農業農村開発省の発表では、今年1~9月の国内産米の輸出量が660万トン、輸出金額は前年同期比で40%を超え、36億6千万ドルと過去最高を記録したと報じられている。このまま好調であれば今年度の米輸出の予測は800万トン、金額ベースで45億ドルに達するとの見方をしています。
これまでの最高額は2011年、36億5千万ドルだったが、残り3カ月を残し9カ月間で過去最高を記録しました。
この理由は米1トン当たりの平均輸出価格が14%増加、553ドルとなったことに加えて、インドが米輸出を禁止した事が挙げられる。
COVID-19がパンデミックを起こした時には、ベトナムも輸出を禁止する措置を講じたけれど、すでに収まったようです。この輸出増の背景にはベトナム産米が品質的に良くなったことや、単位面積当たりの収穫量が改善されたことなど挙げられるが、この8月と9月の輸出量を見ると、180万トンとなり世界で最大となりました。
米の輸出国はフィリッピンが一位で40,3%、中国13,5%、インドネシア12,4%と続きます。
ベトナム米輸出価格は世界でも高く破砕米率5%が1トン当たり613ドル、25%は598ドルとなるが、タイ産米は若干下落しているという。
現地で早くから操業している日本企業。此処では日本向けOEMの味醂などを製造しているが、当初から地元産米ではなく、価格の安いタイ産破砕米を輸入していたと聞いたが、ベトナム産の方が以前から質は良いかも知れない。
・国内産の野菜、果実が高騰
日本でも今年の夏の高温が影響し、玉ねぎやサツマイモは豊作で値段も安い。
普段の高い淡路産が1玉38円などこれまでみたことなどありませんでした。
しかし人参、京都特産の九条ネギなど場合によっては50%以上も高くなっている。また秋の恵みである栗も夏の高温障害の影響を受けているし、松茸など特産地のマツタケ山でも殆ど取れない状況だという。
海でも海水温が3度高くなったというが、これで温暖を好む漁が北に上がって来たし、秋の代名詞である秋刀魚はやせ細って、10年程前の8倍の値段。
もはや庶民の見方ではなくなった。子供時分は一匹10円、子供が喜ぶだけではなく家計の味方が今では高級魚。スーパーで売っていたのが台湾産と書いあったが、採った漁場は北方海域。今や外国漁船が自国の食の為ではなく外貨稼ぎのためとは残念な気持ちです。
ではこの様な異常な状況(気象)が元戻るのか?
こうした状況はベトナムでもよく似ていると現地報は報じて居ます。
先の米のそうだがサツマイモ、サトウキビ、生姜、ドリアンも大量に収穫され、オマケに価格は下がるどころか上がっている。このため農家は大きな利益を得ていると記事にしています。
サツマイモの価格は1キロ18,000~20,000VND。中部高原の農家は1ヘクタール当たり200万程度の収入があった。日本と異なって細く品種も少ないうえに甘くないが、家で蒸かして食べていたし焼き芋も売っていた。
サトウキビは砂糖を造る原料。1キロ当たり8,000~9,000VNDで、1Hr5千万~8千万VNDの収穫だったとあります。ベトナムに幾つか精製工場はあるが、日本の様な粉上の精白糖ではなくグラニュー糖です。
生姜は24,000~28,000VND、1Hr当りで120万VNDとか。ベトナムでは家庭でも生姜を使って砂糖菓子にするが、結構辛くて美味しい。しかし日本産とは違って、少々スジが長くて多いというのが印象です。
ドリアンは45,000~80,000VNDで、1年前の2倍。2月には200,000VNDと過去最高額を記録したことも。慣れると美味しく病みつきに。
農産品の大手輸出企業は、今年の大豊作と高価格のおかげで農家の生活が変化したという。この他にもバナナやスイカもそうで、中国向けに輸出する交渉をしており、また今年はパッションフルーツをアメリカ向けに輸出される様だが、間もなく手続きが完了するという。
こうして今年はベトナムの野菜と、ロンガン、ジャックフルーツ、バナナなども加えた果物輸出は1年前に比べ、約72%増え420億ドルを超えるという。
市民の味方、ネギも高騰。鶏肉より値段が高くなったと書いてありました。
地元の路上店で野菜や肉、卵を買うと何把かのネギをただで付けてくれます。一人所帯ではちょっとした間に合わせには十分でとても有難かった。
ところがこのネギ、8月から値段が2倍に急騰。コンビニでも売っているが、なんと1キロ10万VND、こうなると鶏肉や豚肉より高くなったと嘆く。
一般家庭ではこれまでオマケのように貰っていたのが、1万VND払っているという。数人の家族では足りません。この他のパクチーなどの香草も急騰した。
このネギの卸価格は1キロ、2~3万VNDだったけれど、今は5~6万というので、生産地農家は1000㎡の農地での平均利益は1000万VNDにもなっていると言う。主な生産地はHCM市に隣接するロンアン省、タイニン省、メコンデルタ・ドンタップ省です。
生産組合ネギの話では、価格上昇の原因は今年の長雨。ネギの腐りが多発して生産量が30~40%減ったためと言う。通常雨季は腐りやすく生産量は減るがこの夏は酷かった。乾季になれば元に戻る可能性もある。
・マカダミアナッツにバナナ 海外需要が増え輸出急増
ベトナムのマカダミアナッツの生産量は世界一。その80%を生産している。
税関の統計で、マカダミアナッツの輸出が前年比50%、バナナは19%伸びたとあります。両方の輸出額の合計は約8%増の2億ドル強。
この他にも二桁の伸びをしたのは、マンゴー、ジャックフルーツ、ドリアン、パッションフルーツと言う人気の南国特産の果実。
ベトナム野菜協会はアメリカ、EU市場、日本、韓国の消費者に好評で、輸出が毎年増加しているという。だがバナナは輸出基準を満たさない場合が多く、輸出量は少ないとも語ったとあります。
これは生産農家が小さく、栽培面積も広くない。また品質要件に該当しないことがあるとしている。実際に以前あったが、生産者は日本に輸出したいとある企業に紹介を貰ってきたことがある。居合わせたのだが、この企業の社長が質問をしてもただ作っているだけで、全く勉強もしていないというお粗末さ。
この様な考えの人が多いのは確かです。これは政府機関とか、大手食品商社や日本の一部企業の様に生産指導を行わなければ進みません。
しかし種類は幾つかあって用途に合わせた食べ方が出来るし、もっと輸入して欲しいと個人的には思うのだが。
全体的にはこの通り農家は潤っている印象だが、別の記事でドラゴンフルーツの輸出が減少傾向にあるという。
8月の輸出は昨年同期比で20,5%減少し4060万ドル、また1~8月でも4,4%減の4億4200万ドルだった。昨年は10億ドルを超える果実の輸出主力品だったのだが、なぜ急速に落ちているのか。
中国の税関に拠ると、今年度上半期でのベトナムからの輸入は50,4%減少、206,000トン。金額ベースだと約43%減の1億8700万ドルだった。
これはこの10年間で最低だったという。
この原因、中国国内で栽培が始まった事と、アメリカ、メキシコなどでも栽培が可能になり輸入量が低くなったとあります。
しかし一方で、日本向け輸出は増えており、特にバナナ輸出は年初来7カ月の統計では、輸出量が62%の7900トンと大幅増加、金額で約80%、710万ドル(10億5000万円)と好調。この先も明るい見通しがあるとするが、この理由、ベトナム産バナナは4月1日から免税になったのが功を奏した。
ところが日本の輸入量が約61万トンのバナナ、最も多く約80%を占めているフィリッピン産は平均13%の関税が掛るとある。因みにベトナム産は1,3%(5位)に過ぎません。
株式会社VACコンサルティング 顧問
(IBPC大阪 ベトナムアドバイザー)
木村秀生