観光に関する話題の数々①

2023年5月30日(火)

COVID-19がようやく一段落。中国政府は3月15日から観光旅行の試験的再開の第2弾リストにベトナムを加えるとしました。何しろ感染が広がる前には、ベトナムへの中国人観光客は2018年度で約580万人。外国人観光客総数のほぼ3分の1と最大なので訪越解除にホッとしているのが実情です。
また運行が停止されていた航空機路線も徐々に再開され、各国から観光客が来ることを期待している。
こんな中で幾つか観光に関する記事が報じられています。これまで観光の中心は南部メコンデルタ、中部の高原都市ダラット、そこから峠を下りきった海浜リゾートであるニャチャン、古都フエやホイアン周辺、ハノイ周辺などが知られています。だがこの所、旅慣れた人は北部山間部での宿泊が興味深いなど、推奨される行き先も交通至便という訳でなく、有名でもないが多種多様。自然に恵まれ素朴さと野趣溢れる山里生活に触れる文化体験型が増えたと思われる。
最近、海外旅行メディアが選んだベトナム観光の見所などを簡単に紹介しますが、これまでに幾つかの有名地を詳しくコラムにしているのでご参照ください。

・メコンデルタ・カントー市の水上マーケットが消滅の危機

初端からなんや暗い話、と思われるでしょう。長く日本人観光客にも親しまれてきた、100年以上の歴史を持つと云うメコン河のカイラン水上マーケットが無くなる?との現地記事があります。
かつては払暁ともなれば周辺一帯から米や野菜、果物などを積んだ船が数百隻集まり、約1キロに渡って水面の3分の2を占める程の風物詩でもあったが、ここ数年は30~40隻しか集まらないという。
この地をツアー会社が観光客を案内し、小舟が寄って来て土産物などを買った方もいらっしゃると思うが、本来は小売りではなく卸売り。どの産物を積んでいるか分かるように船先には扱う野菜や果物をぶら下げ目印にしていました。しかも船は住居であり、一家は船内で暮らす水上生活者であったのです。
ところが取引場所が移転するとか、トラックに拠る陸送が増えたので、船を売って陸に上がり車を購入した。さらにこのエリアに堤防を造ったことで船から商品の荷下ろしが困難になったのが衰退の一因。こうした訳で観光資源としての魅力もなくなったとあります。何処でも時が流れ、変わりゆく運命にある。カントー市を訪れる観光客の70%が見学に来たという風景を守り観光の目玉を無くさないよう2025年には桟橋、休憩所、駐車場、貨物ターミナルの整備を進めると報じている。市は補助金を出すとか、船の手配をするなどしているが元はと言えば地域の一生活文化。これを演出するのは無理筋というもの。

・ダラット アジアのロマンチックな旅先に選ばれる

ライフスタイル・アジアは結婚式やバレンタインデーなど特別な記念日としてカップルが滞在するアジアの最もロマンチックな旅先トップ12に、ダラットを選びました。
高原保養地として喧騒から離れ、ハネムーンでもよく利用されていたダラット。
ハノイやHCM市等の大都市はデルタに出来た平坦な土地。季節の移ろいなど分らないし何しろ暑い。だが此処は山と谷に囲まれ綺麗で清涼な空気、滝や湖、花と緑など自然豊かな別天地。人も良いし、観光資源に恵まれ最後のフエ王朝皇帝バオダイが過ごした別荘、教会や寺院も残されていて文化の香りも高い。市場では新鮮な果物など味わえるし、夜のマーケットでは食べ歩きも楽しい。瀟洒な一軒家のカフェ。帳が降りる時分、静寂の中で味わうコーヒーは格別で至福の時を現地の友と過ごした素敵なシーンが浮かんで来る。林芙美子さんが朝日新聞の特派員として滞在、爾後に上梓した小説「浮雲」に登場。日本軍の研究施設もありました。

・世界で最も美しい都市トップ25にホイアン

旅行雑誌、トラベルエージェンシーでは2023年の世界で最も景色の美しい都市トップ25に、ベトナムを代表するホイアンが唯一選ばれました。
かつてはチャンパが支配した交易都市であり海陸シルクロードの中継点。日本の御朱印船が出入りして盛んに特産品を貿易し、現在まで繋がる歴史を持ち、日本人が在住した馴染み深い土地。こうした往時の風景や生活を白石一郎さんや平岩弓枝さんなどが時代小説に書かれていて面白い。
日本人が一番にする目玉は日本橋。この中心部から中国人街と日本人町が分かれていて、諍いが起きれば橋の真ん中で仲裁が行われた小さな部屋も残存する。しかし日本人居住地が何処にあったか所在は未だ判明していません。
世界遺産に登録されていて交易時代の趣を残し、往時の歴史を感じさせる商宅が現存するこの地域一帯はワンダーランド。小さな町だが海外観光客を惹き付けホッとさせる魅力があります。一部の元商家での宿泊も可能。
街の祭りのクライマックスはランタン祭り。家の軒先に吊り下げられた何百基もの灯篭の灯はホイアンの夜をロマンチックにします。日本に留学、有名企業に就職した人の父親もこの職人でした。特産品は絹織物が良いし、絵画の店もあって画廊巡りが楽しめる。

・最も美しい日の出と日没を観ることが出来る旅先

アメリカの著名な旅行雑誌である「トラベル+レジャー」は、このタイトルでベトナムのハロン湾を選出。またCNNも世界25選の観光地にしています。
船での宿泊ツアーもあり、海から浮かび上がるご来光に手を合わせ、水平線に沈む夕陽を堪能できます。この地域は石灰岩で出来た地層、200を超える島と多数の洞窟もあり複雑に入り組んだ湾で水上生活者が養殖をして生計を立てている。この中には立ち入り禁止地域があって一般人は入れない。以前に撮影で入ったことがあり、神秘的な聖域とでも言おうか静寂そのもの。カトリーヌ・ドヌーブが主演したフランス映画「インドシナ」でも登場した見所もある。
日本が架けたバイチャイ大橋を渡れば無煙炭の世界的産地ホンガイです。

株式会社VACコンサルティング 顧問
(IBPC大阪 ベトナムアドバイザー)
木村秀生