ヤフーニュースの経済欄、ある大学教授が、「中小企業へのエール」 一発逆転思考、ビジネスの参考に との記事が出ていました。
その中身とは、中国、タイはもはや日本企業の進出の桃源郷ではなく、今注目されているのが「ベトナム」「カンボジア」である。と一応は浅い歴史も入れてつらつら述べておられるが、今になって進出が始まった訳ではない。
タイトルは勇ましく、何か目新しい秘策があるかとの期待も見事に裏切られ、余りにも薄い内容で尻つぼみ。これを大げさにも一発で何が逆転できるのか?何でベトナム、カンボジアが桃源郷なのか、さっぱり理解できません。
読んでいると最新の国勢調査の総人口ですら把握していないくらい。これでは現地事情が分かっていないのがまるわかりです。
すでにポストベトナムは?といった話題も出始めているし、カンボジアなどはフンセンの民主主義を無視した恐怖政治でEUから特恵関税を停止される危機的状況にある。内戦の影響は未だ大きくマイナス要因として根深く、問題は多いはずなのだが、クメールの誇りとか、東西回廊を持ち出す始末。余りにも実態が掌握できておらずお粗末極まりない。木を観て森まで分かったような感じ。こんな程度なら駐在員の方がもっと正確な情報を発信できます。
最後の結びは、両国ともスマートフォンの普及にともない、若者を中心に電子決済アプリの利用が屋台から配車サービスにいたるまで急速に進んでいること。
なので、外国人の海外旅行でも安心とまとめているけれど使いこなせるのかと個人旅行の感想文レベルの認識でしかなく、今はネットでも分ることだらけ。
経歴は通産官僚上がりの大学教授とあるが、名前を変えて急速に受験生を増やした大学。しかしこの企業の親分は、ベトナムに大工場を持ち何万人も雇用し、ベトナム首相が来日した時には、わざわざ会いに来るほど貢献をしています。
大学の先生とは何人か交流があり、皆さんそれなりに現地へ何度も足を運び、それぞれの分野で活躍されています。研究テーマに沿って日越の企業、大学や機関、遠い地域、寺院や施設へ出向き、時には障害児と向き合い論文や書籍に纏めて成果を発表されるとか、或いは何年も地道かつ真摯に活動し、文化交流などでも大きな成果をあげ評価されている事実も多数あります。
私の友人など研究のため大学の費用で来越。しかし何せ本業は教員。如何せんビジネスに関する論文を書かれる他の先生も同じ。現地での事業経験やドッカと腰をおろした生活体験など当然無く、就業をするとかスタッフを採用しての商いに基づくものでもありません。
頭脳明晰で地位もあるけれど、頭で考えることと実体験に拠る実態把握と次元が全く異なるため誤認も多いが、それを認めない。数える位の訪越、僅か数日の滞在で一体何が分かるのか不思議?に思います。
こうして出来上がった論文の内容は、インタビューの際に用意した質問に対するヒアリングの纏め。現地企業を紹介、工場視察や進出に関する事情や経験など聞くために同道した事は幾度もありますが、この現地駐在者へのヒアリングが曲者。全てが本当だと言うものではありません。ペラペラと内実を話すことなど無いのです。まして現地に知り合いや取引先が無く取引銀行の紹介などでは都合の悪いことなど言えない。誰だって初対面の相手に向かって本音など出すはずなどあり得ません。十羽一絡げの苦労した成功話で相手は納得。
性善説の日本人は情報をタダと勘違いしているのが根本的に間違っている。その背景にはどれだけの時間と費用が掛かり、努力があるのか!
こうして新興国進出へのネガティブな部分はカットされ、ポジティブな神話のみが伝えられる始末。ますます期待度が膨らんでゆくのです。
そこに錯覚が生まれることがあります。しかも新興国の成長は思うより速く、その進化も並ではない。しっかり現地事情と現場の事態を押さえる事が肝心。
新興国への進出は簡単ではなく、本社のデスクに座っている内勤者が思う様な目標通り行くものではありません。地理も歴史、社会に文化も分らない人物が現地駐在者を苦しめます。
さらに多くのコンサル企業も、現地ローカル企業や、本当の現場の状況を知りません。高々10年ほどの事業期間、簡単にご縁が繋がり、日本から電話一本で頼みごとが出来るほどの深い関係が構築できるものではありません。従って肩書や名前で判断するのは間違い、中身で勝負。これに知らずに多額の費用を無駄に支払った企業が沢山あります。
また新聞記者にしても同じ、取材相手の名前を秘す約束を反故にする。仕方がないのかもしれないが、一介の社員なのに記事になると社長に変身している、成功物語は書くけれど、本当は大切な失敗談は載せません。粗筋は間違ってはいないけれど、真実ではない校正されたものという認識は個人的経験から拭えずメディアを信じてはいけない理由です。
株式会社VACコンサルティング 顧問
(IBPC大阪 ベトナムアドバイザー)
木村秀生