・ベンタン市場の外壁塗装完了
HCM市を観光で訪れたなら、まず外さない行き先のひとつがベンタン市場。
市場は何処の国でも庶民生活が垣間みられて興味が湧く。此処は110年間の歴史をもち修繕が必要な箇所は当然出て来る。
今回1985年以来の改修工事となるがあまりにも汚いと言われてきた外壁を同系の色で塗装。明るくなったと評判だが、HCM市人民委員会が4日間かけて塗り直し、経年劣化による破損個所の修理とカビも修復できたとあります。
この塗装に加え夜間のライトアップのため、照明システムの工事も新しく施工。市場が鮮やかに浮かび上がるという仕掛けも採用しているのが特徴という。
実は古くなったトタン板を外して新しく断熱機能のある屋根材で葺き直す工事と、市場内が暑いという苦情も多いので換気口を設置し直すとか、煉瓦を交換する改修案があり、市はこれに同意したのだが未だ着手されず塗装工事が市の費用で先行したという次第。
何しろ総面積は13000㎡もあり、金属の屋根では暑い気候に全く通用せず熱が籠るし、冷房装置も無い状態。住民や店員でさえ慣れていても暑いと不評。
これがアジアの市場と思えばいいが、殆どの外国人からするとそうはいかない。
行かれた方は先刻承知だが、衣類に雑貨、靴やサンダル、果物・菓子類等あらゆる商品が座る場所もない僅かタタミ一畳程のスペースに堆く積まれている。
さらにサトウキビジュースなどの飲み物、簡単な麺類やご飯などベトナム料理の軽食が屋台風に食べられるので結構人気があり、飽きることはありません。
昔から贔屓にしている刺繍や工芸品を扱うお店がある。何度かお客様をお連れしたが、私と行けば二重価格ではなくどの店よりも安く買えたと喜ばれた。
今はCOOPマートに勤務していた妹と共に切り盛りしているが、メコンの片田舎から出てきて、元手無しから店を出したのです。こういう話はごまんとあり、ベトナム人女性の忍耐強さのお手本みたいで、その成功法則に感心するばかり。
この店の権利金は数年前の記憶だが、日本円で1千万円ほどに高騰したと聞いたことはあるが、ターミナルの整備でもっと跳ね上がる可能性もあります。
地下鉄がこの10月にも開通する予定。この市場の前はかつてバスターミナルだったが移転しており、このベンタン市場が起点となる1号線の4階建て駅舎が出来れば緑地化されることになっている。となれば金屋などでごちゃごちゃした雑踏の雰囲気を楽しめた周辺部はすっかり生まれ変わり近代的に変身する。さらにお洒落な(多分)地下街もレロイ通りの下に建設されるけど、私などは差し詰め今浦島、面白さが無くなればもはや行くことさえ億劫になります。
市のヘソであったグエンフエ通りとレロイ通りの交差点にあった国営デパートは地下鉄工事に着手してから取り壊され、代わりに通りに沿って高島屋が出店。
かつての趣が消え去り変貌するのは寂しいが、世の流れなら仕方ありません。
こうした背景があってせめて塗装だけでも綺麗にという訳だが、気になるのは利便性と引き換えに、市場やこの周辺の店とカフェにレストラン、ミニホテルの料金までが上がるのではないかと心配するけれど、そうなれば困ったもの。
・HCM市人民委員会庁舎 無料見学を実施し好評だとか
グエンフエ通りを北に上って、そのドン突き。旅行雑誌に出て来るあの黄色い外壁の建物が人民委員会の庁舎。国旗が揚がっている。前面道路はレタントン通りで、西に行くと日本料理の店がひしめいていて日本人駐在者が多く集まる。
日本と違って、こういう建物など一般市民は入れません。大阪市はHCM市とビジネスパートナー都市になっており、IBPCが視察ミッションをHCM市に派遣した時、筆者も何度か一緒に庁舎内に入ったことがあります。
何やら物々しいけれど、天井が高くて広々とした部屋に通され主席はじめ要人やビジネス界からも経営者が参加しての会談。ご丁寧にHTVが来てニュースで放送するくらいの仰々しさ。市のバッチを主席から頂いたこともあります。
市は4月29・30日の二日間、この庁舎内の無料見学ツアーを実施したが、外国人を含んだ1500人が訪れたとある。市民でさえも初めて入るのだからさぞかし珍しかったと思うけれど、歴史的建造物とあっては一目見ておくのも悪くなく、噂好きの市民には話のネタ程度にはなります。
この見学会の初開催には現マイ主席も自ら参加。これからもこの様なイベントを行なうことを今回の主催者に提案したというから時代は変わったものです。
もちろん当局としても、此の連休中は市内の観光施設へ95万人以上が来場とあり、この内国内観光客は32万人で71%増加、外国人は48,000人で前年比263%もの大増加。観光収入も3兆1300億VND(180億円)と前年比94%増えているので味をしめたか、タダで動く筈などあり得ません。
さらに1~4月では1000万人の国内旅行者、140万人の外国人が来て、51兆VND(3000億円近く)というから、如何に観光需要が大きな経済的効果があるとの証明なので、まさか金の成る木を放っておくことなどせず、勝算あってのことに違いありません。此処に地下鉄効果が加わるとなればどうなるのか。黙っていても誰もが分かる訳で、ここは皮算用という所が本音なのかも知れないが、何れ入場料も発生するのか、と勘繰るのは少々穿った見方か。
市は発展と進化を遂げている真最中、地方からの流入もあり人口は未だに増加。先進国の状況をみれば分かるが、観光に頼るよりも先ず市民生活に念頭を置き交通・社会インフラを整備するのが本来の行政の在り方ではないかと考えます。
株式会社VACコンサルティング 顧問
(IBPC大阪 ベトナムアドバイザー)
木村秀生