ある長期在住者が話題にしていたのは、お金を借りるベトナム人の心理とは。当人はベトナム人の若い奥様と一人娘が居る一般的な国際結婚のご家庭。
氏に拠ると個人的には貸した経験はないけれど、現実には私的・公的を問わず現地で深くベトナム人と関わると、金銭の貸し借りにある程度は向き合う必要があることに留意すべきとしている。だが貸し借りとは言うものの、日本人がベトナム人から金銭を借りることは殆どあり得ない訳で、実際には借りる側のベトナム人の実態、と捉えるべきなのです。
実際に生活すると、多くの人がほぼ何時しか、また幾度となくこういう事態に遭遇する。寸借ならまだしも、しかも厚かましく一桁ちゃうで、と思うような金額を平気で吹っ掛けるのは驚く限りだが、おい返せる訳ないやろ。
日本でも、世界中どこだって借りる心理は同じと言ってしまえばそれ迄だが、根本となる金銭感覚は随分違うものがある。
アジアでは年長者・上位者や裕福な者が支払うということが一般的で、日本の割り勘は常識ではない。また冠婚葬祭などのいわゆる「お返し」はありません。
即ち、会社内でも、日越の知人・友人間でもこの慣習や掟が存在すると考えるのが妥当。基本的には誘った者、上の立場の者が支払うのが当たり前なのです。
また郷に入ってはという格言は通じず、多くの場合、来日して長く住んでいたとしても金銭に関する遺伝子や習慣には変化を見た試しがありません。
従って何らかの事情や出来事が無いとすれば、彼らの原則は世界どこへ行っても普遍。借りる=貰うというのが共通図式。要は貸すことは「あげる」という同義語と覚悟。これを勘違いしてはいけません。
しかし善し悪しや感情は別にして、そこには遠慮や羞恥心は殆どなくダメ元。上手く行けばめっけもん、借りてしまえばこっちのもの。無下に断られても全くへこたれない逞しさはあるが、むろん担保なし。これを念頭に置くのが間違いない。二つ返事はあり得ず、後になって恨み辛みが残るだけ。
高学歴で留学経験があるとか、国際感覚のある人、富裕人などはこの辺りは少々違っていますが、一般的な市民目線での感覚と言えばこの様に捉えて間違いありません。
日本の大学院へ進学した人の実例を挙げましょう。HCM市に居た時、私の知人である日本人に日本語を学ぶ、有名大学へ通う地方出身者。大学4年の時に留学を決意。そのため現地の日本語学校の留学クラスに入ったのです。ところが自宅に来て明日までに寮費と授業料を払わなければいけないので貸してくれ。
境遇は聞いていたので、まっ、いいか、となけなしの出費だが、何で私なの。
二度目は日本で提携先の日本語学校へ入って後、過労のため救急車で搬送。
授業料が払えないと泣き付いてきた。早くにN1を取得、成績の優秀なのは知っていたので、このまま断念は惜しい。その後に卒業だが、大阪の老舗有名企業がベトナムへ工場進出するというので、知人を介して入社。しかし2年後、順風満帆なのに相談もなくそのまま黙って帰ってしまいました。
これはほんの一例、他に幾つもあって数えきれない。親切心で部屋を貸すとか学校へ行かせるなど様々に支援をした人物も、感謝の気持ちすら聞かず帰国しても音信は無いと憤怒。ベトナムに関係する人は特に諸事情が分かるため当人の家庭環境に心を痛めるが、日本人が持つ義侠心や思いやり精神は無駄の骨頂。金は天下の周りものとか、施した分は何時しか、もしかすると誰かに別の形で還ってくるなど利他の心など一切無用。この辺りで収めますが、義理人情は日本人の特許、恩は仇で返され儚ないもの。これが通り相場。
状況は異なるが、優秀な社員が居て褒賞に日本へ視察研修に派遣した。周りは綺麗で欲しい物ばかり。気が付けば店の商品を懐にしていたのです。即ち万引きで御用。こういう例は新興国での事業経験が豊富な企業は分かっているため
近隣国にしている。大手企業の社長が話に拠ると、なまじ信頼し過ぎて相手にも不運な結末となる可能性も否定できない。どんなに真面目な人でも目の前に人参をぶら下げられると一気に幼稚性が現れる。それを抑えられる人格形成や道徳観念は出来ていない。余りにも環境や格差が違い過ぎるため裏切られる。表面だけの繁栄からは見えてきません。
金銭を借りる感覚とは貸す方も借りる方も曖昧。返済期限など全くなく口約束だし書面にするなども無く、公証制度もあるが利用しない。金が出来ても返す意思はサラサラ無い。
どういう神経かと言えば、返済を期待しないが自分が困った時に助けてくれるという意識、深く考えない。ムラ社会という狭い範囲の慣習ならば通用するかもしれないが、無心をするのは地方の精神的に貧困な者が多いとあるが事情は夫々あっても構ってはいけない。だが現在の社会では納得される筈は無いが、これが不思議と通用してしまう怖さがある。
貸さないとしても吝嗇とは思われないが、浪花節的な感情には流されず、情にほだされないのが一番で、貸すならあげると割り切る。でなければ一切断る。これが経験者の処方箋です。ひとたび貸せば噂は直ぐに伝播する。そうなれば次々とリクエストがあると心得る。
断って離れて行くのならそれでいい。むしろ所詮縁が無かっただけでスッキリ。後々不快な思いをしたくなければ、気兼ねするとか億劫がらず、雨が降っても傘無いと言い張るのが鉄則。
株式会社VACコンサルティング 顧問
(IBPC大阪 ベトナムアドバイザー)
木村秀生