日本の旅館で驚いたと言うハナシ

2022年3月16日(水)

以前に日本のホテルで実際にあった出来事を、来日した中国人がびっくりしたとネットに感想を述べ、この時ベトナムのホテルでの実情を併せて書きました。

今度は日本の旅館でのこと。一泊二食付きは日本の旅館の特長で、他の国では普通ないはずです。敢えて行きたい店、食べたい料理があるなら素泊まり可能の旅館を探せばいい。
ホテルはB&B、即ちベッドと朝食付きが一般的。基本的に世界の何処だって殆ど変り映えしない内装。いくら日本的な情緒を出そうとした所で、取って付けた様な表面的で物理的に美しいだけ。旅館が受け継いできた歴史や文化の重みは感じないし、内なる精神にまで触れられるものではありません。

食事は旅館の品格を示すもの。食材と食器が一体になって醸し出す芸術なので女将のセンスが問われる。このためいずれの旅館も一生懸命に暖簾を守る努力を惜しみません。
部屋付きの担当者も訓練されていて礼儀正しさ、整理整頓され清掃が行き届いた綺麗な部屋、気遣いのある用意周到で質の高いサービスを感じると言う。
風情ある日本家屋のこじんまりした格式ある旅館の和室で過ごす非日常体験。宿泊客は得難い感動を覚える。部屋から庭師によって木々や石等が巧みに配された庭園、あるいは自然の借景を眺め、浴衣や、冬はドテラを緩く着る、畳に敷かれた布団で寝る。部屋食ならば他人の視線を気にせずゆったり味わえる。全てが職人の技。この文化溢れる寛ぎの空間こそホテルに無い魅力でしょう。床の間こそ文化が凝縮された小宇宙。立って半畳、寝て一畳、この深い世界観、わかるかな。旅館で過ごす一日はまさに一期一会であり忘己利他の精神が須らく活かされています。日本人が造っただけの物や形なら真の理解はできない。

多くの海外からの宿泊客は様々な体験を得、感動して帰国するが、ある中国人が旅館に宿泊した時、一部の客が夜遅くまで騒いでいたと言う。そのクレームを旅館に伝えると、費用を全額返してきた。ビックリ仰天とある。
何処の国とか、どのレベルだか記事では分らないが、筆者もこのような経験を日本でもベトナムでもしたが、こんな見事な配慮はありませんでした。
ある人はたいした品で無いけど忘れ物をしたが、帰国後に連絡すると自宅まで無料で送ってくれたとか、急病になった時に親切に対処してくれたと感謝。
またガラス製品を誤って割ってしまったが、旅館のスタッフは怪我がないかとか、服は汚れなかったとか、恐縮するほど心配してくれ、その費用に関して弁済する必要はなかった。そういう丁寧で心配りのある態度や対処は自国の5星のホテルでなら到底できません。一般の店なら主は損をしたくないと考える。とこうした状況に感心しているとの内容の記事が掲載されています。

さてベトナム。あるベトナム人が来日。この時に事前に連絡していた日本人が居ました。このベトナム人は有名ホテルの社員として勤務していた人です。
ある方は、学生だった頃。一人で旅行したときに、腹痛を起こして蒼白状態。自宅に招かれて世話になったという。体に負担が掛からない粥を頂き休んだと話をしました。何しろどうしていいか分らないし言葉も話せない、英語は少々。
他に日本人が居ないので余計に不安が襲ってくる。こんな時だったので親切が身に染みたと広島からわざわざ大阪まで来て一緒に観光を楽しんだのです。
別に日本人だけでなく、何処だって心根の優しい人はいる。同じ境遇になったらと考えるのは同じ気持ち。言葉や国境は関係なく万国共通。その一言、其の態度は、相手に国のイメージを植え付けるためサービス業は責任重大。できる限り人には親切にという風に思えます。
ホテル専門学校ではこんなことは教えません。仮に物の本にノウハウが載っていてもやり熟せるものではない。やはり育った家庭の教育です。

・ベトナムで食器を割ったら?

お客が、となるとそうはいかないので、この分を請求されることはありません。
観光客が食事に行くとか、地元で一般のレストランやホテル内のレストランは陶器を使用しています。全てそうだと言えませんが、多くのローカル食堂では割った従業員の責任としてその分を給料から引かれる事が多いと聞きました。
これは地方から出てきた住み込みの家政婦でも同じ。もちろん雇い主の度量にも拠ります。不注意を諫めるのはいいとして、此処まで責め立てるのは昔の話。
その前に主にComBinhDan(地場の食堂)で使用する食器類はプラスチックにしてあり陶器は使いません。家庭で陶器を使うのはほぼ金がある所。一般的に皿に大小の椀類、箸などもほぼプラスチック製品を使っているので、割れる心配はありません。

・ホテルでお客から取りっぱぐれたら?

これはある有名ホテルでの出来事。このスタッフの一人は昔からの知人である。
ある時、日本人の宿泊者数名が雑誌の取材で此処に一泊しました。取材なので宿泊費用は依頼者から出る。個人的な負担などありません。ところが取材班がチェックアウトの際、フロントのスタッフが何を間違ったのか既に依頼主側の旅行代理店から受け取り済と勘違い。後で間違いが判明したが次の取材地へと出発した後。このスタッフは真っ青になったのです。万一回収できなければ、もちろん自腹を切らなければいけない。だがこの費用彼らベトナム人スタッフが払えるにしては高額。悠に3か月分。偶然に滞在していた私に電話があって、ことの次第を伝えてきたのです。何とか助けて。向かったのはホテルの事務室。いろいろと聞き取って、運良く判ったのが次に行く場所とホテル名。さっそく電話番号調べて貰い私がこの責任者に電話をしたのです。
出てきたのは女性のディレクター。電話口に日本語で話し掛けられたので相手はびっくり。そこで自分の名前やHCM市の事務所の事など、また今回どのような経緯があり、どのような事情があって電話したのかを説明しました。
すると、其処は日本人同士。相手も可笑しいと思ったと話すのです。即時了解、円満解決ということで無事に体面を保てた訳です。

この時、間違えたスタッフが自己責任で弁済という現地事情に心を痛めたのか、この取材は某航空機の機内誌用だったのが作用したのか。相手も知人と日本語でさりげないやり取りをしていたので覚えていた。幸運が重なったけれど彼は仕事で確認の重要性を教訓とすべしです。
相手に対して、もし払わないと言えば、それはそれで済むかもしれない。だがそれでは次に来る日本人が困ることになるかもしれません。薄くなったといえ、日本人の恥の文化、相手に迷惑を掛けない精神は海外でも何につけ生きているかに感じた次第。

株式会社VACコンサルティング 顧問
(IBPC大阪 ベトナムアドバイザー)
木村秀生