中国人経営者のベトナム人労働者の見方 中国メディア

2023年8月1日(火)

ベトナム中部の都市ダナンで行われた棋聖戦。藤井聡太七冠はベトナム料理やスイーツを楽しみ、世界遺産ホイアンなどへも訪れたとのこと。初めての海外、慌ただしい日程なのに事前に現地の状況を調べ楽しまれた様です。
ダナンはブッキングドットコム今年夏のベトナム観光地検索でNO1になったとかだが周辺地域は歴史上、興味の尽きない遺産が数多く存在。北部や南部とまた違った風景がある。開催された場所は日系の三日月ホテル、海浜リゾートでかなり大規模。日本の情報を発信するのが会社の方針とかで、様々に日本を演出していると聞く。成田から直行便もあり招聘した側にとっては大きな宣伝効果もあるが、この企業、COVID-19が発生した時に、日本国内でホテル一棟をまるごと感染者用に提供したことで有名だったと記憶しています。
ベトナムでは中国将棋が一般的。これが切掛けとなって日本の将棋がブームになる可能性も無くはありません。囲碁は20年以上も前から教えている日本人、小倉さんがいて、世界大会にも出てタイトルを取っています。
このダナン、テレビ画面を見ているとすっかり変わったな、との印象ですが、ダナン大学に日本語学科があり学長は日本語も上手。彼の許に大学で講義した事がある知人の教授が経済学関係の本を数千冊送ったのです。古本屋に売っても二束三文、であれば役立てて欲しいと寄贈。これが切掛けとなって学生に何かしら良い結果がでるならば嬉しいと言いつつ3年後に逝ってしまわれた。
ダナンは台風が年に何回か必ず来ます。日本企業はこれが悩み。ダナン港は良港だがこうなると船は入らなく遅れが生じる。ハノイかHCM市に製品を送り、航空貨物便で納期に間に合わせたなんて話がある。しかし国内3位の大都市。
これから一層の成長が見込まれると考えられます。
情報番組ではベトナムへの日本企業の進出も話題にし、2000社も操業している要因に関して、ベトナムは若い人が多くて優秀で勤勉とかと説明している。10年以上も前から言い古された神話の延長でしかないが、未だこんな話が通用するのかと笑いを禁じ得ません。知った被りは程々にして貰いたい。
またコメンテーターも以前にダナンへ行ったことがあると得意げにその様子を語っていた。しかしこれらはあくまでも観光気分の域を出ず、現地のビジネス環境とか労働実態が分かっている訳でありません。むやみやたらといい加減な話をするのは止めて欲しい。
こんなことを考えていると、中国メディアがベトナム人労働者は怠け者なのかという少々礼を欠くように思える記事を掲載していました。
これに拠ると、ベトナムに進出した中国企業の経営者は、これまで報じられた先の記述のような高い評価とまた異なった見解を持っている、という訳です。

・筆者が在住時に感じた中国企業について少し触れてみる

ベトナムに進出する中国企業は多く、圧倒的な資金力と決断の速さがある様に感じます。決断力について言えば日本企業はほぼ絶対的に後れを取っている。
ある工業団地に行った際、ベトナム人マネージャーから話題に出たのが事業に必要な土地だけでなく周辺の工場用地も契約、しかも予定面積の数倍あったので彼は驚いたという。彼としては日本企業に来て欲しいのが本心とするけれど、結論の速さと資金回収に勝てない様です。
また若い中国人の現地スタッフは英語も出来るし結構フレンドリー。上層部は共産党中央委員が居たとの話も聞くが、そういう事に関係なく問題があった時、一緒に解決方法を考えるような人が現場に居ました。こういう良好なビジネス関係が続くのは理想的なのでしょう。

殆どの日本企業は進出する際には綿密な事業計画を立て、それに見合った用地を確保するのが常套。何年か経って事業が軌道に乗り生産設備を増強するとなった時に買い増しする。これが一般的で計画通りに目標達成したと評価される。しかし進出企業が増えると一早く進出した時には空地だらけであったけれど、周辺は他社が操業している。となれば既設の工場からは離れた用地を購入しなければなりません。これを繰り返し同一工業団地内で数カ所もの工場が点在するという要因となるわけで、至って非効率。ならばなぜ先を見越して予め将来計画も含めた用地を確保しておかないのか。となっても当然なのだが日本企業は冒険しないし、まして海外、どうなるのか先の事など分からない。
万一損失を出せば社内では経営責任を問われ、株主訴訟となり損害賠償もあり得るのが今日の事情。創業者経営者でなければ此処まで腹を括れません。
ところが中国企業はそうでなくかなり先を読んでいる。また自信も持っている。その結果、経済成長に伴って土地価格が急上昇。あるいは郊外へどんどん工業団地が移って行くので早くに買った場所がより市中心に近いため、値上がりも思った以上に具現化する。仮に必要でないなら余剰地を売ることも可能で相手も喜ぶ。こうした商売の上手さ、先を見通した計算が瞬時に出来るみたいで、別に不動産に通じていなくても先天的に儲けのツボは押さえていると言えます。
誠心誠意に高品質なもの作り一筋、他業種に手を出さず堅実一路もいいけれど、利益を得るのに越したことはありません。要はその分をどう使うかが問題。

こうした状況を幾つか現地で観て来ました。中国企業のベトナム進出が増えている中で、中国メディアが報じるところ、進出した企業から漏れて来るのが、労働観が異なるという意見があるしています。これを分析したとあるが、非難するだけでなく別の視点も紹介している。

・現地中国人経営者のベトナム人労働観

日本では一般的にベトナム人は手先が器用で忍耐強く勤勉だと捉えています。これは単純な組立作業に適している能力の為すところ、まさに日本企業が要求する人材要件にピッタリあて嵌るので、この言葉が独り歩きして行きます。
しかしこの記事では100人を雇用し、3カ所の現地工場を持つ経営者の弁は、中国人の賃金より低いが、生産性も低いと断言。彼らは平気で遅刻をするし、残業代を払うと言っても定時で帰宅など、効率も悪いと吐き捨てるように苦言を呈したとあります。
ベトナム専門家でASEAN研究院の院長も、中国人労働者に比べて規律は守らず、遅刻早退が多すぎるとし、欠勤や退職も多く、残業もしたがらない、という。
一方で、国内に180店を展開し、1100人の現地社員を雇用する経営者は、若い人たちの労働の質は悪くはない。仕事の遂行能力はやや劣るが、学習能力は高く、中には幹部に抜擢した人もいるなどと一部では擁護している位です。
相反する見解だが、そうではなく長く駐在する現地法人の責任者など両方とも間違いないと考えるし、筆者も同じような考え方をしています。
これまでの経緯を見ていると大筋では仕事に関する考え方は根本的に変わっていないけれど、経済発展が軌道に乗り始め、貿易黒字が達成してきた2000年台と今では環境が変わり、時流に乗れない企業は廃業するかM&Aの憂き目。
また戦争など全く知らず比較的豊かな世帯に生まれた高学歴な若い人の思考と、そうでない人とも異なる。能力が高く素直な人の会社は伸びるし外資系企業から信頼されて受注が増える一方。工場も綺麗だし機械も新しく、社員のモチベーションは高く勤務態度も一目で理解できるし企業間格差は広がるばかり。
仕事への姿勢も個人的要因や育った環境に拠って違うので一概に言えないが、他国どころか自国の事情さえ知らない人は多い。現地で社員も採用。実務経験を通して初めて見えて来るが感じ方は人夫々です。

・現地を肌で知る必要

従って、事前の知識として幾つかの情報を手にするのは良いけれど、適切なのは現地に出向いて事業をしている在住者の意見を拝聴、自身の目で確かめる。
また日常の生活感に関しては数日では分かる訳がない。少なくても3カ月間は滞在、Cafeでゆったり過ごし街を散策。レストランで駐在員の愚痴を聞く。大切なのは生の声。取引銀行でのヒアリングなど実に無意味。
休日は遊びに行き、できれば全国主要地を訪問。北のハノイ、中部のダナン、南のHCM市、さらにメコンのカントー市。文化などの違いは歴然とあり体感することが重要。わざわざ調査する必要などなく居るだけでも分かってくる。海外で最も必要とされるご縁はその内自然に生まれて来ます。

株式会社VACコンサルティング 顧問
(IBPC大阪 ベトナムアドバイザー)
木村秀生