに高いがほぼ納得できる品質。
ベトナムの穀倉地帯は南部のメコンデルタが中心。多くは直播。肥料はデルタに流れる河の泥上げで事足りる。天候に恵まれ年に2~3回収穫も出来なくないが、大学や研究所からは多くても二期作に留めるように指導されています。この方が単位当たりの収穫増が見込まれ、美味しくなると言うけれど、守らない農民は多いと言う。栽培と収穫は極暑の炎天下での重労働、なので此のところは農機が使われるようになりました。
北部でも栽培しているが、気候の要因で一期作。中部地域では塩の影響があり旨くなく採れる石高も少ない。圧倒的に供給量が不足するので南部から送られます。

以前の米作は、水牛が活躍し、刈り取った後の乾燥は炎天下の道路にムシロを敷いてばら撒くだけ。もちろんバスにトラックが通るが気にしない。車は道端を避けて真ん中を走るのだが誰も文句を言わない。数日かけて干してから袋に詰めている光景を目にします。なんとも長閑な農村風景。これが伝統的に行われていたが、この所農業機械が増え農作業は楽になりました。
随分前に農業大臣が自国の米を食べると砂や小石の粒が歯に当たる、と言って日本のS社製精米機導入を検討するよう指示した事がありました。何でも訪日した時の感動が頭にあったのだが、そんな費用を農家が出せる筈がありません。
HCM市の米屋、古くから商いしている店で日本米(GAO NHAT)と書いてある。スーパーで買うビニール袋に入った日本のA社より安かったので、試しに買ってみました。ところが案の定ガリッときた途端、歯が欠けたと思ったが白く小さな石粒を発見した、一瞬舎利?なるほど日本企業が精米した米との違いはこれなのか。未だに遠くの農村部では莚を広げて干しているのが理由かなと思った次第です。
しかしながら米の品種改良などをベトナムでやっていない訳ではありません。
コラムでも何度か書いた事がある最も身近に感じるのは、京大のルン・ディン・クア博士。また近年では東大・院でコメに関して博士号を取ったタオさんなど、日本と関係がある優秀な人材がいる。
タオさんには知人が、私の目の前で勤務しているアンザン大学まで電話をして博士論文をみたと評価。彼女は大変光栄だと喜んでいたようです。
実は日本は大きな貢献をしており、農業分野で日本へ留学する研究者も多く、こうした方々の努力で新品種ST25が開発され、輸出用に栽培されています。

株式会社VACコンサルティング 顧問
(IBPC大阪 ベトナムアドバイザー)
木村秀生