ベトナムで国産自動車を生産するビン・グループ。一応は国産車としておこう。
これまでレシプロエンジンの車を生産していたが、7月初旬にこのガソリン車2種の生産を終了し、ファディル1車種のみ生産が当面継続されます。
年内にガソリン車から撤退する方針を打ち出しており、これからは電気自動車(EV)のみを生産販売する体制へと完全移行してゆく予定とある。まだ体制も仕上がっていないと見受けるが、身軽になる事は違いありません。
そうなると販売済車のメンテナンスはどうなるか。同社では10年間保証するとしているが、ホンダを例に挙げると現地で人気がある理由のひとつ、何処で故障しても部品が共通なので問題が無いという安心感があるという。販売終了後、部品保有期間は法的にどうなっているか分らないが、メンテナンスと部品保有をそこまでコストと手間を掛けてまで責任保証できるのかが問題です。
この2車種の製造を中止することに同社は、部品の調達が困難となり、顧客に納入した台数が予想より少なかったとコメントしているが、6月の販売に関し、特に不振であったのは主力ファディル、前年同月比47,6%減の1338台。LUX A2.0も49,5%減でたったの11台。なお昨年12月から受注を開始した電気自動車VFe34は782台と順調だったとしています。
予想より伸びなかったという同社の先のコメント、仮に部品の問題、であれば何処のメーカーでもこの状況下にあれば同じで変わりは無いはず。
実のところ同社の販売にはムラがあり、COVID-19の影響は都市封鎖などの影響はあったにしろ、殊に6月の感染者が減少したにも関わらず、販売は全社で約30%大幅に減少、前年同月比で2490台。前月比でも18,4%の落ち込み様は尋常ではありません。
この原因、国産自動車に対する保護政策である自動車登録料の半減措置が5月末で終了したからとするが、実はこれに対して、6月からビン社では一台当たり数億VNDの大幅な値引き(1億VNV≒4,275ドル)を実施しました。
だが全く効果が無かったのは、いかなる原因なのか?これに関する報道はありません。他に為す術はなくもはや日常の値引きが行事、これに拠って万年赤字が同社の財務体質になり度合いが増す。
玉子が先か、鶏が先かだが、ベトナム政府は2040年から化石燃料車を制限するとし、自動車の製造と輸入も制限する予定としています。企業が先にこのようなゼロカーボン計画を発表。行政の後追いになるのか、しらんけど。
これは炭素とメタンの排出を削減し、2050年にはゼロエミッション産業を目指すという目標を設定したからで、公共機関を含む全ての車両を電気自動車にするか、クリーンエネルギーを使用するようにし、適切な充電ステーションシステムを全国に設置する必要があるとしています。
化石燃料車であれば、即ち石油系燃料の内燃機関。バイクも該当する訳だし、電化が進んでいないハノイ駅~サイゴン駅間の統一鉄道も完全電化しなければならないはずなのだが、これには一切触れていません。
自国の自動車産業を保護することが最大の目的としているためなのか、わざと都合よく触れないように避けているのか?曖昧。疑念が残ります。
・電気自動車に舵?いやハンドルを切った
電気自動車VFe34はフル充電で300km走行可能という。国内価格は表向き6億9000万VND。だがバッテリーは定額方式で月額145万VND。この車は1億VND値引きしバッテリー使用料を1年間無料サービス。
こうなると充電ステーション建設を進めなければなりません。2万か所を早急に設置しないと車は動かない、信用を無くして車も売れません。
EV車事業を加速発展するため今年中に全国63の省・市に15万カ所の充電ポートを設置し、EN車を今後5~6年で国内外に100万台販売する予定。
またTHANH NIEN紙によると、電動バスも生産する都市、既にテスト走行を開始。先ずはハノイ、HCM市、フーコック島で150~200台納入。朝5時から夜は10時まで運行するというから、今7時には終バスが無くなるのが延長?フル充電・2時間で220~260㎞の走行が可能という。このバスには最新機器がインストールされ、運転手の行動制御システム、即ち居眠り、注意散漫などによる事故防止のための警告装置、監視カメラ、利用者の便益のため、WiFi、USB電源、アプリに拠るバス情報の告知、移動ルートサービスなど盛りだくさんな標準装備を持つという。こうなるともはや運転手が勝手に音量を姦しいほど上げまくって自分の好きな音楽を聴ける事が出来なくなったのが唯一嬉しい。
・電池は何処から調達?
アチコチの国やメーカーと提携したと伝わっているが、今度は7月に台湾の輝能科技に出資したと発表。これは次世代の全個体電池を開発しているからという理由だが、実際は設立16年の新興企業。その投資額は数千万ドルともいう(1千万ドル≒13億7千万円)金額だがよく集めてきた。23年に稼働する台湾の工場から輸入、24年から搭載するとあるが、その真偽は如何なのか。では韓国とのバッテリーの話、あれどうなったのかな!
固定電池の世界最先端を走り、特許数でも世界一は日本。パナソニックなどはテスラ向けでアメリカに新工場を建設するが、その金額こんな程度ではない。
何処まで本気なのか分らないし、身の変わりようも早い。
・アメリカで資金調達
ビン社はアメリカ・シティグループ、クレディ-・スイスと合計で40億ドルの資金調達に向けて協力体制を結ぶ契約を行なったとの報道。またシティには現地での株式発行や資金調達でも協力を得るけれど、この約5400億円もの資金ではアメリカにEV車工場を建設するというが、普通なら無茶なお話。
どうして資金調達に協力できるのか分からない。
現在でさえ巨額の赤字を抱え、車を売る毎に赤字は嵩む一方とあるのに、屋上屋を重ねるとどうなるのか自明の理。まさか政府保証があるとまで思えないが、借りまくって後は知らない、なんて事になるのは経済が好調だからこそ。日本のバブル期そっくりで、危ない臭いを感じる。大雨か、蒼天吉日を迎えるのか見ものです。
不動産で成功したけれど、経済成長から見れば利益が出て当たり前の話。現地の識者が話すのに、土地買収はかなり強引だが表に決して出てこない怖いもの知らず。余程のバックが付いていなければできる事ではない。
また企業設立は理想先行イケイケドンドン。基盤事業や経験、歴史が無いのに無理やり感が否めない。愛国心に勝る時の兆児だが経営哲学があると思えない。だから海外に頼る中身のないまやかし経営、事業の売却や中断が後を絶たない。海外進出には金がかかるが、さて資金貸付が頓挫するとなれば暴風危険水域に入ってしまうと考えるのが妥当。此処までくれば止められない、止まらない。
株式会社VACコンサルティング 顧問
(IBPC大阪 ベトナムアドバイザー)
木村秀生